表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白蛇様?  作者: 黄緑
一章
7/18

7.里親募集中

「その亀はどこに?」

「忘れた」

「えぇー、しっかりして下さいよ。メレさん以外に頼れる人いないんですから」

「そんなこと言われてもな。第一、場所が分かったとしてどうやって会いに行くつもりだ?」


そうだった。今現在、籠の中の蛇状態だった。どうやってここを出よう。掃除中とか、機会をみて脱走しようか? そしたら、責任は茅さんになるだろうな、だめだ。絶対だめだ。しかし、こんな話を聞いてしまった以上ここにいて、茅さんに迷惑をかけるわけにはいかない。


なら、メレさんに協力してもらって、魔法に挑戦してみるか? いや、これも極力避けるべきだろう。変に神力とやらを発動させ暴走させてしまったら、取り返しのつかない事になる気がする。これも却下だ。却下。買ってもらうか? だが、豪邸買える値段だって聞いたばかりだし、誰が買うよそんなばか高い蛇。


堂々巡りの思考に唸っていると、

「新しく入荷した子?」

そう話し掛けられ、声のした方へ視線を向けた。


少女がいた。高校生だろうか、意志の強そうな瞳に、活発そうに毛先の跳ねたショートの髪型、チェック柄の制服姿が眩しい。


「わぁ、額にルーンがある」

大きなお世話だ! そのせいで今絶望してんだよ!


一旦はプイっとそっぽを向いた俺だったが、すぐに思い直した。


これはチャンスではないか? もし、買ってもらえばこの状況を打破できる。

万が一失敗しても、このペットショップには悪いがこの少女がここに近づかなくなるだけ。なら話し掛けてみる価値はある。


「買ってくれ」

少女が目を見開く。あ、神力使えたのかな?


「お願いします。買ってください」

まぁいいや、非常事態だし。

真剣な面持ちで話し掛けるが、少女は目を見開いたままこちらを凝視しているだけで反応がない。


「疲れてんのかな」

眉間を揉む仕草をする少女。


丹羽と同じこと言ってる。

「あの……俺の声聞こえてる?」

今だに、眉間を揉んでいる少女に痺れをきらし、今度はくねらせる動作も加えてアピールする。


「なんか反応してくれ、緊急事態なんだ。頼む!」


少女が軽く俯く。早速、後悔した。もっと違ったアプローチの仕方もあったはず、いきなり蛇に話し掛けられて驚かない人間などいるわけない。なんであんな対応しかできなかったのだろう。もしかして、気味悪いと思われたんじゃ……。丹羽のようにこの少女も逃げ去って行くかも。


しかし、少女は瞬時に顔を上げると目を輝かせて興奮気味に視線を合せてきた。


「すごーい、やっぱりこの蛇しゃべってる。インコみたい」

「いや、蛇に話し掛けられて逃げ出さないお前の方がすごいよ」

どうやら、この少女はずれた神経の持ち主のようだ。助かった。

「もしかして、会話とかできる?」

「そりゃぁ、できるとも」

得意げに尻尾をユラユラさせてそう返した。


「お願いだ、俺を買ってくれ」

「そうね、アニマルセラピー的な癒しを求めてここに来たけど、君みたいな不思議な蛇なら買ってあげてもいいわ。癒しは期待できないけど、退屈はしなさそう」

少女は軽く笑顔でそう返した。


「本当か? 俺、ばかみたいに高いらしいけどいいのか?」

「あら本当。蛇一匹80.000? 君、なんでこんなに高いの? しゃべる蛇だから?」

「さぁ、俺にもよくわからないんだ、別に特別な能力とか実感しないのにさ。……やっぱり無理か?」

「さすがにここまで高いと、私の一存じゃね。ちょっと待っててもらえる? 夕方にはまた来るから」

「金なら後で返す……努力はする」

「どうやって、お金稼ぐのよ? また、身売りする気?」

「それは後で考える」

「あら? なら私は君を買って終わり?」


「うっ……。こ、交換条件でいこう。何か困り事とかないか? 俺にできることならなんでも協力する」

「そうねぇ」

少女は何か思案しだした。悩み多き思春期、何か恋の悩みでもあるのだろう。


「そう言えば君、学校は?」

「さぼり」

「さぼりはいかんぞ」


まぁ俺も人のこと言えた学生生活送ってなかったが。そう、事故った日がそうだったな、あの時は本望だったし後悔してないけど。


「どうかしたの?」

「いや、なんでもない。それより購入の件、検討してもらえるだけでありがたい。頼む、どうか俺を買ってくれ」

「どうしてそんなに買ってほしいの? そこ、そんなに環境悪そうには見えないけど」

「環境は最高だ。けど、この環境を守るためにどうしても行きたい場所があるんだ」

平穏な蛇ライフ、そしてなにより茅さんの笑顔を守るためにな。


「はは、蛇にお願いされるのって変な気分。わかったわ、じゃあまた後でね」

そう言い残し、少女は出口の方へ向かってく。


「あ、待ってくれ、君の名前は?」

「柚」

バイバイと手を振りながら柚は出て行った。

それを見送りながら、不思議と懐かしい気分になった。誰かに似ている気がする。

「買ってもらえるといいな」

「はい。メレさんはこれからどうします?」

「俺は今まで通り、このペットショップでのんびり過ごすさ。あまり、外の世界に興味があるわけでもないし、結構気に入ってんだこの生活。仕事とかに迫られないのが何よりいい」

「そうですか。一緒に亀に会いに行ってほしかったんですが、ダメですか?」

「んー確かにお前のこれからには興味あるが、まぁあの少女がOKしてくれたらな」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ