表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/8

水龍とフルート

「我に知識を与える者。我の尊厳を守る者。我が求めるは"流れの眷族"。顕現されたし、我が名は――カティア=エステス」


魔法陣から放たれる青い光。

光が収まるとそこに姿を現したのは、上級の水龍だった。大きさは直径5m程で、綺麗な淡い青色の鱗を持っていた。


「契約、してくれるかい?」


穏やかなな声音で呟かれたその言葉に、水龍は戸惑いも見せずコクリと大きく頷いた。手を差し出すカティアの手に、頭を寄せる水龍。

そして、彼女の頭の中に響いてきた綺麗な女性の声。


『妾に名を』

「名前……では、アマラと」


水龍に名前を付けると、カティアと水龍の首筋に現れる波模様を模った濃い青色の紋章。

カティアの契約は、いとも簡単に時間もかけずに終わった。


アラマと名付けられた水龍は、一度頭をカティアに下げると、本来使い魔となった者が行く自分の異次元空間へと姿を消した。

因みに、腹の痛みが消えたテオドロスも異次元空間へと姿を消していた。唯一、ルーカスはディルの傍に控えている。


「おっつかれ、カティアっち!」

「疲れてないだろうけどねー」


ゼノたちの所へ戻ってきたカティアは僅かに微笑み、次はユリウスだと言わんばかりに視線を向けた。

今までの契約を心配そうに見続けていたユリウス。カティアの視線に小さく頷くと、かなり不安そうな表情を浮かべながら魔法陣に向かっていった。


「ユリウスなら大丈夫だよ。落ち着いて」


身を縮こませているユリウスの背中に、ゼノが声をかける。

しかしユリウスは心配性なうえにネガティブ。魔法は得意で戦闘も強いのだが、精神的に彼は弱かった。


「は、はい……頑張ります」


ドキドキと脈打つ心臓の上を握りしめ、魔法陣の上に立つ。深く深呼吸を何度も繰り返し、自分自身を落ち着かせる。

大丈夫、大丈夫と何度も心の中で呟き、ユリウスはそっと瞼を開いた。


「わ、我と共に戦う者。我が求めるは"振動の眷族"。顕現されたし、我が名は――ユリウス=ティアム」


言葉が紡ぎ終わると、魔法陣から美しい旋律が溢れだした。聞いた者を皆魅了してしまうような旋律が。

穏やかな気持ちになるような気がして、その場にいた五人は皆その旋律に酔いしれ目を伏せていた。


そして、音が止み目を開くと、ユリウスの目の前には一本の白いフルートが浮遊していた。それを見て首を傾げるユリウスとゼノたち。

まあ、使い魔召喚なのにフルートが召喚されれば、誰でも不思議に思い首を傾げるだろう。


『自分を呼んだのは、貴方でございましょうか』


澄んだ中性的な声がフルートから発せられる。

まさか無機物が話をするなんて、と失礼なことを思ったユリウスだったが、コクリと小さく頷いた。見えているのかわからないが。


『契約方法は、自分を奏でることでございます。奏でることが出来れば、自分は貴方と契約を交わしましょう』


不思議な契約方法だ、とゼノたちは思った。勿論ユリウスも思ったが、契約を交わさなくては、と目の前に浮遊するフルートをそっと手に取る。

口をつけてもいいのだろうか、と不安になりつつそうしなければ音は奏でられないと、彼はそっと唇をつけ、音を奏で始めた。


それは、魔法陣からあふれ出したあの旋律よりも、優しく温かな、美しい演奏だった。


『素晴らしい。約束通り、契約を交わしましょう。自分の名は、ティトスと申します』


ティトスと名乗った瞬間、ユリウスの頬とフルートの胴体に音符を模った紫色の紋章が浮かび上がる。

自分は異次元空間へおります故、必要あらばおよびください。そう言ってティトスは姿を消した。


「よかったね、うまくいったじゃん!」


そう言って戻ってきたユリウスの頭をクシャリと撫でるゼノ。ユリウスはその手にホッとしたようにへにゃりとした笑みを浮かべた。


とんとん拍子に無事使い魔契約が終えていき、最後が訪れた。

最後はゼノの番。皆に見送られ、魔法陣の上に立つ。


その瞬間、今までこちらを気にも止めずそれぞれのグループ内しか見ていなかった生徒たちの視線が、ゼノへと向けられた。

ゼノが、人気者だから向けられた視線、ではなかった。その向けられる視線全てに、ゼノを馬鹿にするような感情が混ざっている。


ゼノは、グループを組んでいる人以外のクラスの生徒たちに嫌われていた。理由は至極単純。

仮にも二番目に有名な学園に、魔力量が少なく魔法を使えない落ちこぼれが、この場にいることが許せないようだった。


「ゼノ、頑張ってくださいね」

「ゼノっち、すっごいの召喚して、皆を驚かしちゃえ!」

「ゼノ君。君なら大丈夫だ」

「おい、ゼノ! 気合いだぞ、気合い!」


皆が嫌悪の視線を向ける中、ユリウス、リアナ、カティア、ディルはゼノへとエールを送る。それに応えるように笑みを皆に向け、瞼を落とした。

そして、紡がれる言葉。


「我と共に突き進む者。我と共に守る者。我が求めるは"月の眷族"。顕現されたし、我が名は――ゼノ=ステイラー」



ぱぱっと召喚終わらせてすみません。

はやく主人公を登場させたくてっ;;

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ