第弐話 壱
桜が散り、新緑が芽吹く季節。
「おっはよー! 雪村さん!」
「おはよ」
朝から元気な花里君と、相変わらずのローテンションな月島君。
「おはよう、二人とも」
教室の中は、私たちだけ。
他の人がいるとできない話しをしよう。
「昨日、シキから連絡があった。放課後、紅蓮荘に来れるか?」
「いいよ。依頼?」
「みたいだよ。楽しみだね~」
私にとって二回目の依頼。
どんな依頼主が、どんな依頼をもってくるんだろう。
***
薄気味悪い霞ヶ森。
依頼がない日でも、時々、この森に遊びに来ている。
初めてこの森に来たとき、からかってきた妖たちとも、今では仲良くなった。
『お、今日も来たのか、華鈴』
「こんにちは。今日も良い天気ね」
『響希も僚も、まだ来てないんだが』
「依頼主は来てるんでしょ?」
『来ておる。シキが、依頼を聞いているだろうな』
「急いだ方が良さそうだね。じゃ、また後で」
紅蓮荘の扉を開けると、シキと依頼主なのだろう。
橙色の和服を着て、両目を白い布面で隠した女妖が、木の間から出てきたところ。
シキが、私に気づいたようす。
『華鈴、来ましたか。依頼を受けましたよ』
「こんにちは、シキ。こちらの女妖さんが、依頼主さん?」
シキから視線をずらし、女妖に視線を向ける。
『はじめまして。てまりと申します。貴女が、わたくしの依頼を聞いてくださる方?』
同い年と間違えそうな、見た目と声。
「はい。はじめまして、華鈴と申します。後程、二人来るんですけど、先にお話を伺いますよ」
『よろしくお願いいたしますね』
木の間に戻ってもらい、話を聞く。
「依頼を、お伺いします」
少しためらってから、話してくれた。
『人を探して頂きたいのです』
「人。人間を探せばいいのですか?」
『はい。わたくしは、猫の妖なんです。先日、とある人間の、貴女と同い年くらいの女の子に、命を助けて頂きました。彼女のおかげで、わたくしは今、生きています。お礼がしたい。そう思っても、彼女がどこにいるのかわからず……。あ、貴女と同じ服を着てました』
「同じ服? あなたが助けられたのは、いつ頃ですか?」
『その日の夜は満月でしたから、二週間前です』
同じ服って、多分、この制服なんだと思う。
二週間前に助けられたなら、私と同じ高校にいるはず。
「何か、手掛かりになりそうなものや、特徴はありませんか?」
『特徴ですか? 確か、目のここに、黒い何かがついてました』
てまりは、左目の目尻の辺りを指さした。
もし『黒い何か』が、ほくろだとしたら、左目側に泣きぼくろがある人。
『それと、この花びらが肩に付いてたみたいで、わたくしの頭を撫でてくれたとき、落ちてきたんです』
着物の袖の中から、一枚の薄紅色の花びらを取り出した。
「何の花びらだろ……」
腕を組み、考える。
『あの、もしかして、人探しは難しいですか?』
「ふぇ!? い、いえ。この依頼、お受けいたします!」




