魔法使いと少年
なんかテキトーに書いてみた。
正直テキト―過ぎて、いつ続きを書くのかはわからない・・・・・・。
この世界は一人の魔法使いによって、統治されている。けれど人々は魔法使い(それ)の顔を知らない。
ただ生まれてきた時から、魔法使いと呼ばれる者が偉い。それに逆らえばどんなことが起こるのか分からない。だからそれのことは「神」として崇めておこう、いるはずのないシンボルとして信じていよう、と。
忘れ去られた過去の英雄の様に、人々は頭の片隅にそれのことを覚えているだけだった。
緑の生えない、荒れた大地。
風が吹けばたちまち立ち込める、砂煙。
雨が降れば水分全てを吸収してしまう、土。
そんな荒れ果てたところに、僕の家はある。ある、といっても家は遊牧民が暮らすようなテント、それだけ。仕事は、道化師達に貢ぐための野菜作りと、自分たちが必要最低限な野菜作りだけ。
……言っておくが、給料なんて存在しない。
なぜなら僕らの様な人間は生れてから死ぬまで、彼らに「生」を当てえる為生まれてきた者なのだからだ。
「407、408、409」
鍬を勢いよく振り上げて、地面に突き刺し、土を掘り起こす。ただこれだけの作業を1時間で400回以上やっている。
強制労働を強いられてるわけではない。これはただ、暇なのだ。
あまりにも自分が無能な故、鍬を振り上げて下すか、野菜を選定するか、水を取りに行ってあげるかしかできないのだ。
さきほどまで一緒に耕していた老人、若者などいない。ただ一人でもくもくと土を起こしているのだ。生まれて16年、まあ少し経てば17年になるが、畑仕事以外したこともなければ、それ以外にすることもなかった僕は、皆よりタフになっているようだ。
「421、422……」
汗が額に、ようやく出始めた。腰を上げ、腕で汗を拭うと珍しいコトに人影らしいものが見えた。
「黒いマント、かなあれは。服装だけ見ると旅に適した格好をしてるけど、水とか持ってなさそうだなぁ」
もしかしたら魔術師なのかもしれない。
だがそれはあり得ないことだった。
そもそもこの世界はピラミッドのように表すことが出来る。頂上はいるかいないかすら分からない、魔法使いが一人。
その下に三強と呼ばれる、魔術師、錬金術師、道化師の魔法使いの後継者のようなものたちが存在し、世界人口の半分は彼らの様な「才能」を持った者がいるのだ。
そして一番下、まさに僕の様な人々に最低限の「生」を作るために生まれてきた、平民がいる。もっとも、「才能」がないだけで魔術師らとも見た目も変わらないのだが、優劣ができてしまっている。
―この世界は間違っている―
それが僕の偽りざる負えない感想だ。けれど例え才能があったとしても、その中の一番下にいたことは間違いないだろう。
「……あのう私、旅をしているもの何ですが」
珍しいといえば、珍しい人が来たものである。領地を拡大するために来たならわかるが、まさかただの旅人を名乗ってくる人がいるとは思いもしなかった。
「はぁ旅人ですか、珍しいことをする人がいるものなんですね」
「いえ、趣味でやってるものですから。普段は魔法使いをやっていますよ」
そういって深々と被っていたフードを外す。
その顔を見た時、3つの驚きを覚えた。
まず1つは声から予測は付いていたが、顔立ちがまだ若い少女であったということ。この世界の女性のほとんどが商売娘として、扱き使われると聞いたことがあり、その彼女たちに自由が与えられている、ということ。
2つ目は、世界に一人しか存在しない魔法使いを名乗ったということ。
そして最後が、思った以上に美少女だったということだ。
旅人の割には匂いもしないし、汚れているといえば着ている黒いローブだけ。顔にどろなどはなく、背中まで伸ばされた銀髪は艶やかで潤いがある。どちらかと言えば、僕の方が旅人っぽい汚さがあった。
「魔法使いって……、あのうアナタはバカ何ですか?バカにしてるんですか?」
「む、それは聞きづてならないわね。魔法使いを名乗って良いのは、魔法使い本人だけの権限よ?つまり、私以外の人が名乗ったのならそれは間違いなく偽物よっ」
腰に手を当て、ぴしっと僕に人差し指を突き付けてくる。
なんだろうこのパチモン感。きっとバカの分類に入るんだろう。
全くもったいない美少女である。
「大体、アンタ見た目からして17歳、少なくとも20歳は超えてないはずだ。そんな少女が魔法使い何て務まるわけないじゃないか」
「あり?この村には伝わってないのかな。私、18年前に魔法使いに就いたんだけど、情報がいってないのかぁ」
首をがっくり落とす。怒ったり、説明して肩を落としたり、忙しい少女である。
けれど僕も鍛錬された人だ。いくらこの村にはいない少女、しかも「美」がつくほどの少女が目の前で魔法使いを名乗ったとしても信用できるわけがない。
「なら、魔法使いってわかるような魔法を使ってみてくださいよ。言葉でいうより、見せてくれた方が僕も納得できますし」
僕の少ない知識によると、魔法使いと三強には大きな違いがある。
それは、術を使うかどうか。素材を使うかどうかの2つ。
一番わかりやすいのが、錬金術師だろう。この村を統治する彼らは、金属や、金鉱を扱うことを得意としていて、それらと術式を組み合わせることによって、いろいろな結果をもたらすことができるのだ。
しかし僕の知っている魔法使いなら、そのような素材を使用せずに奇跡に近い事象をもたらすに違いない、と思っている。が、実際のところ魔術も錬金術も道化も見たことはなく、全てが過去に伝わる言い伝えの知識によるものであった。
「ホントっ!?」
今度は目を輝かせ、僕の土で汚れた手をとって握る。
顔と顔の間が15センチ。生まれて初めて、間近に女の子の顔があると考えたのはそれから20秒後のことであった。
「わ、わわぁ」
「きゃっ、な、何?何?」
僕が慌てて手を離すと彼女も驚いて手を離し、顔との距離が離れた。
「いや、急に手を握られたからびっくりしただけだよ。驚かせたのならゴメン」
「な、何だ~、未知の生物が出てきたと思ったよ。で、私は何をやったら認めてもらえるの?」
「そうだね……」
辺りを見渡す。
乾いた大地が広がっている。見た目でもわかるくらい、土に栄養が無い。
ここ数年、水も、たい肥も与えていない土からは、野菜も果物も採れていない。
僕がこうやって土を耕していたいたのも、少しでも深く掘って水分を持った土を掘り出したかったからだ。
「ならこの乾いて廃れた大地に、水分と栄養を与えてくれないか?」
「それは良いけど、少しアバウトすぎるわ。……そうね、この大地というのはどういう範囲のことを指してるのかしら」
「わかったよ、なら僕が耕したこの一帯に魔法をかけてくれ」
そういって僕は土に線を描いていった。大きさは約10平方センチほどである。
「この大きさね、ならちょっと離れてくれないかしら?多分魔法で酔っちゃうと思うから」
「え、わかった」
指定した場所から五歩下がった。しかし彼女は、それだけしか離れないの、という表情をしてみてきたが無視した。自称魔法使いの腕はどれほどのものなのか、興味があったからである。
「んじゃ、やるわね。正直これくらいの規模なら一瞬で終わるから、今回は特別に呪文を使った魔法を見せるから。もし、私が魔法使いという証明ができたら、生き返らせたこの土地でできた野菜とかちょうだいね」
指定した場所に足を踏み入れる。目をつむって左手を胸に置き、右手は大地にかざすポーズをとった。
乾いた大地に風が吹く。表面上がさらさらとした砂漠の砂のせいで、埃が立ち始める。先ほどまでの無風は嘘のようで、まるでこの儀式を邪魔するかのようだった。
けれど彼女の呼吸は乱れることはなく、むしろ落ち着いていく。
と。
「な、なんだあれ?」
彼女が何を唱えているかは、聞こえない。だが大地にかざしている右手からは、水色の淡い光が灯し始めた。すると一瞬強い光に包まれたかと思ったら、そこにあった大地はすでに潤いがあった。
信じられなかった。仮に水を持っていて、それをまくために光で眼を眩ましたとしても、指定された土全体が湿っているため、その考えは間違っている。
本当に起きたのだ、奇跡が。
それは未知の出来事。僕にとっては未知の事象。
「ね、どうよ!土触って分かるように、湿らして、微生物とかも増やしといたから」
両手を腰に当て、胸を張る。
「す、すごい、本当に魔法が使えたなんて……」
僕は目の前で起きたことが、未だに信じられなかった。
手が光る。そして、土が一瞬で湿る。しかも湿っている範囲も僕が指定した通りの所だけで、何より表面上だけじゃなくて、掘り返せる範囲での深いところまでもが全てだ。これだけの力量があるのならきっと、魔法使いなのだろう。
が、それと同じようにドヤっていた彼女もまた、少し驚いていた。
「キミさぁ、初めて魔法とか、魔術の類を見たんだよね?」
「そうだよ。けど、それがどうしたのさ?」
ぶつぶつと独り言を言ったかと思うと、またいきなり僕の手を掴んで顔を近づけた。
「ウソ、キミ気持ち悪いとか、倒れそうとか、体の不調がないわけ?」
「え、う、うん」
「ならさ、私と一緒に旅をしない!というか決めた、次の魔法使い後継者はキミにした」