寮戦
「僕のお父さんが有名人?」
僕は海斗の言った事に戸惑っていた。お父さんからはお父さん自身の事を話すことはあまり無かった。
「そうだよ、石口翔吾と言えば双剣の使い道を極め、さらに世界で一番最初に双剣の道場を開いた人物だよ。」
「へー、よくそんな事知ってるのな。」
「……。拓也知らなかったの?」
海斗が呆れたように言った。それに対して、俺はきょーみねーからなと拓也。
「だがその凄いお父さんがいるなら、『寮戦』は上位を狙えるんじゃね?」
「あの…寮戦って何ですか?」
「あぁ、寮戦ってのはいくつもある寮どうしで戦うんだよ。絶対参加って訳じゃ無いが、参加した人には参加賞、上位入賞した人には特別賞、そして優勝した寮には豪華景品をプレゼントってわけだ。どうだ、面白そうだろ?」
「それって危なく無いの…?」
「校長が直々にプロテクトの魔法をかけてくれるからな。プロテクトが壊れたらその人は退場だ。」
「でも僕まだ入学したばっかだし…。みんなに迷惑かけないかな?」
僕の一番の気がかりを聞いてみる。また『力も無い癖にしゃしゃり出やがって』なんて言われたく無かった。
「作戦とか全くなしでやるからな。みんな適当に暴れて上位いけたらいいなって感じだから気にすんな。」
「それなら出てみたい!」
「よっしゃ!それならレンの力、見せてもらうとしますか。」
「その寮戦っていつごろやるの?」
「毎日午後10時から30分間だ。」
「……多いんだね。」
僕の反応をみて海斗と拓也が笑い出した。「?」
「あぁごめんごめん。俺達も最初聞いたときは同じような反応してたからな。」
「そうだね、まぁ拓也は喜んでたけど……。」
「毎日ストレス発散出来るなんていいじゃないか。」
そして僕らは夜まで他愛無い話を続けていった。
そして夜の校庭に僕らは集まった。10時になると僕らは亜空間へと飛ばされた。亜空間の印象は入学試験の時とは違い、廃墟になった街のようだった。空は薄暗く、僕はすこし怯えていた。
カキィィィィィン
鉄と鉄がぶつかった音がする。僕はその音にびっくりした。後ろには、銃弾が落ちていた。
「なっ!?」
そうだ。たしか魔法がかかっていたのだ。「入学したての雑魚かよ。つまんねぇ」
そんな言葉がしてまた僕に銃弾があたる。魔法は衝撃を食らい、三発目を食らえば破れそうな感じだった。僕はすぐさま近くの廃屋に入り込んだ。僕は双剣を構え、敵対者の追撃をまつ。
「はは、逃げたって、無駄だぜ?」
相手は僕が入学したてということに気づき油断している。廃屋に入って来たようだ。僕は敵の前に立つ。
「ほう、逃げるのは止めか?」
そういって銃を向けてきた。油断している相手は隙だらけだ。トリガーを引き勝ち誇った笑みを浮かべてる。
【石口流双剣術攻の技双連襲撃】
相手が隙を見せた瞬間に間合いを一気に詰め、得物に連続攻撃を与え最後に強烈な一撃を放ち、得物を弾き飛ばす、武装解除の技だ。
完全に油断しきっていた相手はその銃を弾かれたあとの思考回路が追いつかなかったのだろう。驚き、慌ててもはや隙の塊のような状態になっていた。
【石口流双剣術攻の技霧雨】
もの凄い速さで体全体を切り刻んでいく。一発一発のダメージは少ないが、体全体への攻撃なので、体への疲労感を与える技。
相手は防ぐ事も出来ずに体中を切り刻まれてゆく。そして相手のプロテクトが切れかけて来た。
【石口流双剣術攻の技双牙烈風】
切り上げ攻撃をして胴体ががら空きになったところへ、二つの剣を使い胴体へ剣撃をいれる技。ダメージ量は高いが隙が出やすい技なので、使いどころを気をつけなくてはいけない。
この技をもろに受けた敵はプロテクトが破壊され、亜空間から消えた。そしてカード(入学許可証)が光出す。僕はカードを出すと、そのカードから合成音声が聞こえた。
『おめでとうございます。寮戦にて一人目を撃破しました。撃破ボーナスとして魔力5パーアップの機能をアクセサリーに付属しました。撃破ボーナスとは寮戦にて一定人数を撃破すると手に入る報酬の事です。十人目、二十人目、三十人目と十人単位で増えていきますが、今回は初回により一人目をカウントします。では引き続き寮戦を再会してください。』
ようは敵を多く倒せばボーナスを手に入れられるってことか。
「まさか入学したばかりの初心者が彼を倒すとはね。君もなかなかやるじゃないか。しかし、先程の戦いでプロテクトが破れそうだ。ふふ。今の君は例えるなら、弱った虎かな?力はあるが攻撃を食らえばすぐにでも倒れてしまう、ね。」
僕は声がした方へ振り向く。剣先を向けられていた。僕はすぐに後ろへと飛び距離を置く。
「ふふ。僕を倒す気かな?全力を尽くすがいいよ。僕のプロテクトに傷をつけられるようにね。」
【石口流双剣術守の技盈月】
双剣を速く降り空中を斬る。それにより真空が生まれ、自分の周りを囲むように回りだす。触れれば、その真空が刃となり相手を切り刻む。
【石口流双剣術攻の技虧月】
守の技盈月より生み出された真空を自分の飛ばしたい方向に刃を飛ばす技。僕が飛ばした真空を避けずにただそこに立っている。それが相手に直撃するが…ダメージが通った後は無い。
「ふふ、驚いたかい?この防具は物理ダメージを激減させる防具なんだよ。君の攻撃は効かないのさ。君は魔法をまだ習ってないようだからね。君に僕を倒すのは不可能さ。」
(あ、この人バカだ。)
まさか戦術をこうも簡単に吐いてくれるとは…。魔法じゃなくても物理ダメージじゃない技だってあるのに…。
【石口流双剣術攻の技盈虧爆炎】
さっきの真空の刃を飛ばす過程で刃と刃を幾度となくぶつけることにより熱を生み、空気と混じり合う事で爆発する技だ。これは属性ダメージで属性は火だ。
「なっ!?バカなっ!?」
どうやら属性ダメージはよく通るという欠点があるらしい。プロテクトがみるみる消えていった。
二人目を倒し、三人目の奇襲に備えて警戒をしていたが、そのあとすぐに30分経った音を聞き僕は亜空間から出た。僕のすぐそばに海斗と拓也がいた。
「レン、まさか最後まで亜空間内にいるとはな。なかなかやるじゃないか。」
「そうだね。僕達も最初はよかったものの後から潰されちゃったしね。おめでとう、レン。」
「ありがと、海斗、拓也。寮戦って奇襲があるんだね、びっくりしちゃったよ。」
「レン、奇襲かけられたのか……?」
「うん、あれ?奇襲ってルール違反だったりするの?」
「いや、そんな事は無いが、奇襲をかけられたらあっちで生き残るのは結構きついんだよ。逆に奇襲だと初心者でも中級レベルぐらいの人なら倒せるらしいから、奇襲に引っかかると負けを認めたり、奇襲に成功するともう勝った気になっちゃう人が多いね。奇襲の影響はかなり強いと言ってもいいんだよ。」
「そういやさ、物理ダメージをカットする防具ってどうやって手に入れるの?」
「なんだ急に?ってそんな防具あるわきゃねーだろ。」
「拓也…。もしかしてそれは、魔防具のことじゃないかな。この学校にも物理ダメージを激減させるかわりに魔法ダメージを増幅させる魔防具を使ってる人がいたはずだよ。」
「便利なのか不便なのかよくわからない代物だなぁ。ん?そういやレンはなんでそんなもん知ってるんだ?」
「実は……」
僕は寮戦であったことを海斗と拓也に言った。
「おいおい……そいつは御堂光じゃねぇか。四年の先輩を倒しちゃったのかよ……。」
「その人有名人なの?」
「有名人だな。ずるいって意味でな。弱ってる獲物が大好きなやつだ。それに罠を多くて仕掛けてあってね近づくと罠にはまるんだ。」
ま、実力は無いんだけどなと笑う拓也。
「ねぇレン。双剣はあまり使わない方がいいと思うんだ。」
急に海斗が真面目な顔で言ってきた。僕は意味がわからなかった。
「え?なんで?」
「レンの双剣のレベルは高すぎるんだよ。周りに合わせないと浮いちゃうかもしれない。そこで一つ提案なんだけど、双剣は学園以外で練習して、学園では剣と銃を練習してみないか?剣は僕が銃は拓也が指導できるからね。」
「分かったよ、新しい武器を使い慣れるのは時間がかかりそうだけど練習してみるよ!」
「そうと決まれば、明日から特訓だな。5日後には学園が始まるからそれまでに何とかしないとな。」
僕は新しい武器を扱うのにワクワクしながら寝るのだった。