第拾参話 結
「いよいよだね。響希君」
「だな。この短期間で、よく準備したよ。俺たち」
「なんか、響希君の浴衣姿、新鮮だね」
「華鈴の浴衣姿も新鮮だけどな。まぁ、俺は、浴衣が似合う男なもんで。よく言われる」
『そう言いつつ、浴衣を着たことなんて、あまりないだろ?』
「うるさいぞ。黒牙」
『斑牙姐さんの準備も、そろそろ終わる頃だな。あとは、白牙が僚を連れてくるだけか』
ついにこの日が来た。今日は、僚君の誕生日当日。
厄神の一件があったけれど、僚君は以前よりも元気になってくれた。
「僚君。なんとか元気になってくれて、良かったよ。一時はどうなるかと……」
「シキがいたし、式神たちに、キノカサと妙月様がいてくれた。俺たちじゃ何も出来なかったけど、|妖の力を借りて、なんとかなった」
響希君の言う通り。
私たち人間は、どうすることも出来なかったけど、シキたちが力を貸してくれたおかげ。
『お待たせしました。華鈴殿の浴衣姿、お綺麗です』
「ありがとう。斑牙。斑牙だって、綺麗だよ」
『ありがとうございます。本日は、よろしくお願いいたします』
***
テンテンテテン。テテテテテン。
朧池の畔で、小太鼓を叩く黒牙。
この音が聞こえたら、花魁道中が始まる。
ゆっくり、ゆっくりと、一歩ずつ霞ヶ森の遊歩道から、朧池まで歩いていく。
何も知らない僚君が観たら、驚くこと間違いなし。
私は斑牙の手をとり、並んで歩き、その後ろを、傘を斑牙に差しかけながら、響希君が歩く。
「これ、何? あれって斑牙でしょ。あと、りんちゃんと響希まで」
『そうだよ。あ、聴こえてるかな。響希が、こっち見てる』
「どうしたの、これ」
『まぁまぁ、観てなって。もうすぐ終わるから』
朧池に到着すると、白牙と話している僚君がいた。
私たちが近づくと、驚いた表情で、こちらを見ている。
「どうしたの? これ」
「驚いただろ? 実は、斑牙に頼まれてな」
「え? 斑牙が? どういう事?」
『隠しておりました。本日は、僚殿のお誕生日ではありませんか。お祝いにと、思いまして』
「そうだったんだ。びっくりしたよ。ありがとう、斑牙。響希も、りんちゃんも」
「いえいえ。斑牙が提案してくれなきゃ、花魁道中はなかったんだよ。まぁ、私たちだけだから、とても短かったけど」
秋風が吹く、今日この頃。
僚君の誕生日をお祝い出来て、なんだか嬉しい。
『宴の準備が出来ましたよ。僚。誕生日、おめでとうございます』
紅蓮荘の廊下の窓から、人間姿のシキが顔を出した。
キノカサと妙月様も中にいて、パーティーの準備をしてくれている。
「ありがとう! みんな!」
「それじゃ、着替えてパーティーだな。盛り上がるぞ! ウェーイ!」
「響希君!?」
「あ、この匂いは唐揚げだね。りんちゃん、驚かないでね。響希は無類の唐揚げ好きだから」
僚君の誕生日パーティー、これよりスタート!
「あ、ちょっと、響希! まだ着替えてないじゃん! それに、手洗わないと!」
「良いだろ、少しくらい」




