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017 ペロペロとか言うな!

『賢者モードを極めた俺が転生したら大賢者でケモミミハーレムしていた件』


 累計発行部数一〇〇万部超えの人気ライトノベルだ。コミカライズも好評で今期アニメ化、ソシャゲもタイアップされ絶賛人気爆発中。

 右手が恋人なアラフォー主人公が、セルフ腹上死ことテクノブレイクによりケモミミ異世界へ転生。チート能力で大賢者となって無双しつつ、敵味方問わずハーレムモードに突入するという、肌色成分多めの深夜アニメである。

 ただし転生時に得た大賢者の能力は、清らかな肉体のみに宿るとかで、どんな際どい展開になろうとも“いたす”ことはできないという極限寸止め設定だ。ベッドシーンが一切ないかわりに全方位のフェチがふんだんに詰め込まれており、“刺さる”アニメとしてコアなファンも多い。


 なんでよりによってコレかなあ……。


 確かにヒロインは主人公を『ご主人様』呼びしてるし、全キャラメイド服回とかもあった。しっかりと視聴リストに入れている自分が言うのもなんだが、女性視点でどうなんだこのアニメは。軽く考え込んでいると、


「『賢者モード』はわたくしもケイタさんと毎週視聴していますわ!」


 首から上がポロっと落ちそうな気分になった。

 おーまーえーはー!?

 初対面の佐伯さんがいる前でノータイム暴露とか、ツヤさんもドSキャラでしたかねえぇ?

 もういきなりキモオタ認定されてもおかしくない。恐る恐る佐伯さんを見る。


「まあ、丹羽さんもご存知なんですね! よかった。引かれてしまったらどうしようかと」


「そこらへんは大丈夫だって言ったじゃないっすか。社長ならこの手のアニメは大好物と信じて疑わないっすよ。私は見てないっすけど」


「こらまてい」


 佐伯さんの反応は想定外だがありがたい。スミレちゃんの反応は想定内だが許し難い。ぬぐ……しかし否定すると、かえってそのあと自分の首が絞まる気がしてならない。ここは堪えて平静を装う。


「佐伯さんもアニメとか観るんですね」


 考えたら佐伯さんだってアキバに看板を出すメイドカフェの店長だ。ちょっとくらいアニメ好きでも不思議はない。


「はい。リアタイではありませんけれど。みんな可愛いですよね。ちなみに私、モッちゃん推しです!」


 この人ガチ勢だー!

 モッちゃんはキツネ耳の元遊女で、おいらん言葉を話すドジロリメイドという属性合体事故みたいなキャラ。サブヒロインの中でもかなりマイナーで出番も少なく、ネットではそれこそコアなファンしかいない。このキャラのファンはまず間違いなくガチ勢である。

 

「わたくしはチカちゃん推しですわ!」


 ツヤが話に乗った。ちょっとまて。


「お前、推しとかいたのか!?」


 チカはメインヒロインの一人でウサ耳のお嬢様。主人公にぞっこんベタ惚れ。しかも超がつくツンデレだ。うぶなくせに中途半端な耳年増で、間違った知識のぶっとんだアプローチを仕掛けてきては毎回のように自爆していく。ちなみに人気上位キャラである。


「同じ『お嬢様』としてここは推さねばと思うのですわ?」


 お嬢様の幅広すぎだろ……。チカとツヤはお嬢様以外に設定かぶるところが一切ないぞ。

 一人未視聴のスミレちゃんは、キャラ名からスマホ検索しているようだ。「へー」とか「おー」とか言っていたのだが、不意に俺の顔を見た。


「社長はどの子が推しなんすか?」


 ですよねー。この流れならそうきますよねー。

 『賢者モード』は「#フェチの百貨店」とかタグがつくような作品だ。キャラ名を出そうもんなら性癖暴露もいいところ。はぐらかす以外、選択肢はない。


「いやぁ、全キャラ可愛いし、俺の場合、推しとかってのは——」


「ケイタさんはヘラさま推しですわ!」


 俺、完全に沈黙。

 固まった。

 二秒はたっぷりと。


「なんで知ってんだよ!? 俺言った覚えないぞ!?」


「ケイタさん、ヘラさまのシーンでいつも心拍数あがっていますわ。ドキドキですわ?」


 バイタルデータがダダ漏れだー! 俺のプライバシーは無料配布か!?

 ええい、これか、このスマートウォッチが悪いのか!


「ヘラさまってどんなキャラなんすか?」


「黒髪毒舌メガネで、悪の幹部をしてるネコミミ白衣のお姉さまですわ!」


「おー! 社長はそういうのが好みなんすね!」


 本日開催、丹羽ケイタオーバーキル選手権の会場はこちらですか。


「丹羽さん、ヘラさま推しなんですね! 実は私ヘラさまコス担当なんですよー」


 ええ、本日開催の丹羽ケイタ葬儀会場はこちらです。

 確かに佐伯さんは黒髪だし、顔の雰囲気とかからも、多分いや、かなり似合う。

 しかも、ヘラさまは白衣の下がヘソ出しのキャミソールにホットパンツ、白ニーソとお色気高め。

 メイド服だとわかりにくいが、佐伯さんはスタイル良さそうだし、これはかなりどころか神の領域……いかん、本人を目の前につい想像してしまう。目が泳ぐ。チラリとツヤに睨まれた気もする。

 佐伯さんは俺を見て目を細めるとにっこり微笑み、


「『あらあらぁ。大賢者様のクセにぃ女の味もご存知ないんですかぁ?』」


「あら、先週のヘラさまですわね。『そんなことありませんわ! ご主人様は昨晩もわたくしのことをペロペロされてましたわ! べ、別にフォローとかじゃないんですわ! そう! 事実なんですわ!』」


 はい、本日開催の丹羽ケイタ埋葬会場、最後尾はこちらです。

 アバター配信してるというだけあって、佐伯さんのヘラさまは完成度が高く、ツヤのチカも無駄に上手い。ホントなにこのスペックの無駄遣い。というか、ツヤの「ご主人様」は不意打ちすぎる。あとペロペロとか言うな! アニメ見てないスミレちゃんが「うわぁ……」って顔して俺を見てるだろうが。


「なかなかやりますね。つやひめさん。実にチカちゃんのツボを押さえていました」


「アヤさんこそ、素晴らしいヘラさまでしたわ!」


 なあ、意気投合してないで、どっちでもいいからフォローしてくれ、頼むから。あー、なんか変な汗出てきた。


「あの……話を戻してもらってもいいですか?」


 なくなりかけの歯磨き粉を絞り出すような気分で、落ち着いた声を喉の奥からぎりぎりと押し出す。

 もうね、自分でリカバリーするしかないわ。頑張れ、俺。


「あ、そうでした。丹羽社長にご相談がありまして……」


 佐伯さんはペロリと舌を出した。こういう仕草をナチュラルにできるあたり、この人はガチで天然なのかもしれん。一呼吸。


「お聞きします」


「ありがとうございます。ご相談というのは、スミレちゃんを一週間ほどお借りしたい、ということなんです」


「は? スミレちゃん?」


 視線を向けると、スミレちゃんは軽く頬をかいた。


「私、昔ここでバイトしてたことがあるんすよ」


「スミレちゃんが? ここで?」


 反射的に聞き返す。


「なんすか、その反応」


 スミレちゃんは途端にムッとした。いかん、色々顔に出てたか。ここは素直に謝ろう。


「いや、すまん。なんかこう、想像ができなくて?」


 スミレちゃんは誰かに尽くすというより、我が道を行くタイプだと思う。そのイメージはご奉仕のプロたるメイドとは対極にあるといってもいい。


「あら、人気あったんですよ。スミレ姫、久々に私も見たいわ」


 佐伯さんがクスリと笑う。

 スミレ、姫……?


「えぇぇ……アレ、嫌いじゃないけど意外と疲れるんすよね……。えっとー」


 目を閉じて、深呼吸。

 ゆっくり目を開いたスミレちゃんは、明らかに雰囲気が違っていた。

 眼鏡の奥の栗色の瞳は自信なさげで潤んで見える。伏し目がちな上目遣いで、小さく口を開く。


「あの……おかえりなさいませ、ご主人様。お嬢様。えっと、お席に、ご案内します……」


 俺、再びの沈黙。

 誰だー!?


「守ってあげたくなる気弱で可憐な感じから、野に咲くスミレ姫なんて言われてたんですよ」


 佐伯さんはホクホク顔、ツヤなんて拍手喝采だ。スミレちゃんは顔を赤くした。


「はい! おしまいっす! ギャップ萌えになるからってこのキャラ仕込んだのアヤさんじゃないっすかー」


 ギャップってか、ここまでくると詐欺だろ。キャラ違いすぎるぞ。


「まあ、なるほどです。イベント期間、スミレちゃんを一週間メイドとして貸してほしいって話ですか?」


 とにかくキャラ多いからなあ、あのアニメ。スミレちゃんならどのキャラだろうか。


「違うっすよ。私このアニメ見てませんし」


 違うんかい。スミレ姫のくだりは本当に佐伯さんが見たかっただけなのか……。


「私が大学で研究してるシステムをお店で実験させてもらえるって話で」


「スミレちゃん、それじゃ順番が逆だわ。私がスミレちゃんにお願いしたのが先なんですよ」


 事の次第を佐伯さんは丁寧に説明してくれた。

 簡単にまとめると、スミレちゃんが大学で研究開発してるシステムを店で試験導入したいという内容だ。スミレちゃんとしても実証実験になるので願ったり叶ったり。メンテナンスとモニタリングを兼ねて受けたいということで、一週間のレンタル相談となったらしい。


「まあ来週の仕事そんなにハードじゃないし、スミレちゃんは大学優先ってことでバイトにきてもらってるだろ。いいよ、別に」


 アルバイトのスミレちゃんを縛るつもりもない。ふたつ返事で承諾すると、佐伯さんは手を打ち表情を明るくした。隣のスミレちゃんは「さすがっす! よっ! 二代目!」とバンバン俺の背中を叩く。なぜだか褒められている気がしない。


「あ、そうだ社長。もうひとつお願い、いいすか?」


「なんだよ?」


 ここまできたらひとつやふたつ聞いても変わるまいという気分になる。

 スミレちゃんは手を合わせ、人懐こい笑顔を見せた。


「この仕事に、つやひめちゃんをちょーっとお借りしたいんすよ。ダメっすか?」


 ダメっすかって……。この空気を壊してまで断れるほど、俺の肝は据わっていなかった。

メイドカフェ編です。

作中作品は設定書いてると書きたくなる衝動に駆られますね!

『賢者モード』は読み切り短編とかで書いてみても面白いかなあ?

年内にあと2話くらい……はきついかなぁ。がんばりますー!


12月ですね! 今年は暖かい日が続くので変な感じですね。服装悩みます……。

健康診断が今月だったのですが、維持してた体重増えてる……ぐぬぬ……。

ストレス太りかなぁ。とりあえず運動、しよう……。

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