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はじまりの村の経営改革!

「ハチロー!!おきてー!」

「ぐへっ!!」

アリルの肘がモロにみぞおちに直撃する。しかも勢いよく。危うく永遠の眠りについてしまうところだったぜ。

いや、まじで。


「殺す気かよ!」

「どうでもいいけど、いつまで寝てるの?!村長が呼んでるわよ」

どうでもよくねえよ!

「そんなんだから、いつまでもムネがちっちゃい、ガキんちょのままなん…「え?死にたいって…?」すみません!なんでもないです!」

営業で培った誠心誠意の謝罪法でその場をなんとか切り抜けたオレは村長邸に向かう。


「おはよーハチロー!」

雑貨屋のオバチャンが声をかけてくれる。

村では秋からまもなく冬が来るらしく、木々は鮮やかに色づき、

ハラハラと舞う木の葉は秋を感じさせる。


「ハチロー!!」


かわいい、子ども達もオレになついてよってくる。こないだまで余所者だったオレがこれほど歓迎されると…うっ、泣けてくるぜ。

「ハチロー!!!!!」

「ぐべっ」

ケンタのカンチ○ーが思いっきりヒットしてしまった。ちくしょー!くそガキ!しばくど!



「おぉ、ハチロー、待っておったぞ」

オレは軽く村長に頭を下げる。

村長宅にはレツさんやコウゲンさんをはじめとして数人のオッサンが集まっていた。


「疲れはとれたか」

コウゲンさんがオレに語りかける。

「はい、すっきりと。」

…アリルにやられたみぞおちと、ケンタに食らわされたケツの穴が痛いなんて言えない。

「若いからな!!髪はワシのほうがふさふさじゃがな!」

がははっ、ともじゃもじゃ髭を揺らしながら笑う。

なにがおもしろいんだよ!髪むしるぞ!…とは言えなかった。明らかに強そうだからな!


「まず、今日、相談したいことが2つある。1つめ、戦利品の分配についてだ。これをみろ」

村長が革袋をひっくり返す。じゃらっと袋から出てきたのは、光る玉だ。


ブロンズが140コ。

シルバーが57コ。


「こりゃ、あのベオマの群れから出た玉ですか?」

オレの問いに静かに村長が頷く。

「玉は本来倒したやつに権利があるものじゃ」

「そういや…」

ポケットからブロンズの玉を取り出す。最初にゴブリンを倒した時のやつだ。‥オレのクサい革靴でな!


「オヌシももっておったか。今日はこの玉の分配についてだ。最大の功労者はハチローじゃ、ハチローが分配を決めよ」

「この玉って何か役にたつんですか?」


「おまえ行商のクセにそんなことも知らんのか!?」

コウゲンが呆れた声を出す。そりゃそうだよ、だってまだ異世界歴浅いんですもん。…ていってもわかってもらえないだろうなあ。


村長がざっくりと説明してくれた。

玉はいわゆる“魔力の結晶”のようなものらしい。

加工され、武器や道具の材料になるし、魔術使いが魔術の触媒として使用することもあるらしい。いわゆる生活必需品らしい。


交換レートはおおむねこの国では次の様になるらしい。 


ブロンズ50玉→シルバー1玉

シルバー50玉→ゴールド1玉

ゴールド50玉→プラチナ1玉


ブロンズ1玉→100イーェン

シルバー1玉→5,000イーェン


ちなみに、この村では

モー精肉1kg→1,000イーェン

コギの実10kg→3,000イーェン

モー乳1,000ml→120イーェン

おおむねこういった値段で取引されている。


ある程度の規模の街にいくと玉の取引所があり、そこで玉とこの国の通貨であるイーェンが取引されている。


「決めろって言われても、なんといいますか、手に入れても玉を売りに行こうにも街を知りませんし、ベオマを倒したのはみんなの力です。玉は村の財産ちゅーことにしてはいかがですか?」

あれ?オレなんかおかしなこと言いました?


「…おまえ、バカか?」

レツさんが本気で心配そうに言ってくれた。


聞くところによるとこの村の財政運営はその場その場で、いわゆる共同出資で賄われており、“村の財政”なる概念は存在しない。


ましてや、主たる産業である“肉類”や“乳”も年に数回王都からきて、王国の権力を振りかざし、ワイロや女を要求し放題の悪名高き“行商”に買い叩かれているのが現状であった。


オレは財政の必要性を説き、村の初の財政収入として玉を売りに王都に行くことを提案した。ついでに肉や乳などの畜産物もみんなから仕入れて王都で売る。


その金で、この村では生産できない、塩や紙など生活必需品を王都から仕入れ、村で売る。

行商を通じなくても生活できるようにすれば村の暮らしもよくなるはずだ。


事務用品販売の営業というのは企業で今求められているニーズを正確に把握し、提案していくこと。

オレの強みだ!


どんなもんだ!



「アレ?」

オッサンみんながぽかーんとしている。

村長は理解しようとがんばっているのか首をひねっている。


「なるほど!この仕組みおもしろいよ!これであの嫌なエロデブジジイの顔色をうかがわなくて済む!」

ぽんと手をたたいたのは、アリルだった。


アリルとオレが、また小一時間サルでもわかるように、噛み砕いて、ジジイでも飲み込みやすく提案をする。


「ふむ、これは、たしかにアリルの言う通り斬新なアイデアじゃの」

村長は理解したようだが、まだ首をひねって手のひらの指を折ったり開いたりしているオッサンが半分くらいいたけど。



「ただのう、商売を始めるには国王の許可がなけりできん。行商はお上と繋がっとるから強いんじゃ。


ちょうどええ、これから話すことが2つめの相談じゃ」




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