表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅蓮荘奇譚  作者: 天城なぎさ
第参話 トンネルの割れ鏡
26/130

第参話 陸

 割れ鏡。

 その破片は、普通の人には見えないもの。


「この破片の中?」

『そうだよ。この中に入って、護符の封印を解くことになるけど、誰が行く?』

「俺が行く」


 響希君が名乗り出た。


『ならば、俺が呪文を唱える。響希、その破片を持て』


 響希君と黒牙(こくが)が、鏡の中の永世(かくりよ)に行ってしまう。


「必ず、戻って来れるんだよね?」

『もちろん。上手く行けばだけどね』

「華鈴。そんなこと考えるな。必ず、戻って来れる」


 響希君が破片を持つと、黒牙が呪文を唱え始めた。


『我らを繋ぎし写し物 汝の世界に 参らんことを』


 みるみるうちに、鏡に吸い込まれていった、響希君と黒牙。


「大丈夫だよね」


 数分後、着物を着た女性を連れ、響希君と黒牙が戻ってきた。


 ***


小峰(こみね)さん、お待ちしてました」

「ごめんね、遅くなっちゃって」

「いえ。大丈夫です。時間はまだあります」


 放課後。

 旧校舎側にある、来校者用の駐車場で、小峰さんを待った。

 そして、四人でトンネルに向かう。


 外を歩く先生はいない。見つかったら一大事。

 どうか、バレませんように!


「この中に、小峰さん、あなたのひいお祖母さんがいます」

「うん……」


 一歩ずつ、ゆっくりと、中へ入っていく小峰さん。

 私たちも、少し離れて後を追う。


「貴女が、スギハナさんですか?」


 トンネルのほぼ真ん中の壁。

 そこに、もたれるように立つ着物の女性に、小峰さんが声をかける。


『お前、何者だ?』


 訝しげな女性の声。


「俺は、貴女の娘、千鶴(ちづる)の孫です。だから、貴女のひ孫です」

『ちづる? ひ孫?』

「はい。貴女を、封印から解きたかった。祖母が、貴女の娘が、会いたがっています」


『千鶴。あたしの一人娘……』


 スギハナは、足から崩れ落ち、泣いて泣いて。


『千鶴は、どこにいるの? 一人では何もできない子だから、今すぐ行かなきゃ。鏡、割れたんだ。新しいのを、すぐに……』

「千鶴は、ここから少し離れた場所にいます。一緒に、来ていただけますか?」

『いるのかい。千鶴が、会いたがっているんだね』

「いつも、貴女の事を、話していますよ。あの時割れてしまった鏡を、今でも大事にしています」

『良かった……。それは、良かった』



「スギハナは、もう完全に妖になっている」


 私たちにだけ聞こえる声で、響希君が教えてくれた。


「響希、それはどういうこと?」

「人間と妖の寿命は違う。人間の寿命は終わり、妖としての寿命で生きている」

「じゃあ、普通の人には、見えないんだね」

「そうなるな」


 だとしたら……。


「ねぇ、小峰さんのお祖母さんは、まだ見えるのかな?」

「少なからず、妖の血が入っている。大丈夫だろ」

「でも、認知症って……」

「心配しすぎだよ。りんちゃん」


 そうだよね。

 心配しすぎてるかも。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ