第拾肆話 壱
十二月に入り、それは突然起きた。
「なんだか今日も、嫌な気配がする……」
『華鈴も、感じたのだな。我もだ』
「あの時の気配と、同じですよね」
『再び、良からぬ事が、起きるのではあるまいな』
昨日から嫌な気配を感じる私は、今日と明日だけでもと、無理を言って紅蓮荘に泊まっている。
『しかしまぁ、何も心配しなくていい。霞ヶ森にいれば、悪しき妖は手も足も出せまい』
「そうですね。それにしても、妙月様の口調、現代に近づいてきましたね」
『そうだな』
妙月様とこうして話すのは、初めてのこと。
木の間でミカンを食べながら、二人で。
『シキ殿もキノカサも、見回りに行ったきりだな』
「響希君も僚君も、一緒に行っちゃいましたしね」
『もう一つ食べるか?』
「妙月様、食べ過ぎですよ。手が黄色くなっちゃいますよ」
「たっだいまー!」
「早く入れ、僚。寒いんだから」
『妙月、まだミカンは残っているか?』
皆が帰ってきた。
無事みたいだから、安心する。
「お帰り~。どうだった? 何かいた?」
「嫌な気配を放つ妖は、何もいなかったよ。人間の可能性もなかった」
「華鈴の話だと、殺鬼の一件は、人間によるものなんだよな」
「うん。妙月様も感じていましたよね」
『我も感じたが、あれは確かに、人間だ』
これは、うーん。と、皆が悩まざるおえない一件。
『そう言えば、巾王神社の汰矢が、この前会った時に、何か言っていたような……』
ふと、キノカサが何か呟いた。
皆、その続きを聞きたくて、キノカサを見つめる。
『それならば、汰矢に会いに行くか。その方が、説明しやすい』
『あの烏天狗か。久しく会っていないな』
「汰矢が何か知っているなら、聞きに行くしかないね。ここにいても、何も解決しないし」
「そう言えば、シキは? 森の中に行ったのかな」
『シキなら、森の中にいる。ヒサギに用があるとか、なんとか』
そんなわけで。私たちは汰矢がいる巾王神社へ向かうことにしたのだけれど。
『ごめんください。あら。お出かけ?』
「キョウカ様。お久しぶりです。何かご用ですか?」
タイミング悪く、桔梗の妖、キョウカ様がやって来た。
『最近。家の辺りを、何者かが彷徨いているようなのです。とても嫌な気を放っているので、小さき友人たちが、気に当てられてしまい、弱っているのです』
「一先ず、中へどうぞ。その事に関して、何か知っていることはありませんか?」
『いえ。何も存じ上げません。皆さんは、嫌な気配をお調べになっていらっしゃるのですね?』
「ええ。まぁ、そんなところです。妖たちの為にも、早急に解決したいのですが……」
キョウカ様の小さな友人の為にも、早くこの件を解決したい。




