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第4話 出会い(2)

「----あなたが本日会話なされたアイリス王女、あの方はわたくしのお姉様となられるお方です。お姉様に近付くのは止めてくださいませんかしら?」


 同学年には到底見えない、スタイル抜群美女であるカモミーユ。

 彼女はそう威嚇するように言うと、彼女の(てのひら)の上に赤い炎の球体が生まれる。


 それは----魔法、である。


 カモミーユが魔法によって生み出した、火炎の球体、であった。




 王立エクラ女学院には、お嬢様、つまりは貴族の子女しか通っていない。

 その理由は家柄で判断されているとか、平民には入る資格すらないとか、そういうことではない。


 単に、貴族以外の平民にとっては、貴族は"危険"だから。


 王立エクラ女学院は4学年生で、15歳から19歳までの名門貴族のお嬢様が通う。

 その理由としては貴族のマナーにそれだけの時間がかかるからとかでもなんでもなく、ただ単に魔法を制御する術と精神を身につけさせるためだ。


 貴族とは、字の通り、"『貴』い血を持つ血『族』"という意味なのだ。


 では、その貴い血とは何なのかと言えば、答えは1つしかあるまい。


 そう、ヒノモトから来た勇者達。

 特殊能力(チート)と呼ばれる術を持ち合わせていた、我々とは価値観や能力も違う者達だ。


 貴族はそんな勇者達を家族として迎え入れ、夫あるいは妻として家の血に混ぜた。

 そうして生まれたのが、現在の貴族達。


 私も、そして目の前のカモミーユも、元を辿れば同じヒノモト産の勇者に辿り着くという訳だ。


 そして、勇者の力は、今こうして魔法という、無から有を生み出す術として発揮され。

 私達は、4学年の間に、この力と正しく向き合う方法を学んでいくのだ。




「そう、わたくしも、あなたも、そしてアイリス王女も。わたくし達貴族には、選ばれた者としての責任がある。

 ----だからこそ、付き合う相手は選ばなければならないのだわ」


 掌の上に生み出しておいた火炎の球体を消して、カモミーユはジッと私の目を見つめていた。


「あなたが今日話した相手は、この国の第三王女。それだけ貴く、気高い存在なのです! 一介の男爵家の令嬢が、気軽に話せる相手ではない、という事よ!」


 いや、気軽に話しかけてと言うか……というか、声をかけられたのは、こちらなんですけれども。


「私は、話しかけられただけで……」

「えぇ、聞いているわ。父親役を頼まれた、っていう、くっだらない話を」


 『くっだらない』の部分をやけに強調する、カモミーユ。

 ----ていうか、あの王女様、この人にも父親役を頼んだんだろうか?


「わたくし、個人的にではありますが、父親ってこの世で一番嫌いなので。居ても居なくても、同じくらいだと思っていますの」


 うわぁお、辛辣な評価……。


「わたくしの父----いえ、"アイツ"は、わたくしが生まれた時に、アドバーシティー公爵家を追い出されましたの。なんでも、お母様に隠れて浮気してたらしいんですわ。まぁ、所詮はあなたと同じ男爵家、タラァクム男爵家のクソ野郎。公爵家の血を繋ぐ価値など、"アイツ"にはなかったんですよ」

「浮気、ですか」


 にしても、すごくやばいタイミング。

 長女が生まれたタイミングで、浮気がバレてしまって、公爵家を追い出されるとは。


 なるほど、彼女が父親に対して、差別的な目をしているのは、そういう経験からですか。


 でもこれ、誤解されてますよね!

 よしっ、これだけは伝えておきませんと!


「いえ、別に私は受けるつもりは----」

「いいえ、言い訳は結構! あなたがすべきなのは、第三王女様との、自分との身分の差を考えよということですわ!」


 あぁ、話が通じている感じがしないよ!


「----だからこそあなたは、父親という、この世で最も意味のない役に選ばれた事は忘れ、身の丈に合った相手と交流しなさいな。くれぐれも不相応な、例えば王女様との交流など、今後は考えません事」


 言うだけ言って、話は終わりとばかりにカモミーユは去って行った。


 私はそんな去り行く彼女の後姿を見て、思った。

 彼女の赤い髪が、まるで炎のように揺れていて、綺麗だな、と。




(※)魔法

 貴族が用いる、無から有を生み出す異能の術。炎を生み出したり、身体の一部を変化させたり、あるいは身体を治癒したりなど多種多様

 ヒノモトから来た勇者達と交わった結果、このような異能の術を使うことが出来るようになったと伝わっており、主に13歳を越えたあたりから使えるようになるとされており、15歳を過ぎると扱うための術を学ぶために学校などの教育機関に入れられるのが通例となっている

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