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吸愛鬼  作者: あさまる
5/12

1ー5 千種 愛

夏海を探しに校舎裏に来た時、愛は急に暖かい物が自身の中に入って来るのを感じた。

ここに夏海がいる。

愛は乱れた呼吸を整え、ゆっくりと歩を進めた。



「……夏海こんなところにいたの?」

ゆっくりと近づきながら言う。


空き教室の片隅で体育座りをして俯いている夏海。

愛の声が聞こえたのか、姿勢はそのままであったが愛の声にビクッと反応した。


「……大丈夫?」


「……。」


「……隣座るね。」


「……うん。」


そのまま無言で夏海の隣に座る愛。

昼休みの終わりを知らせるチャイムが鳴る。

しかし、二人はそのまま座ったままであった。


「優等生が授業出なくて良いの?」


「今は授業より夏海といるのが良いの。」


「……馬鹿。」


「少なくともあんたよりは賢いよ。」



再び静寂が訪れる。

隣の愛の肩に頭を乗せる夏海。

それを無言で受入れた愛は静に微笑んでいた。


夕日に照らされる教室の中、未だに二人は座っていた。

二人とも無言でも心地良く、満たされていた。

いつまでもこの時間が続けば良いとさえ思えた。



「私さ……。」


数分か、それとも数時間か。

音のない二人だけの世界の静寂を破ったのは、夏海だった。

そんな彼女の声を無言で聞いている愛。


「土曜にさ、さっきの子の愛を食べたんだ。いや、無理矢理食べさせられた、かな。ははは。」


「……。」


「それでさ、すっごく不味くって……はは、びっくりしたよ。」

夏海の声が震え始める。


「ゆっくりで良いよ。」


「……ありがと。それでね、凄い怖くて……今までこんなことなかったのに……。」


「そうなんだ。」


「それでね、その……多分あの子、私のことそういう目で見てたんだと思う。」


「……そうなんだ。」

それ以外何も言えない愛。



「友達としてとかの好きってのは同性からもあったと思うんだ。……でもあんな直接的なのは初めてで……。」


「……。」


「……いや、違うかな。……そうだよね、愛?」


「……うん。ごめんね。」


「ふふ……私も人の事言えないけどね。……厄介だね、私達。」


「似た者同士……お似合いかな?」


「そうかも。」



辺りはもう暗く、廊下を照らす蛍光灯の明かりを頼りに、二人は互いを見つめあった。

ゆっくりと顔が近づき、二人は目を閉じた。

千種 愛の章完


次章

2018年5月12日公開予定。

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