表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/34

5 裏切り

 +++他者視点


「クレアどうしたのかしら。クロード様、何か失敗したの?」

「あ、いや、どうも好意を持って貰えなかったようだ」

「お前ほどの色男を振るかねぇ」

「俺はお前と違って色男なんかじゃない」

 ナタリーがピクリと眉を動かした。


「クレア嬢は世間知らずのご令嬢ではなさそうだ。いろいろ噂を耳にしているようだぞ。ヘンリー ナタリー嬢を泣かすなよ!」


「へ? 俺はそんな・・・誤解されるような事言うなよ!」

「誤解ですか?私が他の学園に通っているからって随分羽を広げていらっしゃるようですわね。ヘンリー オークレー伯爵令息様?」


「なんだよ、クロード自分が振られたからって八つ当たりだ!」

「話をすり替えるなよ。お前の浮気をクレア嬢は心配していたぞ」

「浮気なんてするはずないさ。なぁ ナタリー」


「ふん。あ~あ クレアとクロード様ならお似合いだと思ったのに」

「俺も残念だ。ナタリー嬢から聞いていた以上に素敵な人だった」


「美人だけど病弱なのが欠点なのよね~クレアは」



 *****



 帰宅すると部屋の物の位置が微妙に変わっていた。

(また義妹達ね)

 盗られて困る物は全て貸金庫に入れてあるが腹立たしい。

 こういう時に相談できる人がいない。


 頼りになる人、クロードの顔が浮かんだ。

 けど、彼には同情で夫婦になってもらっただけだ。

 ナタリーにも、もう相談できない。

 今日クロードと話をしてナタリーは私に嘘を重ねていたと分かってしまった。私に味方は誰もいなかったのね。



「もういいわ!夢から目覚めさせて。もう十分よ!」


  一瞬で元のベッドに戻ってきた。さっきまで自由に動かせた体が軋む。

 ドアが開いて白髪の増えたクロードが食事を運んできてくれた。

 不思議だ、さっきまで薔薇の庭園をクロードと歩いていたのに。


「クロード・・・ごめんなさい。貴方は騎士になりたかったのにね」

「昔の話だよ」

 そう言いながらそっと私の体を起こしてくれる。



「私、貴方はミモザ様と浮気していると思っていたわ」

「ミモザ?」

「ナタリーからそれとなく、何度も聞いた記憶があるの」

「くだらない噂だ」


「あなたの浮気相手はナタリーだったのね」


 クロードはハッと息をのんだ。

「・・・・・・クレア」

「いいのよ、少し罪悪感が消えたわ」


 私とナタリーはお互い結婚後もよく会って相談し合っていた。

 彼女は店のお得意様でもあったしクロードとも頻繁に会っていたわね。


「すまない、ヘンリーの浮気の相談を受けて同情してしまったんだ」

「あなたは優しいものね。私と結婚したのも同情からだったわ」

「君のことは本当に愛しているよ・・・ナタリーとは少しの間だけだった」


 嘘ね、きっと少しの間ではないわ。

 女の勘だけど、ナタリーとは結構続いていたはずよ。

 でも浮気の原因は私にもある。店に(かま)けてばかりいたからだ。

 それだけじゃない、夫婦間の修復を諦めてしまっていた。


「ナタリーは貴方がミモザ様と浮気していると、私にそう思わせていたわ。私はそれを信じたのよ」


「最低だな俺は。ナタリーは上得意の客で、無下には出来なかった」


「私が2回も流産したから(いた)わってあげてと言われたの?」

「・・・・・もう君の体に負担を掛けない方がいいと思った」


「あの頃から私に触れてはくれなくなったわ。淋しかった」

「君が愛していたのはバーンズの店だった。俺も淋しかった」


「ごめんなさい。本当にごめんなさい」

「謝るのは俺の方だ。すまなかった」


 食欲が無いからと食事を断りクロードには出て行ってもらった。

「それでも感謝の気持ちの方が強いわ。お店が潰れなかったのは間違いなくクロードのお陰よ」

 裏切られた悔しさで胸が痛む(この年で今更じゃないの)


 泣きそうな私の前に、再び男が現れた。

「さて、次に進みましょうか」



 私は16歳に戻って自室にいた。


「ご主人は自由になれそうですね。次は貴方の番ですよ」


「私なんか・・どうでもいいのよ。どうせ独りぼっちよ」

「うくっ・・」悔しい、嗚咽が止まらない。


「愛されたいのでしょう?」

「誠実で・・・私だけを・・・愛してくれる男に会わせてよ」

「現れますよ。 ──あなた次第ですが」

 そう言って死神は消えた。


「いるなら連れてきてよ」泣いても過去は変わらない。

 なら、この世界ではあの二人を信用しないわ。


 涙を拭って、まだ時間があるのなら次の準備をしておこうと思った。

 3か月先だけどお店に強盗団が入ったのよ。


 襲われたその日から店の景気は悪くなっていった。

 お金を銀行に預けておけば問題なかったがこの時代は潰れる銀行もあって、まだ銀行の信用が低く、金庫にお金を入れてあるお店が多かったのよ。


 あの事件は義母が間違いなく関係している。

 もう誰の思い通りにもさせないわ。絶対に阻止してやる。


読んで頂いて有難うございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ