第3話 な、泣くぞいいのか!(1)
次の日、何食わぬ顔で出勤した私は、またもやラルのやつに話しかけられる。
うれし……いや、面倒だなと思いつつも相手をしてやることにした。
「マルスさん噂になってますよ」
「な、なんの噂だ」
まさか、暗殺者であることがばれたのか!? ……私は冷や汗をかくと、ごくりと唾を飲み込んだ。こんなアニメでよく見るような緊張場面がくるとは思っていなかった。
ラルは私の顔をじっと見ると、明らかに言おうかどうか迷っている顔をしている。早く言ってくれ、私の心が持たないではないか。
「その、実はマルスさんが整形だと噂が……」
「せ、整形!?」
「それに借金もあるって……周りにいくら貸しているのか聞かれたので、『貸してません』って答えておきました」
「しゃ、借金もか!?」
私は借金どころか、一応貯金をしている。暗殺者などいつ仕事ができなくなるか分からないからだ。
正体がばれて工場勤務ができなくなるかもしれないしな。
私はそこまで考えると、隣の男へと視線を移す。
うっ、それだけは避けたい。
「で……ここからは言いにくいのですが」
「な、なんだ、まだあるのか!?」
「その……夜出歩いて男を引っかけていると」
「えっ、なんだそれは!!」
大声を上げた私のほうをみんなが一斉に振り向いた。




