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アリスへの手紙  作者: まめ童子
2章
23/30

14話

久々なので連投です

地上をじんわりと暖めていた太陽がその姿を隠し、空が紺碧(こんぺき)に染まり出す頃、ひとつ、またひとつと、星が(またた)きはじめた。


市街の中心部の夏祭りの会場に作られた「星おどり」の舞台は、客席に対して弓なりになった半月型をしている。その()に沿うように階段状に客席が設けられていた。


集まった数多くの観客たちは談笑しながら、この神事の始まりを待っていた。


舞台の上では、やや緑を()んだ青い光を柔らかく放つ衣装に身を包んだ年若い娘たちが数名、身を寄せ合うようにして時を数えている。


不意に、歓談する観客たちの声を掻き分けるように、()んだ琴の音が響いてくる。それを聴くや否や、人々はしんと静まり返った。


――「星おどり」が始まる。


すると、舞台の中央で丸く集まって屈んでいた舞姫たちが、薔薇の花弁が開いて舞い散るかのように、一人、また一人と立ち上がってはその姿を満天の星明かりの元に現した。


星の精霊のごとき少女たちは、三重の円になって並び立ち大きく腕を広げる。そして長い袖を琴の音に合わせて数回揺らした。


両手を一振りすると、片方の手からは青い星、もう片方の手からは黄色い星がこぼれ、それは彼女たちの指先に寄り添うように吊り下がる。


舞姫たちは片足を軸にし、もう片方の足の爪先を床に滑らせて一回転した。すると、両手の先から吊るされた星が弧を描き、星明かりを弾いて(きら)めく。


彼女たちが動く度に仄青(ほのあお)く裾が(なび)き、辺りにきらきらと光の粒が降り注いだ。


その幻想的な光景に観客たちはすっかり魅了され、舞姫たちが美しく舞う様子をただひたすら目で追っていた。


突然、琴の音が途切れる。その瞬間、舞姫たちも動きを止めた。衣擦(きぬず)れの音さえ響かない静寂(せいじゃく)が、広場を包んだ。


皆がその先を固唾(かたず)を飲んで見守っていると、舞台の最奥(さいおう)から今度は鈴の音が響いてくる。


断続的に鳴るその音に合わせて、舞姫たちはくるくると踊りながら、徐々に音のする最奥へと集まっていった。


そして舞台の入り口を隠すように並び立ったかと思うと、再び花弁を散らすかのようにふわりと舞って、音の主を(あらわ)にする。


そこには、他の舞姫とは異なり、片手に大きな鈴を(たずさ)え、黄色い光を帯びた衣装を身に(まと)った少女が立っていた。


彼女は鈴を鳴らしながら舞台の(きわ)まで歩み出て観客の前にやって来る。そして少女が腕を天に突き出した瞬間、鈴がふわりと宙に浮いた。


それはそのまま空高く上がっていき、やがて月と重なる位置までくると、涼やかな音を響かせて霧散(むさん)した。


再び琴が旋律(せんりつ)を奏でる。舞姫たちはそれに合わせて舞い踊り、次第に動きを(ゆる)め、始まりの姿を繰り返すように中央に集まった。


しかし始まりとは違い、彼女たちは観客の方を向いて立つと、両の(てのひら)を合わせた。


すると、指先を伝っていた青と黄色の星が寄り添うように重なる。


やがて琴の音が止み、少女たちの衣装からゆっくりと光が失われていく。


そして、この空間にはまるで星明かりしか存在しないかのように、静寂が辺りを満たしていった。


かくして「星おどり」はしめやかに終演となった。


神事の終わりに際し、人々は手を合わせて祈り、誰一人として声を出すことはないのであった。


閲覧ありがとうございますー!

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