少女の死
ここは土の国。ここでは、鉱山が多数あり、土が肥えてて作物が育ちやすい資源に恵まれた国だ。この国の北西部には火の国がある。火の国は国の中で最も武力がある大陸だ。南東部は水の国がある。ここは魔法技術、科学技術が最も進んでいる。
ひんやりと冷えた空気に僕は目を覚ました。
「うぅ、寒い~。」
僕は布団に潜ろうとする。時計を見るとまだ5時30分だった。季節は冬、本来ならばまだ真っ暗なはずなのに外が明るく見えた。窓に近づき外を見る。
「わぁ~ゆきだ!」
外は雪が積もっていたのだ。寒くて二度寝をしようとしていた僕の目が一気に覚める。雪が新鮮に見えて、ついついはしゃぎたくなる。
朝食を取り終わった僕は、すぐに家から飛び出した。家から出たときには朝日がさしていて、キラキラと光る雪が綺麗だった。僕はしばらく雪を眺めていた。民家を少し進んだ所に、山があり僕は山を目指して歩き出した。
「誰か!誰か助けて!」
歩いていると悲鳴が上がった。僕は悲鳴があった場所に近寄る。大人たちはそれぞれ得物を持ちながら集まっていた。その先に見えたのは魔獣に襲われてる女の子だった。助けに行かなくてはいけないはずの大人達は魔獣の魔法をくらい、怯んでいた。僕は雪玉を作り右手に持ち、左手で固めてない雪を掴んだ。思いっ切り雪玉を飛ばすが、魔獣の近くの木に当たった。だがそれだけで魔獣が僕に気を向けた。
魔獣が雄叫びをあげると魔法陣が展開され氷の礫が飛んできた。六歳の僕に避ける術はなかった。なかったはずだ。だが体が操られるかのようにそれを避けたのだ。びっくりしている僕だったが、魔獣がいることを思い出し一気に間合いを縮めた。魔獣の目に固めていなかった雪を目に向かって投げた。魔獣はしばらく動けずにいた。
「君!早くこっちに来て!」
奥で怯えていた彼女に叫ぶ。だが動かない。足が震えていてうまく立てないようだ。僕は彼女の所に向かうが魔獣がそれを許さなかった。魔獣は魔法を使った。僕はそれを避けきれず吹っ飛ばされた。着地した所が雪だったおかげで体へのダメージは抑えられた。立ち上がった僕は近くの雪をつかみがむしゃらに投げつけた。魔獣は此方を見向きもせずに彼女に止めを指そうとしてる。
「ちくしょう!」
僕は木の枝を折りそれで魔獣を叩いた。魔獣は悲鳴をあげた。ダメージは通ったようだ。そしてもう一度枝を振り上げ下ろす。魔獣は明らかな怒りを見せた。そして一層大きな雄叫びをした。魔獣を中心に四方八方へと氷がばらまかれる。僕はその攻撃を受けて倒れ込む。そして魔獣が僕へと近寄ってきた。
「そ…んな、死に…くない。」
僕は目を瞑る。その代わりにドサッという音。目を開けるて魔獣が血を流して倒れていた。そして剣を持った大人がいた。
「君、大丈夫かい?いま手当てを」
「そ、の前、にあの子、を」
かすれた声で彼女の方に指を指した。その男はいま気づいたのか慌てて彼女のとこに向かった。これで大丈夫だ。と安心したら急に体が重く凄まじい眠気が襲ってきた。
僕が目覚めた所は自分の部屋だった。あんなに痛かった体はすっかり痛みをひいていて、まるであれが夢のように思えた。僕は飛び起きると彼女の安否を確認しにいった。
「レン!?もう動いて大丈夫なの…?」
お母さんが近付いてきて僕を抱きしめた。。ちなみにレンとは僕の事だ。本名は石口蓮。
「う、うん。もう大丈夫だよ。」
「良かった。」
泣き声混じりの声だった。
「ねぇ、お母さん。あの子は大丈夫なのかな?」
「あの子……?」
「魔獣に襲われてた女の子だよ。」
「ッ!?あの子は…天国に行っちゃったのよ。」
言いづらそうに話す母親。そしてその意味を幼いながら考える僕。そして気付いた。彼女は死んでしまったのだ、と。その日僕はわんわんと泣いた。自分の知りもしない相手に責任すら感じた。苦しかった。悔しかった。僕は飛び出した。彼女がいた場所へ。
「はぁ…はぁ…。」
その場所には何もなかった。僕が気絶した場所には魔獣を叩いた木の枝が落ちている。僕は行く場所など無いがとにかく走った。彼女の生きている証拠を探し駆け回った。そして、葬儀がある場所を見つけてしまった。僕は恐る恐る中に入って行く。会話が聞こえてきた。
「あの勇敢な少年がもう少し早く来てくれてれば。」「何、子供に頼ってるんだ。問題なのは周りで見てた大人だろ!」
「遊撃協会の連中がのろまだったからだ。」
「お前ら静かにしろ!」
(人のせいにしやがって……)
そしてしばらく黙祷が続いた。やがて、黙祷が終わり皆帰り支度をしている。そして……
「あの少年が魔獣の怒りを煽ったのがいけなかったんだ。そのせいで魔力暴走を起こしてあの子は巻き込まれたんだ!たいした力も無い癖にしゃしゃり出やがって。」
(!?)
僕は弱かった……。今回の件は僕の弱さが招いたことだったのか……。助けようと思ってやったことが結果として彼女を死なせてしまった……。その日、僕は強くなろうと誓うのだった。