第参話 壱
私たちの通う高校には、怪談話が存在する。
『トイレの』とか、『美術室の』とか、『理科室の』とかと言った、メジャーな怪談ではなく、少し変わった話。
「二人は知ってるよな? 『トンネルの割れ鏡』の話を」
「僕は知ってるけど、りんちゃんは?」
「私も知ってる。旧校舎裏の、トンネルの話でしょ?」
私たちの通う高校に存在する、怪談話。
その名は、『トンネルの割れ鏡』。
老朽化の影響で、数十年前から使われていない旧校舎があり、その裏には、使途不明のトンネルが建っている。
噂では、高校が設立される前からその場にあり、建設の為に取り壊そうとしたけれど、祟りが起きてしまったのだった。
「それで。響希は、何をしたいの? 学校の怪談?」
「依頼だ。僚は覚えてるだろ? 去年の夏の依頼を」
はて? みたいな表情を浮かべた、僚君。
「覚えてないなぁ。そんな依頼、あった?」
「俺たちが依頼を聞いたけど、受けれなかった話があっただろ」
「んー。あ、もしかして、あの話?」
「あのさ、二人とも。私は何も、わからないんだけど……」
「去年だからな。華鈴が知らないのも、無理はない。中三の夏休みに、聞いた依頼だ。トンネルが高校の敷地内にあるから、今年まで待ってもらった」
「珍しい依頼なんだよ。学校の怪談にまつわる話だったんだ」
驚くよね。
そう言うと、僚君が説明してくれた。
「学校の怪談ってさ、なんか、作り話が多いよね。だけど、この高校にある話は、実在した女半妖の、本当にあった話なんだよ」
キーンコーンカーンコーン。
気づけば、もうそんな時間になっていたみたいで、昼休み終了のチャイムが鳴り響く。
「放課後、依頼主と紅蓮荘で会う事になってる。華鈴も来るか?」
「行きたい。学校の怪談に関わる依頼だもん。気になる!」
***
放課後、三人で霞ヶ森に向かう。
「どんな依頼主なの?」
「それは、会ってからのお楽しみ。僕なんて、どんな依頼主か忘れちゃった」
「それはダメでしょ! 僚君!」
「えへへ」
はぁ。まったく。
そんな独り言を、口にする響希君。
「僚は、悪い奴じゃないけど、どこか抜けてるんだよな……」
「ん? ケンカ売ってる?」
「買うのか?」
「やめとく」
そんな会話をしながら、霞ヶ森に向かっていると、なんだろう。
人のような、妖のような気配を、背後から感じる。
足を止め、振り向くけれど……。
誰もいない。
「華鈴、どうした?」
「ううん。なんでもない」
気のせいだったのかな。
「急ごう。依頼主が待ってるはずだ」




