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白蛇様?  作者: 黄緑
一章
5/18

5.声の正体  丹羽 part1

「ちわー、芋蔓宅配の丹羽です。ご注文いただいた、本日の荷物お届けにきました。いつものとこに置いとますんで、サインいただけますか?」

「はーい、今手離せないんで、先に運んどいてください。すぐに行きますね」

返答を確認した後、早速ペットショップの裏口から店内に移動する。


今日の荷物は小包が多い。四段重ねにし両手で抱え込まないと持てないな、往復してもいいけど余裕で持てる重さだし一度に運ぼう。


「いつ聞いても癒されるなあの声、美人だし」

茅野さんだったかな、あの店員のことだ本当にすぐ来るだろう。


とりあえず運ぶか。

荷物両手に納品場所に近づいたその時だった、

「丹羽?」

すぐ側の爬虫類コーナーから聞き覚えのある声が聞こえた。

「今、誰かに呼ばれた気が……」

立ち止まり、周囲を確認してみる。


薄々気づいてはいたが、当然のごとく周囲には誰もいなかった。

さっきの声はすぐ側で聞こえた。


他の店員や客は離れた位置にある正面入り口近くにいるため、大声を出さない限りここまで届かないだろう。インコやオウムなど鳥類コーナーはさらに奥に存在するため、鳥類のいたずらでもない。

観葉植物の陰に子どもが隠れていた、というオチを期待したのだがこれもすぐに否定されてしまった。

寒気と湧き上がる恐怖心を必死で否定してみる。


自分がオカルト系・絶叫系にめっきり弱い質であるのは周知の事実だ。


「疲れてんのかな……」

そう言いながらも、おそるおそる顔を声がした方に向けてみる。

そこには、何種類もの爬虫類や昆虫類がケージごとに並んでおり特に変わった様子は見られない。


声はもう聞こえない。


「気のせいか」

無理やり安心感を得ようと、大きく息を吐いたまさにその時、

「やっぱり、丹羽じゃねぇか! 久しぶりだな」

「うわぁ」

恐怖八割、驚き二割で思わず手に持っていた荷物を放り投げてしまった。

自分が極度の恐がりなのは、自覚済みだけど文字通り腰を抜かしたのはさすがに初めてだ。


「あーあ、相変わらずドジな奴だな。茅さんの仕事増やすんじゃねーぞ。馬鹿」

声は真横のケージから発せられたようだ。その時は、声の主が誰に似ているのか思い出す余裕など全くなかった。


一刻も早く立ち去りたい。

本能からくる焦りが強いのに、目線は声のした方から反らせずにいる。


一匹の白蛇が尻尾でケージの内面をぺシぺシと叩きまくっているのが目に入った。

その気がないのに、目が合ってしまう。

「おい、聞いてんのか、コラ!」

「ひぃぃぃっ」

未知への遭遇から足元がふらつき、腰を引き摺る様にしてその場を後退する。

「あ゛あ゛ーっ……」

情けないと自分の姿を自覚するより先に、恐怖心が勝った。



後に僕は、この一連の出来事を深く思い直すことになる。この日の出来事は、僕の運命そのものを変えたのだから。






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