約束
第7話「約束」
一際笑い声が響く病室
高い女の声
声変わりしてない男の声
「今日、こんなに早く来るなんてどうしたの?」
「あぁ、テスト週間なんだよ!だから部活は休み!」
(山田くん、ちゃんと勉強してるのかなぁ笑)
山田の顔ずっと見つめて、ニヤニヤ
(言っちゃおうかなぁ〜)
「ねぇ、お姉ちゃんの事どう思う?」
突拍子もない質問
山田は気かないフリをして、逃げようとしたが、耳がどんどん赤くなる
「ど、ど、ど、どうって!?」
あからさまに動揺した声
必死に声の震えを隠そうとするが、中々心臓の鼓動が止まらない
「聞かなくても、わかるけどね!」
ひかりは終始笑顔
「今のままでいい。あいつに喧嘩売ったり、売られたり、そうやってずっと馬鹿やってたいと思う」
ひかりの目を真っ直ぐ見つめて
一息吐き、その言葉に動揺は感じられなかった
「お姉ちゃん、山田くん以外友達いないでしょ?」
掛布を強く握りしめ、今までの高いテンションがなくなり、俯き加減で聞いた
「いないだろうな。まずあいつと俺が友達なのか微妙なとこだけど」
腕を組み、頭を抱えていた
確かに友達の定義は人それぞれだ
「お姉ちゃん、見せないようにしてるけど、私に学校の事とか、楽しかったこと、悲しかったこと、何も話してくれないんだよね。
私がこんなことになっちゃってから」
(本当は、私に気を遣ってほしくない、ちゃんと喜んで、悲しいことがあったら一緒に悩んだりしたい。強そうに見えて、本当は1人で悩んでるの知ってる。本当は知ってるんだ…。おトイレかお風呂で泣いてること)
「お前ら、大切なこと話さなそうだもんな
てか、話せないって感じだな」
「そうだね。お姉ちゃんも話さないし、私も何も言わない」
(話してくれないけど、顔色とかで苦しんでる事は痛いほどわかる)
ひかりは山田の学生服の袖の辺りを強く握った
「山田くん!もし私がいなくなっても、お姉ちゃんのそばに居てあげて!私の代わりに楽しい日常を与えてあげて…」
握られた指先から伝わってくる震え、その震えを抑えるかのよう、手のひらを添えた
「お前の代わりなんてねぇーよ!ピカも一緒だ!」
ひかりは俯いた顔をあげて、流れる前の涙を拭った
「うん!!」
約束するって言いたかった
言えなかったのは、ひかりの中で100%ではなかったから
その一言が彼女の精一杯だった
山田はひかりの頭がボサボサになるくらいに強く撫でた
「もー!せっかくお風呂入ったのにぐしゃぐしゃ!」
病室から消えた笑い声は戻ってきた