第壱話 結
「きっと、桜子さんは、見つけて欲しかったんだね。大好きな篠霧に」
『桜子がそんなことを、思っていたとはな。ずっと待っていてくれたんだな』
「素敵な話……」
桜子さんの想いがつまった根付けを篠霧は握りしめて、涙を浮かべていた。
篠霧も、桜子さんと同じ想いだったのだろう。
「そろそろ出るか。この中に長時間いるのはキツい」
「行こ。雪村さん、篠霧」
「うん」
『そうだな。もう、用は済んだのだから』
『世話になった。桜子の根付けは、祠まで持っていく。ずっと傍で桜子を感じていたい。それに、生まれ変わった桜子に会えるやもしれんからな』
「桜子さんも喜ぶよ。きっと」
家を出てすぐのこと。
急に、篠霧の身体が光りだした。
「篠霧? どうしたの?」
『この時が来てしまったか……』
篠霧は、私たちに振り向く。
悲しそうな、だけど、嬉しそうな表情が、翁面を通して伝わる。
『わたしの、土地神としての力は、残ってない。桜子が他界したときに、力は消えていた。だが、桜子との約束が、わたしをこの世に、残してくれていた』
「消えるの? 消えてしまうの? 篠霧」
『そうだ。祠には持っていけなかったが、桜子の元に、共に行ける』
さらばだ。
これで心おきなく、桜子の元へ行ける。
桜子亡き後の世の話と、根付けを土産に……。
光りの粒となって消えてしまった篠霧。
春の風に乗って、桜子さんの元へ。
どこか暖かくて、優しい、春の風と。
桜色のように、薄紅に染まった桜子さんと篠霧の想いが。
人と妖との間に、絆が生まれるのだと、気づかせてくれた。
***
「どうだった? 初めての依頼は」
「楽しかったよ。二人は、普段からこんなことをしているんだね」
「土日返上で、しかも無償だから、覚悟しておいてね。雪村さん」
「無償かぁ……。ちょっと考えようかな」
これから、どんな依頼が来るのだろう。
たくさんの妖と仲良くなれたり、たくさん話せたり出来るのだろうか。
未来のことは、まだ何もわからないけれど、これからの日々がとても楽しいものになれたら、悔いはないのかな。
「雪村さん、時間ある?」
「あるよ。何かあるの?」
「ファミレス行かない? お腹空いちゃってさ」
「食いしん坊なんだよ。僚は。無理強いはしないけど、雪村はどうする?」
「行く! 二人が今まで受けた依頼の話を聞いてみたい!」




