第2話 ドレスは破壊力
さて、次の日。これが私の本当の顔である。
国の暗殺部隊α+γ。そこのエリート暗殺者が私の真の姿だ。
今日は隣国に機密情報を売り渡そうとしている役人を始末するように言われている。ホテルのレストラン、そこで諜報員と接触する予定らしい。その前にやつを殺すのが私の使命だ。
「あの男か」
私はホテルに向かうターゲットをビルの陰から確認する。ボスからもらった顔写真、それと同じ顔の男が二人もこの場にいるわけがない。
周囲に人もいない、チャンスだ。
私はナイフを持った右手を背中に回すと、堂々と彼の前へと歩いて行く。
「うお」
私を見た彼の反応は、男なら誰でもする所作だった。視線はこちらに釘づけになる。
胸元が大きく開き、大胆にも右太ももが露わになっているドレス。
そんな姿よりも相手は私の顔を注視している。しかたない、この抜群のスタイルよりも私の顔はそれほどまでに魅力的なのだ。
(なのにあのラルときたら、お世辞で「お綺麗ですね」と言うだけで……くぅ、なんなんだアイツは)
そんな怒りが一瞬湧くが、プロフェッショナルな私はすぐに冷静を取り戻す。そして男に近づくと大きく右手をあげて、ナイフで首を斬りつける。
動脈を寸分違わず切り裂いた。奴はじきに死ぬだろう。
「これ……だな」
その落とした鞄から回収対象となる書類を確認する。私は暗殺者でこういうのは仕事に入っていないのだが。そんなことを思いながらも完璧に仕事をこなしてみせる。
私は今日も完璧だ。




