第参話 参
「あの、小峰さん。それで、依頼というのは?」
「ちゃんと説明すると、曾祖母の封印を、解いて欲しいんだ」
封印を解く。
それは、妖眼の能力を持つだけの私たちには、できないこと。
そのことは、響希君も僚君も、知ってるはず。
なのに二人は以前、この依頼を受けようとしたんだ。
「俺が中学生の頃から、祖母の認知症が始まった。去年からは、更にひどくなって。過去の事がよみがえるみたいでね。『母に会いたい。どこにいるの』って何度も」
「会わせてあげたいんですね。僕たちも、出来る限りの事はします。なるべく早く」
「よろしくお願いします」
***
小峰さんが帰った後、三人で話した。
「封印を解く方法なんて、私知らないよ」
「簡単だよ。護符を破るか、縄を切るか。くらいかな」
「とりあえず、明日の朝、トンネルに行こう。朝なら、先生も少ないだろうから、見つからない」
『そろそろ帰りなさい。なにやら森の外を、悪しき妖が彷徨いているようです』
シキが、『木の間』に入ってくるなり、言い放つ。
「「「悪しき妖?」」」
私たちの言うことは、同じだったようで。
『この森に、悪しき妖は入ってこれません。しかし、君たちの帰路で、何があるかわからない』
「式神がいる。召来の呪文で、呼べばいい」
『それもそうですね。とりあえず、今日は帰りなさい』
シキの言葉に促され、私たちも紅蓮荘をあとにした。
「とりあえず明日。旧校舎前に集合ってことで」
「うん。二人とも、また明日ね」
***
二人と別れ、帰路につく。
あの時感じた気配は、シキの言う、『よからぬ妖』なのかな。
二人は、式神を召来の呪文で呼ぶみたいだけど、私はまだ呼んだことがない。
いきなり呼んで、『私を守って』なんて、言えるわけないよ。
『華鈴、どうした。大丈夫か?』
背後から声をかけられた。この声の主は、キノカサ。
振り返り、キノカサを見据える。
「キノカサ。大丈夫だよ」
『それなら良いのだがな。ひとりでは、危ない。お前の家の近くまで、共に行こう』
「えっ!?」
『シキに頼まれている。お前はまだ、式神を呼んだことがないのだろう?』
誰かと一緒に、帰るのは初めて。キノカサがいてくれるから、安心できる。
「シキが言ってた『悪しき妖』って、霞ヶ森の中には、入れないんだよね」
『あぁ。悪しき心を持つ妖はが入れないように、結界がはってあるからな』
「そっか。明日、響希君と僚君と一緒に、トンネルに行くの。何もなければ、いいんだけど」
『心配ないだろう。二人がいるのだから』
そうだよね。
二人が、いてくれる。
「ありがとう、キノカサ。ここで大丈夫」




