2.法陣師の俺、フードをとったら美少女だった盗賊少女と再出発を誓う。
レストランから出た俺と、盗賊少女、ペルシィ。
日も落ちて、人通りの少ない道を歩く。勢い出てできたわけだが、果たして良かったのであろうか。辛酸をなめることになっても、パーティに留まらせてくれと、頭を下げるべきではなかったか。
そんなことを考えながら、特に目的地もなく、歩を進める。隣に歩いていた、ペルシィだが、うつむいたまま、フルフルと震えている。屈辱か、悲しみで身を震わせているのか………そんなことを思ったんだがーーーー
「いやったー!! ようやく、あのいけ好かないパーティから抜け出れたっす!!」
「!?」
ばんざーい! と唐突に喜びの声を上げ、ペルシィが両腕を天に突き上げた。はずみで、彼女のかぶっていたフードが外れる。
そこには、絹色の髪に猫の耳をはやした、かわいらしい美少女の顔があった。
獣人のスカウトであるペルシィは、参加してからずっと、フードで顔を隠しており、その顔の中身は、パーティの誰も知らなかった。
獣人であることは、盗賊衣装のお尻から見える、フリフリと動くしっぽでわかっていたのだが。
「きっと、見るに堪えない顔なのですね! おかわいそうに……」
と、ミーネはそんなことを言って下に見ていたが、実際のところは、ペルシィ>>>ミーネであろう。俺の好みも加味しての評価ではあるが。
「ジーンさんもお疲れ様っす。でも、話の流れで一緒に抜け出られてよかったっすね。あのまま一人で、あの自称優秀な奴らの中にいたら、いびられること間違いなしだと思うっすよ」
「まあ、そうだな。これも良い機会であったと思うよ」
「そうっす。私たち二人だけ、雑用やら、荷物持ちやら、夜間の警戒とか押し付けられていたっすからね。あんな扱いの悪いところ、出て正解っすよ」
しみじみと、そんなことを言うペルシャ。溌溂とした表情で、やれやれと肩をすくめる彼女を見て、俺もふっと笑いが出てきた。
「それにしても、随分としゃべるんだな。一緒にパーティを組んでいるときは、必要以上に話すようなことはしなかったのに」
「あー、そのことっすか」
俺の言葉に、ペルシィは苦いものでも食べたかのように、かわいらしい顔をくしゃっとゆがめる。
「パーティを結成してすぐのことっすかね。あの”お聖女様”に、随分と育ちが悪い話し方をされるのですねーってバカにされてから、話す気が起きなくなったんすよ」
「………ああ、ミーネなら言いそうだな。まあ、俺は、そのしゃべり方は可愛くていいと思うんだがな」
「ふえっ!? そ、そうっすか?」
「おお、愛嬌があっていいと思うぞ。これからはたくさん、俺と話してくれ!」
「ジーンさんがそう言ってくれるなら、自分のこの口調も、好きになれそうっすね……」
そういって微笑みあう俺達。と、俺の腹が雰囲気を打ち破るかのように、ぐーっとなった。
「おお、大きな音っすね」
「腹が減っていたけど、さっきは、まともに飲み食いなんかできなかったからなー」
乾杯した直後に、ルーアがペルシィを追放だって言い出したからな。せめて飲み食いが終わってからしてくれりゃいいのに。
いや、ご馳走を前に立ち去る俺たちを、酒の肴にするつもりだったんだろう。まったく、困った性格の奴らだ。
「それじゃあ、私たち二人で食べなおす。飲みなおすってのはどうっすか?」
「おお、そうだな。俺たちの再出発を祝うために、パーっと行くか」
「おれたち……ジーンさんは、これからも私とパーティを組んでくれるんすか?」
「ん? ひょっとして、ペルシィはソロで行きたかったのか?」
「いえいえいえ! そんなことないっす! ジーンさんと一緒なら心強いっすけど、私は追放されるような盗賊ですし」
「俺も追放された法陣師だぞ。気にするな。それに、俺はペルシィが有能なのは知っている。あいつらの言うことなんて、気にするな」
「ジーンさぁん………」
俺の言葉に、ペルシィは涙を目に浮かべるが、すぐにそれを腕でこすって落とすと、
「それじゃあ、これからもよろしくお願いしますっす!」
と、笑顔で俺にぺこりと頭を下げてきたのであった。
俺も、こちらこそよろしく。と頭を下げ返す。その後、通りの道沿いにある、飲食店に入り、二人で乾杯をするのであった。