第拾参話 漆
「シキ! 僚の容態は!?」
「ちょっと待って。響希君」
放課後。帰りのSHRが終わるや否や、教室を飛び出し、霞ヶ森へ直行の響希君。
紅蓮荘に入るなり、響希君はすぐさま水の間へと向かった。
「ちょっと待ってよ。響希君……。ハァハァ。ちょっと……」
響希君の足の速さに、私はついていけず、息切れがすごい。
「響希。りんちゃんも。二人とも元気そうだね。りんちゃん、大丈夫? 息切れすごいよ」
「平気。大丈夫だよ。ハァハァハァ。それより。僚君は、大丈夫?」
「うん。おかげ様で」
ベッドで上体を起こしていた僚君は、元気そうまでとは言えないけれど、私たちと話せる程に回復していた。
「シキは? キノカサも妙月様も、いないみたいだけど」
「そういえば、いないな。何処に行ったんだ?」
「厄神の封印に行ったよ。二人が来る前に行ったから、入れ違いになったんだね」
「呪いは祓えたんだろ? それなら、封印しなくても良いだろうに」
「今回の呪いが、前の呪いと同じ厄神からだったんだ。おそらく、この呪いの痕が目印で、再び襲われたんだろうって、シキも妙月様も、云ってた」
「また狙われないように、封印に行ったんだね」
「そういうこと。僕、疲れちゃったから、寝てもいい? 呪いを受けると、疲労感が酷くて」
そう言うと、ベッドで横になった僚君。
邪魔するわけにはいかないから、私たちは水の間を出て、木の間で話すことに。
***
「この前。僚と一緒に、桃麻氏と舜氏に誘われて、ファミレスで女子会ならぬ男子会をした」
「須崎さんの呼び方変わったね。舜氏になってる」
「仲良くなったからな。吾妻のことは、スッキリサッパリ諦めた」
「それがいいよ。そうじゃなきゃ、嫉妬で大変でしょ」
コンコンコン。誰かが、扉を叩く音。
『華鈴殿、響希殿。少し、よろしいでしょうか?』
「どうぞ。入っていいよ」
朱色を基調とした、小さな菊の柄が幾つもの散りばめられた、綺麗な振袖を着た、人間姿の斑牙が入ってきた。
とても斑牙の雰囲気に合っていて、惚れてしまいそう。
『この振袖を着て、花魁道中を行いたいのです。どうでしょうか』
「凄く、似合ってるよ。女の私でも見惚れちゃうよ」
「これに、花魁化粧をするんだろ? そんなの見せられたら、誰でも惚れる。綺麗だ」
『ありがとうございます。僚殿にも見ていただきたいのですが、お誕生日当日まで、内緒ですね』
「僚君。絶対、驚くよ。私たちも斑牙の付き人として、頑張るね」
『よろしくお願いいたします』
僚君の誕生日まで、あと少し。
それまでに、僚君の体調が良くなってくれたらいいな。思い出に残る、誕生日にしたい。




