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暗い闇の底。
何も見えなく聞こえない。
私/僕にあるのは孤独からなる不安と恐怖だけ。
怖い怖い怖い怖い。
一人にしないで。
いつも一番近くにいてくれたかけがえのない君を探し続ける。
一人になってからどれくらいたったのかなんて分からないけれど、私/僕は見つけた。
もう二度と君と離れない。
互いにそう誓い合いながら、光の奥へ奥へ進む。
――――――――
雪が溶けて久しく、木々は色鮮やかに咲き乱れ、虫や動物たちが待ってましたと言わんばかりに飛び交う季節。
森の中には不釣り合いな家が一軒。
普段ならば小鳥が囀り、風に揺られた木々がざわめきだつであろう。
しかし、この瞬間だけは森全体が耳を傾けているかの如く静まり返った。
「お前たち。今日まで本当によくやったな。これでようやく任せて逝ける。ありがと…う。」
それはとても優しく穏やかな終わりを告げる声であった。
「お祖父様?お祖父様ー!!」
ようやく10歳になったばかりの子供が二人。
一人がそばで泣きじゃくり、もう一人は一歩離れて冷静に見守ってる。
彼らの名前はソル·シャレットとルナ·シャレット。
彼らは双子で見分けがつかないほどよく似ている姉弟。
「ソル。お祖父様は逝かれてしまったのね。」
「ウェッぐ。ひっく。う…うんお姉ちゃん。もう、脈も魔力もない…よ。」
「そう。それは…」
「とても素晴らしいことね!!これで私達は二人で何でも出来るのね。あぁ今日はなんていい日なのかしら。ほら、ソルもいつまでそんなことしてるのよ。もうそんなふうにごまかす必要もないのよ!!」
今にも踊りだすのではないかと思うほどの喜びが滲み出た声が響き渡る。
「もう、いいのかな?」
「ええいいのよ。ほら、かわいいかわいいソルの顔が台無しじゃない。拭いてあげるわ。」
小さな女の子、ルナが可愛らしいハンカチを取り出し、弟の顔を拭く。
「これでいいわね。ほら、やっぱりソルの顔は可愛いわ。雪のように真っ白でふわふわな髪と血のような神秘的な真っ赤な目。完璧ね。」
「だってお姉ちゃんの顔と一緒だから、可愛くてかっこよくて綺麗に決まってるよね。」
「さ。お祖父様の死亡もしっかり確認したし、これからやることが山積みよ。まずは遺体に防腐処理の魔法をかけなくてはね。」
「私達の後見人がお祖父様の最期を看取りに向かってるとのことですし。まぁ、間に合わなかったみたいだけど。その準備を"色々"としましょう。」
「うん、わかった。僕は必要なものを"家"から取ってくるね。」
ソルはとても明るく伝えるとドタドタとご機嫌な様子で部屋から出ていく。そして、まるでこの家にたった一人しかいないかの如く"不自然"に静まり返る。
残されたルナは未だ高揚した雰囲気で窓の外を見る。
「楽しくなるわ。」