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白蛇様?  作者: 黄緑
一章
6/18

6.地球という名の異世界でした。

メレさんの話によると、どうやら本当にここは俺の元いた世界とは違うようだ。


まず、魔法が存在するという。個々の潜在魔力値によって、得手不得手はあるようだが、普通に学校の授業に魔法学があり、どんなに魔力の低い子どもでも、浮いたり、蝋燭に火を灯したりはできるようになるらしい。それと、意外なのが元の世界同様、この世界でも科学が発展していることだ。文明的には聞いた限り、元の世界と大差はないようだ。


元いた世界に魔法がオプションで付いたきたものかと、簡単にイメージしてみる。


実際、魔法は大量の魔力を消費するため、体力を消費し効率が悪い。余程の才能がない限り極めようと思う者はいないらしい。

あるにはあるが、メインじゃないようだ。ちょっと残念。

メレさんはこの世界に対する知識や理解力はあるのに、自分のことになると全く思い出せないという。本人はその内思い出せるさと、かなり楽観的に考えており、逆に俺の方が心配したほどだ。


ちなみに、自分が元人間かどうかは自信がもてないとのこと。それだけ知識があれば前世は人間だと思うのだが、カメレオンとしての生活が彼を変えたのかな。カメレオンのご飯って虫だもんね。

記憶持ち越しって案外残酷かも。


蛇でよかったと、こっそり心の中で呟く。

「お前今、優越感に浸ってなかったか?」

「なっ、なんのことでしょう? 被害妄想はやめてください。ん?」

あきらかに、客ではない男が荷物を抱えて近づいてくる。


見たことあるような。あれは……後輩の丹羽?

そう思った時には、思わず声に出していた。

   ・

   ・

   ・

「騒がしい奴め」

自分の現状忘れて、いきなり話し掛け驚かせた俺も悪いけど、腰抜かすとか傷つくじゃないか。


声にならない叫び声を上げつつ逃げ去っていく宅配業者を見送る。


あれ? そういや、ここって異世界じゃなかったっけ?

なら今の丹羽は誰だ?

声から容姿、臆病なとこまで同一人物にしか見えなかったのだけど。


「なぁ、メレさん。今、そこで荷物ぶちまけた奴、俺の元いた世界にもいたんだけど」

「ん? 基本的に同一人物と考えていいんじゃないか。思うにこの世界とお前のいた世界は非常に似ている。パラレルワールドと呼ばれるものなら、似た人物の一人や二人いて当然だろう」


「それになんか、俺の声もろに聞こえてたみたいだし」

「神力使ったんじゃないのか?」

「そうそう、さっき聞くの忘れてました。神力ってなんですか? あと、ルーンてのもよくわからないです」

「あぁ、そうだったな」

「お前は気づいてないようだが、額に文様が浮き出ている。それがルーンと呼ばれるものだ」

ガラスに映った姿を初めて見たときはいろいろと動揺してた上に、鏡のようにはっきり確認できたわけではないので気付かなかった。


再度、ガラスに姿を映し確認してみる。確かに、額には小豆大の模様が薄紫色に輝いていた。

この模様、一見ただの三重円にしか見えないがよく見るとその円はまるで古代文字の様な文字で構成されており、相当複雑そうだ。


当然、解読不可能だった。


あと、初めて気付いたが、瞳も額の模様と同じ薄紫色だった。

奇麗な色と言えなくもないが、結膜がないって改めて認識すると違和感ありまくりだな。

そんな場違いな感想を抱いていると、

「通常、ルーンと呼ばれている模様は高位の魔術師が魔法を使う時空間に現れるものだ。

使い魔や魔道具にも刻み込まれる場合もあるが、魔法に携わらない限りルーンが現れる事はない。

お前はその理に反してるため、突然変異種などと言われ、この値段がついたのだろう」

メレさんの魔法学講義が始まった。


「先生、質問があります」

「なんだ?」

「俺、魔法使えますか?」

「いきなりだな」

いや、当然の疑問でしょう。魔法の存在する異世界に転生して、遠回しでも魔力あるなんて言われたら。蛇だけど……


「そう、期待に輝く瞳で見つめるな、おそらく使えるだろう。それも、高度な魔法がな。だがやめておくことだ。今のお前じゃ暴走しかねん」

期待していただけに、ショックはでかい。暴走の意味はわからないが、きっと良くない事に決まってる。意識せずとも尻尾に込めた力が抜けていく。


「話を進めるぞ。潜在魔力には質があり、その中で最も良質なものを神力と言い表している。高度なルーンと良質な魔力があって初めて神力が発揮される。

ルーンが複雑であればあるほど、輝きが増せば増すほど強力な神力を使用できると言われているが、俺の意見を言わせてもらえばお前に刻まれてるルーンはかなり高位のものだと思う。

それで、お前を神力施行者と思ったわけだが……しかも、紫色のルーンなんて見たの初めてだぞ。一応確認しとくが、本当に心当たりはないのか?」

「あるわけないじゃないですか」


なんせ、今朝目覚めたばかりなのだ。

現状を理解しようにも、今の話ですでに俺の脳内許容範囲はパンク寸前だ。


「それだけ複雑なルーンが刻まれてんだ、何か特別な能力でもあるんじゃないか? 先程、知り合いだという男が言葉を理解できたのも無意識にそれをお前が望み、力を使ったためだろう」

「そんなこと言われても、まったく実感ないですし……。そう言えば、周囲を狂わすとかなんか不吉なこと言ってませんでした?」

「当たり前だろう、神力は魔法とはまた違った意味で周囲へ干渉してしまうんだからな。使い方を誤ればとんでもない事態を引き起こす。 

今のところお前から、不穏な念はおろか、魔力も感じられないし、本物という保証もないが、無意識だろうとなんだろうとその力はきっちりコントロールせないかん。そうでなくとも、魔法は危険なものなんだ。基本を学んでないお前が、簡単に使用しょうとしていいものではない。

しかし、お前と話すまでこんなこと全然意識しなかったのだが……なんで俺はこんなことを知っている?」


そんなこと聞かれても困る。


「もしかしなくても、生前は魔法関係の仕事かなんかに就いてたんじゃないですか?

それにしても、その話が事実だとして俺コントロールとかできませんよ。茅さん達はこのこと知ってるんでしょうか?」

「いや、一般的には知られてないはずだ、こんなマイナー知識。言っただろうこの世界では魔法はメインじゃないんだ、希少だと認識される程度だろう」


「どうすれば、コントロールできるんですか? 平穏無事に蛇ライフ満喫したいんで、このルーンていうのはっきりいって迷惑なんですけど」

「神力が使えることはなにも悪いことだけではないんだぞ? 魔法とは比べ物にならないほど、物理的にも影響力を持つと言われているんだからな。文字通り、神にも匹敵する力が使える。また、神力はその力を持つ者の感情を周囲に影響させると言われているが、使い方を誤らなければ、望めば大抵のことはできるだろうからな」


「でも、それって俺のルーンが本物できちんとコントロールできればの話ですよね?」

「ああ。確証は持てんが。だが、お前の様な例はそうそういないし、俺には神力に対する知識はあっても、お前同様の立場ではないのでなんとも言えん」

「どうも、~と言われている、のフレーズが多かった様な気がするのですが」

「伝承だからな。俺も実際に見たことはない」


これじゃあ、俺、いつ神力ともしれない力が暴走するかわからん不安定な白蛇だ。まるで疫病神じゃないか。このままじゃ平穏な蛇ライフ、ましてや安心して茅さんの笑顔を受け止めるなんてできない。

真剣に悩む雰囲気が伝わったのだろう、メレさんも何やら考えているようだ。


「確かお前同様、体の一部にルーンが刻まれている亀が祀られている神社があったと思う。そこでその亀に話を聞くことができればコントロールできるコツかなんかわかるかもしれないが……」


その言葉に、希望の光が見えてきた。



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