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作戦会議

作者: Takuki

ある夏の夕暮れ時、ある場所に建つ、ある家の中で、何やら話し合っている一団がいた。

彼らはどうやら家族のようだった。

「大丈夫か?みんな」

父と思わしきものが家族の安否を確認する。

「俺と妹は大丈夫だ・・・。だけど・・・」

長男がそれに答える。

「お父さん!弟が!」

妹がそう叫ぶ。

「ああ、弟がやられちまった・・・」

長男も悔しそうに言う。

その弟は妹の側で苦しそうに悶えていた。

「そうか・・・」

「お父さん。弟、苦しそうだよ。何とかできないの?」

妹が父に訴える。しかし、彼はゆっくりと首を横にふる。

「母さんを見ただろう?ああなったら、私たちにはどうにも出来ない」

その言葉に妹は絶望の表情を見せる。

「そんな・・・。弟まで見殺しにするの?」

妹の問いに父は口を閉じる。

「くそっ!婆さんが帰ってこなくなった時に気づくべきだったんだ!そうすればこんな事には・・・!」

沈黙に耐えきれず長男が怒鳴る。

「静かにしなさい。たとえ気づいていても、遅かれ早かれ見つけられる。それが"奴ら"というものだ」

父が長男を諌めようと口を開く。

「なんだよ。じゃあみすみす殺されろって言うのか!」

「そんな事は言ってないだろう!」

今にも喧嘩をしそうな彼らの間に妹が入る。

「やめて!そんな事してたら見つかってしまうわ。喧嘩よりもここから逃げるのが先でしょう?」

妹に止められ、騒動にはならなかったものの、重苦しい沈黙が流れる。

しかし、父がある提案とともにその沈黙を打ち破った。

「よし、私が囮になる。そのうちにお前たちは逃げろ」

それは考えぬいた末の結論だった。

「なっ!そんなのだめに決まってるだろ!」

「そうだよ!お父さんまで死んじゃったら私たち、どうすれば・・・」

案の定、子供達からは猛反対を受けた。しかし、彼はやると言ったからにはやる、と既に決めていた。

「ここから出たら、私の親戚を頼りなさい。大丈夫、ここからさほど遠くない、お前たちだけで行けるはずだ」

「そんな・・・」

妹は耐えきれず泣き出してしまった。長男は俯いたまま何も言えないでいる。

そんな時だった。

「僕が、行くよ・・・」

そう言ったのは、先ほどまで倒れていた弟だった。

「弟!生きていたのか!」

「良かった!」

4人は、ひしと抱きしめあった。

「喜んでるところ、申し訳ないけど、正直、僕は、そう長くない」

抱きしめ終わったあと、弟は絶え絶えに話し始めた

「だから、父さんじゃ無く、僕が囮に、なるよ」

「ダメだ!」

弟の提案に父が止める。

「頼むよ、父さん。この体じゃ、僕はもう"食料"になる事も出来ない。最後ぐらい、花を持たせてよ」

「・・・どこに子供を囮に使う親がいる!」

そう叫ぶ父の顔は今にも泣きそうであった。

「頼む・・・!父さん・・・!」

父は折れるほかなかった。弟は今までわがままを言う事がなかった。いつも食事は最後で父や母が勧めて、ようやく食べているほどだった。その弟がここまではっきりと自分を通そうとしていたのだ。

「・・・分かった」

父は絞り出すようにそう答えた。

「・・・ありがとう」

弟は静かに返す。

「出来るなら代わってやりたかった・・・!」

泣く父の言葉からは自責の念が痛いほど伝わって来た。

「すぎた事は、もうどうしようも、ないよ」

いつの間にか長男と妹も泣いていた。

「作戦は、いたって、シンプルだ。僕が、囮になって、"奴ら"に飛びかかるから、みんなはそのうちに逃げるんだ。大丈夫、なんとかなるさ」

弟は泣いている家族を元気付けるようにそう言った。もちろん、作戦がうまくいくか心配で泣いてる訳ではない事は知っていたが、彼はみんなにはこれからも笑って生きて欲しかった。

「おとゔどぉ、おれ、ぜっだい、おまえの分も生ぎるがらなあ」

「わたしもぉ」

泣きじゃくる兄妹と再び抱き合う。

「・・・じゃあ、1、2の3で行くからね」

作戦実行の時、張りつめた空気が部屋を覆う。

「1、2の・・・3!」

弟が飛び出し"奴ら"に飛びかかる。残りは玄関に向かって走り出す。

悲鳴が聞こえた。

案の定、彼らは武器を持っていたのだ。

武器を撃ち込まれ、弟はフラフラと落ちていった。

落ちていく最中、みんなが玄関から逃げていくのが見えた。

ーーああ、これで良かったんだ。

言い知れぬ満足感に包まれながら、暗い闇の中へ落ちていった。




「ねえ、さっきのゴキブリどうしたー?」

「なんか、玄関から外に逃げてったよ」

「え?マジ?らっきー♪」

「お兄ちゃんこそ、ちゃんと仕留めたの?」

「ふん!舐めるなよ!ちゃんと仕留めて、ティッシュで丸めてポイッだ!」

「そっかー、ならしばらくは一安心だね」

「そうだな」

「お兄ちゃんにアレが向かってきた時はびっくりしたー」

「俺はお前の悲鳴にびっくりだったよ」

「失礼なっ!」


今日も家には笑い声が溢れていた。


どうもTakukiと言うモノです。

連載の方のネタがきれt...じゃなくて、連載とは別で短い物語を書いてみました。

定番のネタのような気もしますが、どうだったでしょうか。こう言うしょーもないネタは大好きなので、気が向いたらまた作っていきます。

それでは、読んでくださりありがとうございました。

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