王都への旅路1日目
「皆、荷駄の準備をせよ。明日早朝に王都にむけて発つ」
そう村長が宣言し、急いで荷駄の準備が行われた。
王都へ運び売る、肉をつくるため、男はモーやメーを屠り、女は肉を部位ごとに切り分けていく。樽いっぱいに乳も入れ荷駄にくくられる。
これからは寒い冬がくる。人間には辛いが、肉や乳の輸送には気をつかわなくてもよいそうだ。冷蔵技術は無いため、夏場は塩に漬けて運ぶらしいが、それでも寒いほうが品質が保てるんだって
。
乾いた風が頬をとおり抜ける。この乾燥した空気が食材を腐らせないのだ。
子ども達も手伝いながら、魔物が臭いを嗅ぎつけ襲ってくるのを少しでも避けるため布袋に入れたのち莚を被せその上に藁をのせる。
オレは、積みこんだ肉の種類、量を細かく羊皮紙(メーの皮でできた紙のようなもの)に書き留める。この作業を誰もしないのが驚く。なにやら問屋に言い値でまとめて売っていたらしい。しかしこれでは売れ筋の商品も分からなければ、前回の種類別の売値も分からない。交渉のしようがないのだ。うん、営業の鉄則ですよ。
あと光る玉―魔力石については、布袋に入れて、ブロンズ、シルバー毎に種類をわけてこれも記録しておく。
アリルは字は読めないものの、計算は早く、電卓が無くても頭の中で、計算をしてくれる。教えればすぐ字を覚えることができそうだ。
…
…
翌朝、日の出とともに俺たちは土壁に囲まれた村の大手門前を出る。
寒い朝になった。おれたちは麻袋を被ったような服の上にメーの毛皮を被る。そしてマフラーもしくは覆面のように首元を綿を詰めた布で覆う。
「夜明け前の道でこんなのが出てきたら、完全山賊と間違うだろ」なんて言ったら
「大丈夫。これから王都のまで出会うとしたら魔物か本物の山賊だから」
とアリルが言うし、余計に行きたくなくなってきたよ…。
「それでは出発する」
と村長が手を高らかにあげる。
「道中お気をつけて」
コウゲンさんはじめ、留守をあずかる人達が深々と頭を下げ、
子どもたちが手を振っている。
この土壁を出ると、どんな魔物が襲ってきてもおかしくない。王都までは途中峠の村で一泊し、山を越えていくことになるらしい。明日の夜になる前に到着しなければならない。
のどかな草原を越えていく。幸いに天気に恵まれ、涼やかな風が私たちの旅を心地よいものにさせてくれる。
がたがた道のウマが曳く荷駄の上は元いた世界では腰痛持ちのオレにとっては不安だったが、この間の肉体労働のおかげで筋肉がついたからか、意外と平気だった。
アリルは心地よさそうにうたたねをしている。
「今のうちに体力を温存しておけ。何がおこるかわからない」
とレツさんは言うが、営業事務職しか経験したことがないオレにとっては、コレがなかなかこれが難しい。
レツさんの言葉に反して、日が傾くまでは旅は順調に進む。
一面草原。遠くに森や切り立った山々が見える。山々の頂上付近にはうっすらと雪が残る。
人工物は目の前にか細くつづく道だけ。手つかずの大自然がこんなに雄大で美しいものだとは思わなかった。
この世界の夕陽が北へ傾きはじめ、『コロンド村』という標識が道端に刺さっている。
「あの山のふもとが今日泊まるコロンドじゃ」
村長が言う。
よかった~ようやく、休める。
腹も減ったし、疲れた。ほんとに休みたい。
ずっと荷駄の上とはいえ、なれない旅でくたくたなのは事実。おれはようやく足を延ばせることにほっとした。
「おかしい!」
「どうした!ライドウ!」
レツさんが尋ねる。
「おかしいですよ!もう日も暮れているのに、かがり火が見えない。飯炊きの煙もでちゃいない」
ゴランくんも敏感に反応する。
「どちらにしても、今日の宿泊場所はコロンドしかない。もう少し近づいてみよう」
村長の指示に従うことにしたが、村の全景が見えてきても、人の気配がない。
「どういうことじゃ」
オレ達一行は村の大手門の前に来た。オレ達の来た村よりも少し小さいが、土壁も高く、山あいのなかでしっかりとその存在感を見せる村だった。
「おーい!ヤムペツ村から来た!開けてくれ!」
レツさんが叫ぶが、反応がない。
オレは裏口がないのかと壁伝いに歩いていると、
「村長!!!壁に穴が!」
大手門の少し先の壁が崩れ、大きな穴が口をあけていた。
「入ってみます!」
へっぴり腰のオレに代わりライドウくんが率先して入ってくれた。
「うわあああああああ!!!!!!!!」
「どうしたんだライドウくん!」
オレがかけよると空いた穴から村の中が見えた。
そこには村人らしき人々の残骸と、人ではない何物かに荒らされたであろう家々がそこにはあった。
いつもご覧くださり、ありがとうございます。
はじまりの村の名前が初めて出てきましたね。名前の意味がわかる方はおられるでしょうか?




