第参話 伍
「なんで、離れなきゃいけなかったの?」
白牙に言われたまま、私たちはトンネルの入り口まで離れた。
『華鈴は知らないのか? 浄めの一波は、特殊な光を放つ。それは、白牙とシキにしかできない。妖眼を持つお前たちが近くでみてたら、失明しかねない』
黒牙が教えてくれたけれど、そんなに強い光りなのかな。
『それじゃ、始めるよ』
その言葉の後すぐに、白牙の身体が、青白く光り出した。
眩しさで目を瞑る。
だけどそれは、すぐに終わった気がした。
『終わった。こっち来ていいよ』
白牙の声でまぶたを開き、近寄る。
「これで、護符を探せるな」
キーンコーンカーンコーン。
トンネルの中でも聞こえる、チャイムの音。
「そろそろ行かないと。どうする? 昼休みにまた探す?」
「そうだな。後は昼休みに探すか」
「急がないと、先生来ちゃうよ。見つかっちゃう」
***
四時間目終了のチャイムが鳴り響き、私たちは急いでトンネルに向かった。
「コラー! 月島、花里、雪村! どこに行く!?」
ヤバい。見つかったよね!? しかも、生徒指導の滝川先生に! どうしよ!!
目で二人に訴える。僚君も、響希君に訴えているよう。
とりあえず。言葉を交わさず、目で合図を受ける。
走る足を止め、先生を見据えた。
「すみません、先生。俺たち、トンネルの近くにある、ザクロを見に行こうと思ったんです」
「ザクロ?」
後は私が引き継ぐ。思い付くまま、冷静に。
「あるじゃないですか。ザクロの木」
「あー。あ? ザクロ?」
「はい。ザクロの木があるのは珍しいので、見に行こうと、二人を誘ったんです」
「そうか。絶対に、トンネルには入るんじゃないぞ」
「わかりました」
「なんとか誤魔化せたね」
「響希君が、ザクロなんて言うから、話を合わせるの大変だったよ」
「悪かった。トンネル近くにあるのは、ザクロだけだから」
トンネルに着くと、朝よりも居心地が良かった。
白牙が浄めてくれたから。
「それにしても、護符がないな……」
「ここで封印されたんだよね? なら、ここにないのはおかしい」
側面も天井も、地面も全て確認したのに、どこにも護符がない。
「式神を呼ぼう。僕たちだけじゃ、時間足りない」
僚君の一言で、私たちは式神を呼ぶことに。
「白牙、召来」
「黒牙、召来」
「斑牙、召来」
『なになに? また、ボクの出番?』
『まったく。何用だ?』
『何なりと、お申し付けください』
「探し物をしてるの」
「手伝ってくれないか」
「時間が足りなくなりそうなんだ」
式神に説明してすぐ、三人と三匹で探す。
『どこにもないぞ。響希、場所はここで間違いないんだよな?』
「そのはずだ。何故ないんだ……」
『トンネルの割れ鏡』。小峰さんの話では、このトンネルで、封印されたのだそう。
トンネルの、割れ鏡。割れ鏡。
「割れ鏡」
「どしたの? りんちゃん」
「えっ!?」
無意識に、口走ったのだろう。
「割れ鏡が、どうかしたのか?」
「えっと……。『トンネルの割れ鏡』って、どういう意味なのかなって思っただけ」
「それは、封印されるときに、小峰さんのお祖母さんが持ってた手鏡が割れて……」
『それだ!!』
『それですよ! お三方。鏡の中に、護符があるのでは?』
「鏡の中?」
『鏡は、現世と永世を、繋げる役目があるんだよ。もしかしたら、鏡の中の永世に、護符があるんじゃないかな』




