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転生ってちょっと待ってよ

チチチ…チチチ…

小鳥の鳴き声がする。


心地よく香る涼やかな風。


風が通る度にさわさわと揺れる木々の緑。


こんなに心地よく、ゆっくり眠ったのはいつぶりだろう…。


え、眠った?

はっ!!


しまった!オレいつからここで眠ってたんだ!?

たしか、営業先を訪問したあと、田舎のラーメン屋に入った。

ミソチャーシューメンの葱大盛を小太りの大将に頼んだ。出てきたラーメンに

「これ、入れたらもっと旨くなるぜ」


なんて大将に言われて、ツウぶって、「ニンニクと唐辛子の粉やろ?」「それとも魚粉?」

なんて言いいながら、かけた不思議な粉…。一口食べたら妙に眠たくなって…


「は?!」「…どこやねん、ここ!?」


んで、オレのラーメンは?!

給料日前だったけど、商談が旨くいったから奮発してミソチャーシューの葱大盛頼んだんやぞ!前払いの食券制だって言われて、カネもう払うてしもたぞ!!くそっ返さんかい!オレのなけなしの1,080円


「ラーメンの話だけかいな」

オレの横の茂みから、ラーメン屋の小太りの大将が現れた。

「やれやれ、さすがにこのトシともなってラーメンを作るんは、疲れるで」

ぶつくさ言いながら、ハゲた頭をなでながら出てくる。違うのはそれは古びた厨房着から、何やら高級そうな服(古代ローマの風呂屋が現代にとばされる話にでてくるような着物?みたいな服)を着ていることだけだ。


「あ、お前、あのときのオヤジ!くそっ、カネ返せや!てか、ラーメン食わせろや!コラ!」

「ごめんムリ」


「…ってふざけんな!クソオヤジ!」


オレは思わずオヤジにつかみかかろうとした。…が、その瞬間、

「アイタイタイタタタ!!」

全身に電気が流れるような強い刺激を受けた。


「ゴホン、お主はこの世界を混沌から救うために転生させられたもうたのじゃ。神の激しいチカラによって…」

「はぁ!?」

「髪つったか!ハゲつったか!コラ!」

中年男性のウイークポイントを突かれ、オレは思わず声を荒げたが、

「アイタイタタタイタ!」

また電流によって黙らされた。


「髪ではない、神じゃ。荒ぶる神の力によってじゃ…もうよい、話が前に進まぬので、ワシは消える。じゃなハゲ」


「ゴラッ!てめえ、またハゲって!」

思いっきりぶん殴ったが、空振りに終わった。

「いてて」

久しぶりに震った腕が痛い。

まだ四十肩にはなってないはずなんだけど。

運動不足が祟ったか。


ふと、周りを改めて見回してみる。

草原。

木、草、木、草以上。


これって、もしかして“異世界転生”ってやつか?


魔法が使えたり、現代知識を活かして無双できたり、チートってやつだったり…

オレが今はまってる『小説家になるべし』ってサイトの投稿小説みたいじゃねーか!


こりゃすげー!


でも、あれ?

魔法の使い方、知らない

異世界で使える現代知識、ない。ただの無資格の営業マンですし。


もしかして、スマホは!…電源が入りません。


あ、もしかして美男子になってたり、銀髪になってるかも!


あ…鏡がない。


近くに鏡になるようなものは…、オレは真っ暗なスマホをキュキュッと磨き、鏡のように自分の顔を映す。

変わったところはない…残念ながら。

さっきクソオヤジに電流を流されて、気になりはじめた頭髪が乱れているくらいだ。


服もくたびれたスーツのまま。


腹回りも、夜のビールのせいでふくよかになってしまった腹が変わらず存在するのみ。


くそー!!

ゴラッ!クソオヤジ!!

元の世界に返せー!


期待したオレの純情を返せー!




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