依頼
両親強すぎる……。チートな子にはチートな親あり……
ゴォォォォォォォォン
授業終了の鐘が鳴った。僕は教科書とノートをしまい、学食へ向かった。
「レン、こっちだ!」
学食でご飯を貰いうろうろしてると拓也から声がかかった。
「あ、拓也。今行くよ。」
僕は拓也がいるとこまで向かった。しかしそこにはいつも拓也といるはずの海斗がいなかった。
「あれ?海斗は?」
「ああ、海斗なら先生に呼ばれてた。」
「先生に?なんかやらかした?」
「あいつに限ってそれは無いだろ。」
「先生に説教されるなら海斗より拓也だもんね。」
「んだとぉ?まぁ、否定は出来ないがなっ。」
そう言って笑う拓也。すると海斗がやってきた。
「レン、拓也、すまない、遅れた。」
「いいって、飯食うのは待ってやったぞ。」
「海斗も揃ったし、ご飯でも食べよっか。」
「「いただきます。」」
拓也はもうすでに食べていた。
「そういや、海斗。何で先生に呼ばれてたの?」
僕はさっきの疑問をぶつけてみた。
「実はこの学園に鳥型の魔獣がいるのが確認されてね、数人だが被害が出たんだ。」
鳥型の魔獣か……。確か僕と光華ちゃんを襲ってきたのもそれだったな。
「それで、魔獣を速く駆逐するために遊撃協会に依頼をしてきてくれ、ってね。」
「それってお使いってことか?面倒くさい事押しつけられたな。ま、1人で行くのもつまらんだろうし、付いていってやるか。な、レン。」
「うん!しかも1人だったら魔獣に襲われやすいからね。」
「ってなわけだ。俺達も付いていくぜ。」
「分かった、分かった。」
「それで、今日の放課後か?」
「うん。先生にも今日中にお願いと言われたしね。」
「それなら、校門の近くで集合か?」
「そうだね。それじゃぁ、また後でね。」
僕達は既に空になっていた食器を食堂に戻して、解散した。
放課後、僕はすぐに校門に向かった。校門には海斗も拓也もまだいなかった。数分後、海斗と拓也が来た。
「レン、速いなぁ。」
「待たせてしまったかな?ごめん。」
「今日は授業が速く終わったんだよ。」
「なるほどな。」
「それじゃあ、行こうか。」
その後僕達は学園で今日あった事などを話ながら協会へ向かった。
約40分くらい経っただろうか。僕達は協会を見つけていた。
ウィーン
自動ドアが開き中へと入った。
「いらっしゃい。今日はどのようなご用件ですか?」
受付のお姉さんが言った。海斗が要件を言うと、お姉さんは困ったような表情になった。
「どうかしましたか?」
「ええ。実はこの所、鳥型魔獣、イーグリットの討伐依頼が多く、さらに協会内でも負傷者が出ているため、各支部や本部から派遣されて来る方が多く、討伐依頼や長期依頼がいつもより以来料が高くなっているんです。」
「そうなんですか。構いません。」
そう言って海斗は話を進めていく。そして用紙に海斗が名前を書いた。
「はい。これにて依頼契約完了です。ありがとうございました。」
……帰り道……
「海斗、勝手に契約しちまって良かったのか?」
「大丈夫。例の件については先生から聞いていたからね。」
「だから、普通に受け答えしてたのか。」
「でも、協会内で被害者が出てるとは……。人手不足とだけは聞いていたんだけどね。」
「確かにな。遊撃協会の連中が苦戦するような敵がうろついてるのか。」
「いや、イーグリットはそこまでの脅威では無いんだ。イーグリット五体を相手に新米遊撃仕が三人で撃退したという事を聞いたことがある。しかもイーグリットの餌は虫系が多く、攻撃しなければ人間を襲う事は少ないんだ。襲うどころか逃げるイーグリットもいる。」
「つまり、イーグリットの凶暴化、それに伴う戦闘能力の上昇って事か。だが、魔物の凶暴化ってのは魔力暴走が起こった時じゃ無いのか?」
「うん。それに魔力暴走を起こしても長くても1日、早ければ数分で収まるはずなんだ……。一体何が起こっているんだ……?」
「まぁ、俺らが考えたって結論は出ねぇ。後は協会の連中に任せておこうぜ。」
その時だった。一匹のイーグリットが僕らの方へ向かってくる。周りにたいして障害物が無い僕らは魔獣達にとって見つけやすいようだ。
「海斗!拓也!イーグリットだ!」
「!」
「なっ!」
海斗と拓也は素早く武器を構えた。僕も銃を構える。僕と海斗でイーグリットの周りを撃ち行動範囲を狭め、拓也がそこに剣を振る。その剣を横によけたイーグリットは拓也の懐に入り込もうとするが拓也が剣でガードする。そしてそのイーグリットに銃を撃ちまくる。イーグリットが怯んだ隙に拓也が剣で切りかかる。イーグリットはそれを避けようとする。しかし拓也の剣がイーグリットの羽にぶつかり、イーグリットが悲鳴を上げる。そこを海斗が変色している弾を詰め撃つ。イーグリットに見事に着弾する。イーグリットは海斗を睨みつけ、海斗へ突進する。僕は剣でイーグリットの行く手を阻む。イーグリットは上に跳び、またもや海斗目掛けて突進した。海斗は横に転がりながら避ける。イーグリットは止まれずそのまま地面に当たりそうになったが、何とか上に飛ぶ。そこに僕は撃った。それを食らったイーグリットはふらふらと飛ぶ。そこに拓也の剣が放たれた。イーグリットは地面に叩きつけられ、気絶した。そして気絶しているイーグリットの頭を海斗が撃ち抜く。
「確かに強くなってるな。耐久力もそうだが、まさか敵に避けられるとは思わなかったぜ。」
「それに、毒弾に気付いていた。普通の弾を当てても拓也を狙っていたはずのイーグリットが毒弾を当てた後に僕を攻撃対象にしていた。頭脳が発達しているようだな。」
「確かにあれなら一人だときついと思う。」
「だけど、一体だけで良かったよ。イーグリットは一体で行動をする場合もあるけど多いときは二十体くらいで行動するからね。」
そんな話をしていたからだろうか。僕らの周りにバサッバサッっといった羽ばたきの音が聞こえる。周りには五体のイーグリット。
「う、嘘でしょ?」
「流石にこうなると僕らには対処できないな。」
「おいおい、シャレになってないぜ……。」「まずい!来ます!」
「出来るだけ道を開くんだ!道が開けたら逃げるよ!」
「「了解!」」
「だ、駄目だ!隙が攻撃を防ぐのがやっとだ。」
「かはっ!」
「海斗!」
海斗の声が聞こえ振り向く。しかしその隙を突かれ僕も攻撃を受けてしまった。
「ッッッッ!」
「これ以上はきついっての!」
僕と海斗が倒れたのを確認したイーグリットは拓也を狙い始めた。そのせいで拓也が防御に間に合わず攻撃を食らい始める。
バンッバンッバンッバンッバンッ!
五発の銃声が聞こえ、イーグリット達は攻撃をやめた。そしてイーグリットはどこかに飛んでいった。
僕はその行く先を見る。そして……
【石口流双剣術攻の技桜花】
飛んでいくイーグリットといつの間にかイーグリットより前に出ている男。後ろにいるイーグリットは細かく刻まれ血によって赤く染まっているその様はまるで桜の花びらがひらひらと舞っているようにも見えた。
「まだまだ、未熟者だな。レンよ。」
僕の名前を呼ぶその声の主は聞き覚えのある、馴染み深い声だった。
「…………お父さん?」
その声の主とは僕のお父さんだった。
「ははは、驚いたか?」
僕らは傷の痛みも忘れポカーンとしていた。
「お……父さん?何で……ここに?」
「ああ、イーグリット討伐で元遊撃仕だった俺にも声がかけられたんだ。面倒くさかったんだが、お前の近くだったもんで引き受けた、と言うわけだ。」
「さっきの……銃の人……は?」
「はっはっはっ、何を隠そう、母さんだ!」
「か、母さん!?」
「あらあら、何を驚いてるのかしら?」
クスクスと笑いながら、こちらに向かってきた。そして僕らの前で、魔法陣を展開。僕らの周りに緑の円ができる。その柔らかな光に当てられると、身体の傷が塞がっていき、痛みも退いていった。
「さて、私達は協会に報告があるからこの辺でお別れね。また襲われないように気をつけなさいよ?」
と言って両親は去っていった。僕らはしばらくポカーンとしていた。
「レンの両親は二人ともただ者じゃ無いな……。」
「うん、僕もそう思う……。」
「レンの母さん美人だったな。」
拓也だけ訳の分からんことを言っていた。
僕らは学園にかえると先生に報告をしてる時も、寮に戻った時もも尚ポカーンとした感じだった。