第20話 お前、許さん(5)
二人は着かず離れずといった感じで、一定の距離を保ち歩いていく。
そして時々立ち止まっては、工場内の設備を説明していった。
「ここが生産ラインです。基本的にモニターで状況をチェックするだけで、あとは全部機械が流れ作業でやってくれます」
「そう、凄いのね」
「で、この入り口から入るんですけど」
そう言って入り口の扉を開く。その先の小部屋でラルは帽子を被ると、もう一つをサキに手渡した。
「あっ、私、これ被ったことないんでいいですか?」
「そうですか。簡単ですよ」
ラルはそういうとサキの頭に帽子を被せる。その時、サキはバランスを崩し、ラルのほうへと倒れ込んだ。
狭い空間で密着する二人、アイツの豊満な胸がラルに当たる。
「アイツ、わざとやりやがったな!」
ちくしょう、私だってそんなことしたことないぞ! うらやま……いや、けしからん!
そんな親父みたいなことを心で叫びつつ、震える右手を抑え込んだ。
「あっ、ごめんなさい」
「大丈夫ですか? 気をつけてくださいね」
そんな彼女の態度にも、平然と対応するラル。彼は両手で彼女の腕を支え、上体を起こした。
お前は偉い、私以外の女には見向きもしない……いや、私にも向いてはいないが。
いや、少しは向いてはいるだろ。向いてる向いてる。
そう自分に言い聞かせる、私だった。




