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紅蓮荘奇譚  作者: 天城なぎさ
第参話 トンネルの割れ鏡
25/130

第参話 伍

「なんで、離れなきゃいけなかったの?」


 白牙(びゃくが)に言われたまま、私たちはトンネルの入り口まで離れた。


『華鈴は知らないのか? 浄めの一波は、特殊な光を放つ。それは、白牙とシキにしかできない。妖眼(ようがん)を持つお前たちが近くでみてたら、失明しかねない』


 黒牙(こくが)が教えてくれたけれど、そんなに強い光りなのかな。


『それじゃ、始めるよ』


 その言葉の後すぐに、白牙の身体が、青白く光り出した。

 眩しさで目を瞑る。

 だけどそれは、すぐに終わった気がした。


『終わった。こっち来ていいよ』


 白牙の声でまぶたを開き、近寄る。


「これで、護符を探せるな」


 キーンコーンカーンコーン。

 トンネルの中でも聞こえる、チャイムの音。


「そろそろ行かないと。どうする? 昼休みにまた探す?」

「そうだな。後は昼休みに探すか」

「急がないと、先生来ちゃうよ。見つかっちゃう」


 ***


 四時間目終了のチャイムが鳴り響き、私たちは急いでトンネルに向かった。


「コラー! 月島、花里、雪村! どこに行く!?」


 ヤバい。見つかったよね!? しかも、生徒指導の滝川先生に! どうしよ!!

 目で二人に訴える。(つかさ)君も、響希君に訴えているよう。


 とりあえず。言葉を交わさず、目で合図を受ける。

 走る足を止め、先生を見据えた。


「すみません、先生。俺たち、トンネルの近くにある、ザクロを見に行こうと思ったんです」

「ザクロ?」


 後は私が引き継ぐ。思い付くまま、冷静に。


「あるじゃないですか。ザクロの木」

「あー。あ? ザクロ?」

「はい。ザクロの木があるのは珍しいので、見に行こうと、二人を誘ったんです」

「そうか。絶対に、トンネルには入るんじゃないぞ」

「わかりました」



「なんとか誤魔化せたね」

「響希君が、ザクロなんて言うから、話を合わせるの大変だったよ」

「悪かった。トンネル近くにあるのは、ザクロだけだから」


 トンネルに着くと、朝よりも居心地が良かった。

 白牙が浄めてくれたから。


「それにしても、護符がないな……」

「ここで封印されたんだよね? なら、ここにないのはおかしい」


 側面も天井も、地面も全て確認したのに、どこにも護符がない。


「式神を呼ぼう。僕たちだけじゃ、時間足りない」


 (つかさ)君の一言で、私たちは式神を呼ぶことに。


「白牙、召来」

「黒牙、召来」

斑牙(はんが)、召来」


『なになに? また、ボクの出番?』

『まったく。何用だ?』

『何なりと、お申し付けください』

「探し物をしてるの」

「手伝ってくれないか」

「時間が足りなくなりそうなんだ」


 式神に説明してすぐ、三人と三匹で探す。


『どこにもないぞ。響希、場所はここで間違いないんだよな?』

「そのはずだ。何故ないんだ……」


『トンネルの割れ鏡』。小峰(こみね)さんの話では、このトンネルで、封印されたのだそう。


 トンネルの、割れ鏡。割れ鏡。


「割れ鏡」


「どしたの? りんちゃん」

「えっ!?」


 無意識に、口走ったのだろう。


「割れ鏡が、どうかしたのか?」

「えっと……。『トンネルの割れ鏡』って、どういう意味なのかなって思っただけ」

「それは、封印されるときに、小峰さんのお祖母さんが持ってた手鏡が割れて……」

『それだ!!』

『それですよ! お三方。鏡の中に、護符があるのでは?』

「鏡の中?」

『鏡は、現世(うつしよ)永世(かくりよ)を、繋げる役目があるんだよ。もしかしたら、鏡の中の永世(かくりよ)に、護符があるんじゃないかな』

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