prologue
チート要素が出てくるのはまだまだ先です。といっても、努力による力の差は出てきます。
prologue
あれは小学一年生の頃だった。季節は夏だ。入学したての不安などその頃にはとっくに無くなっていた。俺は毎日席が近かった奴と蝶やトカゲなどを取りに行っていた。
その日は午前中は雨が降っていたが学校が終わる頃になると、すっかり止んでいた。だから、俺らはいつも通り家に帰って虫取り網を持ち近くの林で集合する。雨が降った後なので、地面がべちょべちょでよく転けた。しかし、三回目に転んだ場所は運悪く目の前に木が生えていた。俺はそのまま木に衝突した。そして、俺は突き出てた枝に目を潰されていた。あまりの痛さに俺はそこで意識を失った。
次に目が覚めたのは薬品の匂いが漂う病室だった。
「残念ですが、あそこまで深い傷だと私達では無理です。あの子の目は元には戻らないでしょう。生きているのが奇跡的ですからね。」
!?
「そ、んな……。お願いします!何とかしてください。」
淡々と話す医者と泣き叫ぶ母親。俺はそれを聞きながらショックを受けた。
結局俺が病院生活から解放されたのは、1年後だった。勿論目が治った訳じゃない。外部の損傷が治ったからだ。そして、迎えにきてくれた車に乗り込む。車が走り出した時に違和感があった。目が見える訳じゃない。だがいまどの中りを走っているのかが分かったのだ。通行人などもわかった。当日の俺は不思議でたまらなかった。家に着くとこの違和感に体を任せて歩いていく。歩ける。壁などに当たらずに歩いた。俺は、階段を上っていく。息をのむ。目が見えない筈なのにこんなにスムーズに歩けるものか……?
「拓也……?」
驚愕の声を上げる。俺の母さんだ。考えてみたら、目が見えないのに道を歩く事なんて出来るわけが無い。
時間が経つにつれこの感覚はどんどん洗練されていく。俺が高校に入る時になると、黒板にかかれた文字がわかったりした。高校二年の体育の授業での剣道で気づいた。相手の行動が読めるようになっていた。相手の考えが分かるようになった。そして、自分に対する攻撃などはどんなものでも読み取れるようになった。目が見えなくなった事は今では悲しくも無い。逆に喜んでいるぐらいだ。目が見えなくても目が見える人以上の行動が出来る俺はたちまち有名人になり、テレビなどでも紹介されたりした。大学に入ると俺にも彼女が出来た。俺の人生は物凄く充実してた。
そして、嫉妬や妬みといった感情を浴びせられた。そして、いじめの対象になった。相手の行動が読める俺はそのいじめをのらりくらりと避けていった。そして、次の対象となったのは俺の彼女だった。気付くと俺と彼女は孤立していってしまった。俺は彼女を振ることにした。俺が脅して無理やり付き合わせた、と言うことにしてだ。そうすれば彼女は周りにまたとけ込めるだろう。同情してくれる人もいるはずだ。彼女にそれを話すと彼女は反対した。嬉しかった。そして、俺は最終手段に出た。大学の昼休み、俺は廊下で彼女に怒鳴って暴言を吐いた。それを聞きつけてわらわらと集まってくる学生。そして、最後に一言。
「お前なんて別に好きじゃなかった。遊びで付き合っただけだ。」
そして俺は去った。ここまで言えば、例え彼女が別れる口実のためだと気付いていたとしても、周りからは俺は最低の野郎となるだろう。そして彼女は周りに引き止められる。本当に好きだった。相手が俺を本気で好きなのは分かっていた。だから心が痛かった。
彼女と別れて二週間後、俺は彼女から屋上に呼び出された。自殺絡みだったらやだなと思いながら、屋上の扉を開ける。屋上には数人の気配。なんだ?と思った頃には扉は閉められた。そして囲まれる。
「どういうこと……だ?」
前にいる元彼女に話しかける。
「……」
だが元彼女から言葉は帰って来なかった。変わりにいきなり殴りかかられる。避けたとこに後ろにいた奴から蹴りが入る。これも避ける。そして違うやつからまた殴りかかられて避けたとこに石が飛んできた。避ける事に成功はしたものの俺に明らかな隙が出来た。そしてその後は殴られ蹴られを繰り返された。俺は痛みに悶絶していた。そして俺は屋上に置き去りにされた。
体中が悲鳴をあげているが、立ち上がる。季節は秋の終わり。こんなとこにいたら寒くて凍え死にしそうだ。扉を押してみる。開かない。屋上は普段鍵は掛けられない。つまり棒か何かを使い、扉を外側からは開かないように出来ているようだ。その事実に体に力が入らなくなった。そして俺は倒れた。これが俺、石橋和哉の最期だった。