2ー1 鷹野 高明
「それにしてもお前達仲良いよな。」
とある高校の二年生の教室。
その言葉は、登校して来た高身長の顔の整った男子生徒と、小柄で可愛らしい顔の女子生徒に向けられて言われた。
「はぁ?当たり前だろ?」
「えぇ、双子だもの。」
二人が言う。
兄の鷹野高明と妹の千秋。
双子の吸愛鬼だ。
二人は美男美女の双子として校内では有名人であった。
それと同時に憧れの的でもあった。
彼らを一目見ようと他クラスと他学年から生徒達が廊下に集まる。
基本的には少し離れた所から見ているだけで害はないが、たまに二人を不愉快にさせる者もいた。
「あ、あの……鷹野君放課後ちょっと良いかな?」
「あのっ!鷹野さん、良かったら放課後俺と遊ばない?」
高明と千秋、それぞれ話しかけられた。
双方腹が満たされていることから、用件は分かっていた。
「おう、良いよ。」
「えぇ、良いわ。」
内心と裏腹に、二人は優しい笑みを浮かべていた。
「その、鷹野君って今彼女いるのかな?」
高明を見るのが恥ずかしいのか、顔を背けて言う。
放課後、高明は最近少し話したことのある女子生徒と人気のない空き教室にいた。
彼女の愛が日に日に大きくなっていたのを感じていた高明にとっては、意外でもなんでもなかった。
答えは決まっている。
「いるよ、彼女。」
「いやー、鷹野さんと遊びに行けるなんて夢みたいだよ。」
嬉しそうな男子生徒。
「そう?なら良かったわ。」
頬笑む千秋。
放課後、今朝遊びに誘われた男子生徒とともに、ゲームセンターにいる千秋。
「そ、そのさ、鷹野さん……。」
やはりか。
千秋はため息をつきたくなったが、グッと堪える。
「……付き合っている人とかっているのかなー……なんて……。」
先ほどまでの元気が嘘のような弱々しい声。
「うん、いるよ……付き合っている人。……大好きな人。」