第弐話 漆
「雪村さんって、昼休みになると、いつもどこに行ってるの?」
「えっと、どう言えばいいかな」
「話しにくいこと?」
「ちょっと、色々あって」
「そっか。じゃあ、無理に聞かない」
放課後。吾妻さんと一緒に、京加公園に向かった。
普段、吾妻さんと話すことは、ほぼない。私も吾妻さんも、基本ひとり。
話す人といえば、私の場合はあの二人。
吾妻さんはどうなんだろう。
はじめて会った時から、『不思議ちゃん』。近寄りがたい、そんなオーラの。
今回の依頼で、吾妻さんと少しだけど、仲良くなれた気がする。
「それで、あたしに会いたいって人はどこ?」
「待ってね。すぐに来るはず……。あ、来た」
京加公園の池の畔。
そこで、待ち合わせる事にした。
『申し訳ありません。お待たせいたしました』
『姿身の羽織』を羽織ったてまりが、こちらに向かって歩いている。
気づきにくいけど、弱々しい足取りで。
「いえ。はじめまして、吾妻です。吾妻みずきです」
『貴女が助けて下さらなければ、あの子は今頃……』
「気にしないでください。安物でしたし」
『何かお礼をさせて下さいな』
「そうですね……」
吾妻さんは、少し考える。
「猫ちゃんに、『元気でね』とお伝えください。あの時、すごく弱ってたみたいですので。猫ちゃんが元気で過ごしてくれれば、それでいいです」
吾妻さんは、てまりが元気で生きてくれることを望んだ。
てまりは、永くないことを伏せたまま、承諾することに。
「そろそろ帰りますね。わざわざ、ありがとうございました。失礼します」
吾妻さんが帰るらしい。
『本当にありがとうございました。またいつか、お会いしましょう』
公園を出て、商店街の方に向かった吾妻さん。
夕方ということもあり、人や車が行き交う。
「私たちも、帰りましょう。てまり」
『そうですね』
商店街の交差点で、吾妻さんと再会。
信号が赤だったから、信号待ちの間、少し話す。
「あれ? 吾妻さん、お買い物?」
「うん。新しいスクラップブックをね」
歩行者用の信号が青に変わって、横断歩道を渡り始めようとした時。
パトカーのサイレンの音が、だんだん近づいていた。
「何かな? スピード違反とか?」
「多分、そうだよね」
こっちには来ないだろうと、横断歩道を渡る。
横断歩道には、私たちだけ。
てまりは、なんだかおとなしい。
その時。
パトカーに追われていたのだろう。黒い乗用車が、猛スピードを出し、信号を無視して、交差点に入ってきた。
私は先に気づき、吾妻さんを止める。
「吾妻さん、車!!」
「えっ!?」




