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紅蓮荘奇譚  作者: 天城なぎさ
第参話 トンネルの割れ鏡
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第参話 結

 翌日。

 響希君の携帯に、小峰(こみね)さんから連絡があったという。


「夜に、小峰さんから連絡があった。スギハナは、自らの妖力を使って、小峰さんとお祖母さんの妖力を消したそうだ」

「それじゃあ、二人はもう……」


 妖力がなくなれば……。


「スギハナを見ることができない」


 キッパリと響希君は言う。


「お祖母さんは、施設に入っているらしくて、小峰さんはスギハナをそこに連れて行った。数分だけど、親子の時間を作って、お祖母さんとスギハナは話したそうだ。その時から、認知症の症状かなり良くなったらしい」


 認知症が進んでいた、小峰さんのお祖母さん。

 きっと、懐かしい気配に、症状が和らいだのだろう。


「スギハナは、小峰さんに『あなたたちには、普通の人間としての生活と寿命を、全うしてほしい。だから、あなたたちの妖力を消したい』と伝えた」


 それは、つまり。

 親子の、完全なる永遠の別れ。


「僕さ、シキに聞いたんだ」


 突然、(つかさ)君が話し出した。


「どうかしたのか?」

「トンネルに、呪詛が満ちてたでしょ。その理由なんだけど」

「理由って何?」


「あの呪詛はね。スギハナの娘。つまり、小峰さんのお祖母さんが、不完全な妖力を使って、封印師を呪い殺そうとしたんだって」

 さらに続ける。


「だけどね。スギハナがその力を抑えて、弱めたんだ。時間と共に、だんだん抑えられなくなって、満ちてしまったんだ」

「スギハナは、小峰さんのお祖母さんの力を知っているから、消したの?」

「多分、そうだろうな。スギハナは、いつか妖力が暴走しないように、時を経て、消したんだ」



 その後のスギハナが、どこへ行ったのか。それは、誰も知らない。

 心優しき女半妖。

 子を産み、母となった後、封印師の手で封印された。

 何十年も永世(かくりよ)で暮らしながらも、娘を想いながら。


「スギハナは、小峰さんたちの記憶を消さなかったんだね」

「『消さなかった』じゃなくて、『消せなかった』んじゃないかな」

「一緒にいた時間が短くても、母娘(おやこ)であることに変わりはない。小峰さんだって、大事なひ孫だしな」


 その時、背筋に嫌な悪寒が走った。


「どうしたの? りんちゃん、大丈夫?」

「大丈夫。二人は、何か感じなかった?」


 私の言葉に、二人は顔を見合わせる。


「華鈴。まさか感じたか?」

「なんか、悪寒ぽい感じだよね」


 よかった。二人も感じたらしい。


「シキが言ってた、悪しき妖かな?」

「だとしたら、妖眼(ようがん)を持つ俺たちがすぐに狙われるな」

「式神を呼んでおこうか。何かあったとき、すぐに行動できるし」


 依頼を終わらせ、一段落できると思ったのに、今度は悪しき妖なの!?

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