あれから四年…
あれから4年の月日が流れた。僕はあの日以来、身体を鍛えた。魔法を鍛えた。朝はランニング、昼は剣の稽古、夜は魔法の勉強。10歳にしてはなかなかハードなスケジュールだ。稽古は土日に父さんが、魔法は毎日母さんが付き添ってくれた。最初のうちはすぐに体を壊した。当たり前だ。いきなり、こんな物を六歳児が出来るわけがなかった。だが、続けた。全ての人を救うなんて事はできない。だけど、目の前の人を助けられ無いことが苦しかった。責めて、目の前の人は助けたかった。
「僕は遊撃協会にはいりたい。」
遊撃協会とは町の巡回、危険な魔物の始末、危険な人物の始末を行う。他には魔物や動物を狩ったり、薬草などの採取の依頼を行う協会である。ほかにもたくさんの協会が存在する。
その言葉を親が聞いたときはやっぱりといった感じだった。協会に入るためには学校に通い推薦を貰うか、協会が行う一年間の合宿を終えて合格するか、だ。前者は僕みたいな子供が通い、後者は違う協会に転職するときに使ったりする。学校には二つあり、協会に入るのにベストな基準を教える学校とその基準+応用学を学ぶ学校だ。勿論後者の方が協会には入りやすい。僕は後者の学校に受験しようと思っていた。
が、親はどうせならという事で、学術都市への入学を許可してくれた。学術都市とは全寮制の学校で、学校の敷地内に武器・防具を除く多くの品物を買える。座学では基準+応用だが、実技のための訓練コースなどが用意されており、兵器級魔法でも食らわなければ耐えられるように魔法が組み込まれている。さらに全ての本を管理している図書館なども存在する。武器・防具を売らないのは、勿論危険だからである。
僕は喜んだ。そこの入学試験は、自分の扱う武器を使い、障害物を越えていく実技試験or魔法についての筆記試験だ。僕は実技試験を受ける事にした。勿論魔法の勉強もするので、いつもよりハードにはなった。
……入学試験当日……
実技試験とは学校側が用意した亜空間を超える事だった。亜空間には魔物が存在しているが、亜空間で死ぬ事は無い。亜空間から出る方法は、事前に渡される白旗を掲げるか、負傷により動けなくなるか亜空間の最奥にあるアクセサリを取るかの三つだ。つまり死に掛けるぐらにの重態や重傷になる前に亜空間から強制的に出る。
時間が来て、自分の前の空間がゆがむ。そして吸い込まれる感覚と強い光。目を開けたときには、周りは黄土色の空間だった。地面は坂道になっていて、上の方に祠のようなものが見えた。坂道を走る。周りを確認しなかったために魔物たちに囲まれてしまった。
「うぅ、どうすれば……」
そして僕を目掛けて襲ってくる魔物。僕は近づいてくる敵を切っていった。双剣により、多かった魔物を捌ききることができた。数分剣を使っていたが疲労といったものはあまり無かった。いつもの稽古の方が楽なんじゃ?と思いつつもまた祠を目指していく。今度は辺りに注意し、見かけた敵をすぐに切り殺した。
祠にたどり着いた僕は目の前の腕輪に手を伸ばした。しかし取れなかった。祠が移動したのだ。そして上から蛇が降ってきた。
「大蛇!?」
目の前には2m弱の蛇が居た。そして蛇は僕目掛けて噛み付いてきた。僕はそれを左の剣で弾く。そして右の剣で大蛇を切りかかる。それを避け切れなかった蛇が倒れこむ。そして止めを刺す。すると蛇は光の粒になり移動した祠に注がれていった。正確には祠の腕輪に、だ。僕はそれを腕につける。すると来た時同様、空間がゆがみ強い光が生まれる。そして戻ってくると、学園長室らしき場所に出た。
「18分54秒」
「!?」
いきなり声が聞こえた。振り向くとそこには白髪、白ひげに眼鏡を掛けた老人がいた。
「わしはここの学園長だ、そう警戒せんでもいい。」
やっぱりここは学園長室なのか。
「君の亜空間攻略のタイムはなかなかだ。今年ではTOPだな。」
「僕がTOPなんですか!?」
「20分切るのは結構早い。攻略の平均時間は30分だ。さて、ここにサインしなさい。」
目の前にはいつの間にか紙が用意されていた。それは、入学許可証だった。僕はそこに自分の名前を書く。そしてその紙がいつのまにか学園長の手にあり、学園長のサインが入る。するとそれが焼けていき、一枚のカードが出来た。
「この許可証を使えば、この都市内でのサービスを受ける事が出来る。再発行はできないのでくれぐれもなくさないように。」
「わかりました。」
「それから、明日には寮へと移りすんでもらう。」
「わかりました。」
どちらも学校のパンフレットに書いてあった。今更驚く事ではない。
「では、帰ってよろしい。」
「ありがとうございました。」
そして僕は受験のために親が手配してくれた宿に戻る。宿に戻ると、僕は日課になっている魔法の勉強を始めた。おなかが空き始めたので食堂へ向かう。食堂へ向かうと同じぐらいの歳の人が多かった。僕は食券を買い列を並ぶ。ご飯を受け取る頃には、席がほとんど埋まっていた。どこかに席が空いてないかと周りを見るといくつか席は空いていた。移動しようと思っていると、目の前の二人組みが席を立ったのでそこに座る事にした。
「あの……相席いいですか?」
一人でご飯を食べていると声を掛けられる。顔を上げるとそこには僕と同じ歳の子が居た。この子も受験帰りだろうか?
「僕は構わないよ。」
「えっと、失礼します。」
そういって僕の前の席に腰を掛ける女の子。
「僕は石口蓮だよ。君は?」
「わ、私は藤田美月です。学術都市に受験にきました。」
「僕もだよ。受験で実技を選んだんだ。」
「私は筆記のほうを受けました。自信はあったんですが、やっぱり難しくて受かったのが夢見たい。」
「僕も合格したんだ。学園生活でまた会うかもね。」
「そのときはよろしくおねがいしますね。」
そのあと自己紹介などで話に花が咲いた。
次の日僕はあらかじめ用意してあった荷物を抱え、学園に向かった。男子寮の前には名前がずらーっと並んであった。僕は自分の名前を見つける。名前の隣には632号室と書いてあった。どうやら6階のようだ。僕は早速6階に向かう。632号室の前で呼び鈴を鳴らす。
「お、来た来た。」
「拓巳、落ち着け。」
なにやら会話が聞こえる。そして、
ガチャリ
扉が開く。
「ようこそ、僕達の部屋へ。」
「待ってたぜ。さぁ入った入った。」
「失礼します。」
部屋は広かった。
「僕の名前は清水海斗。よろしく。得物はこれさ。」
といって銃を取り出す。
「俺の名前は加藤拓巳だ。よろしくな。海斗とは幼馴染だ。得物はあれだ。」
拓也先輩が指を指す方向を見ると剣が立てかけてあった。
「僕は石口連です。拓巳先輩、海斗先輩よろしくお願いします。僕の武器はこれです。」
背中から一対の剣を取り出す。
「先輩とかいいって。これから一緒に暮らすんだからな。」
「拓巳の言う通りだね。僕もレンって呼ばせてもらうよ。」「それにしても、双剣か。珍しいな。」
「双剣の使い手は僕らのクラスにもいないからね。」
「父親が双剣を教えてくれたので……」
「双剣……石口……」そしてなにやら海斗が呟きだした。
「海斗?」
「レン、もしかしてお父さんの名前って石口翔吾であってる?」
「はい、確かに石口翔吾ですけど……。お父さんと知り合いですか?」
「いや、知り合いでは無いんだ。ただ君のお父さんは有名人ってことだよ。」