第参話 弐
木々が生い茂る霞ヶ森は、いつ来ても心地良い。
『今日は三人おそろいのようだな』
「あー! キノカサ!! 久しぶりだね~」
『久しぶりだな。華鈴』
霞ヶ森に住む妖で、仲良しのキノカサ。
前髪で両目を隠し、和装姿の背中には、カラスのような黒い羽を持つ。
普段は風の赴くままに、旅をしている。
『妖力を持つ人間が来たのだが、お前たち、知り合いか?』
「それは多分、依頼主だ」
『そうか。依頼主を待たすわけにいかないだろう。さっさと行け』
キノカサと別れ、朧池に向かうと、紅蓮荘の前に佇む、男の人の姿が。
「あの人が、依頼主だ」
私たちは駆け寄り、響希君が声をかける。
「小峰さん、お久しぶりです」
振り返った男の人は、かなり若い。
「お久しぶりです。えっと。月島君と、花里君だったよね。君は……?」
私の方を見て、首をかしげる。
「はじめまして。雪村です」
「小峰です。よろしく」
「ここで話すのもなんですし、中に入って話しましょう」
どうぞ。
響希君が先に中へ入り、私たちも、あとに続く。
話す部屋はいつもの、『木の間』。
「以前お伺いした依頼ですが、雪村は内容を知りません。俺たちも、内容がうろ覚えなので、もう一度、お伺いします」
小峰さんはゆっくりと、口を開いた。
***
去年、月島君と花里君に、話したことなんだけど。
まだ二人が、中学生だったなんて知らなくて。
でも、君たちが、京加高校の生徒になってくれてた。
先月に、シキさんから連絡をもらったけど、なかなか来れなくてね。
そろそろ本題に入ろうか。
『トンネルの割れ鏡』の話を知ってる?
あの話は、俺の曾祖母の話なんだ。
半妖の、曾祖母の話。
実を言うと、俺は、京加高校のOBなんだよ。
だけど在学中、トンネルに入ることすらできず、曾祖母を見つけることができなかった。
俺が幼い頃、祖母から聞いた話なんだ。
妖力を持つ曾祖母は、誰からも気味悪がられていた。
だけど、そんなことを気にせず生きてたって。
祖母も、曾祖母ほどじゃないけど、妖力があって。
気味悪がられて、いじめられていたらしい。
そんなある日、二人で、町外れまで出かけた。
あのトンネルを通ってね。
運悪く、巷で話題の封印師が、トンネルの向こうから歩いてきて、二人に話かけた。
『お前たちから、妖気を感じるのだが、何者だ?』
話しかけられた二人は、なんとか誤魔化したけど、封印師は気づいていたんだろう。
『お前たちは妖だな。それなりに魔力のある妖のようだ』って。
懐から護符を取り出して、呪文を唱えた封印師。
曾祖母は、祖母をかばって、トンネルの中に封印された。
祖母はその時まだ、妖力が完全に目覚めてなかったみたいで、呪文が効かなかったんだって。
呪文は凄まじい威力で、祖母を吹き飛ばした。
祖母の巾着袋に入っていた手持ち鏡が、中から出てきて。
そして割れた。




