はじまりの村
ぜえぜえ。
「ここです。ありがとうございます!」
ようやく村が見えてきた。
清らかな川が流れるすぐ側に。赤い煉瓦の屋根と土壁の家々が見える。
高い塀に村全体がすっぽりと囲まれている。まるで何かから家々を守るように。
「おーい!」
少女が大きく声をあげる。
塀よりも高く、遠くまで見通せるであろう見張り小屋で動きが見える。
すると固く閉ざされた門の横、通用門らしき扉が開き、屈強そうな男たちが数人出てくる。
「アリル!!」
「大丈夫か!?」
「レツおじさん!」
アリルとはこの少女の名前のようだ。
レツと呼ばれたオッサンはオレのことを怪訝な顔で見ている。そりゃそうだな。だって、オレだってそっちの立場なら問答無用でぶん殴ってるよ。
「この子、足を挫いているようですよ。冷やしたほうがいいと思います」
「アンタ何もんだ」
「私がゴブリンに襲われたところを助けてくださったの。旅の方だそう…名前は…」
「ゴブリンだと!?もうこんなところまで!」
少女を囲んだ男たちがざわめいた。
「あのー、旅の営業…じゃなかった旅の行商です。あやしくないですよー名前は…」
…誰も聞いちゃいない。ゴブリンがでたほうが衝撃だったようだ。
「あのー立ち話もなんですから…中で手当てを」
そして、いつまでも担いどくの重いです。かわって…。