10年後にもどってきた少女に愛がふりそそがれる < 番外編 >
国王が語ります
2番目の息子、アレクサンダーが生まれたとき喜びもあったが、ほっとした気持ちのほうが大きかった。王の大事な役目、後継をふたり得ることができたからだ。
だが、アレクサンダーが3歳をすぎたあたりから、別の悩みがでてきた。
アレクサンダーが優秀すぎたのだ。上のレオナルドが非凡だったとかではない。レオナルドも人並み以上なのだ。だが、それを上回る子だった。
それは臣下にいろいろな思いを抱かせた。ただ、慰めだったのはふたりの仲がよかったことだ。
特にレオナルドは思うこともあったと思うが、曲がることなく成長した。
だが、ある日魔術師団にエリシアという魔術師がやってきた。優秀な成績で文官に採用され、ひょんなことで魔力があることが判明し魔術師団に転属したのだ。
そのエリシアにアレクサンダーがなついたのだ。まわりは首をひねったが、わたしと妻は喜んだ。
優秀さ故に孤独な我が子。その子がようやく心惹かれる存在にであったのだ。
そのうちアレクサンダーはなついたのではないと気づいたが、その気持ちを利用・・・いや大事にしてやろうと思っていた。
その後わたしはレオナルドを王太子にした。表だっての反対はなかったが、そっといいにくそうに何故、アレクサンダーでないのかと質問された。宰相からも、当のレオナルドからも・・・・
「父上、わたくしはアレクサンダーに仕えることを名誉だと心から思っています。何故わたくしなのですか?」
「確かにアレクサンダーはこの国を正しく強い国へと導くであろう。だが、国王は凡庸であるべきなのだ。臣下がいてこその王、それがこの国の民をを100年後も幸せにする唯一の方法だ。お前はそういう王になれる」
「・・・・至らないことを申しました。王の役割を履き違えておりました。わたくしはアレクサンダーを含めたこの国を正しき方角に導けるよう力をつくします」
わたしはこの理屈を考えついた自分を褒めてやりたい。国がこの先どうなるかなんてわからない。レオナルドが王になっても、アレクサンダーが王になってもどこかからもらった子供が王になってもさほど、かわらないと思っている。
大変なのは王妃選びなのだ。エリシアを王妃にすると面倒になりそうなのだ。といってエリシア以外を王妃にするのはアレクサンダーが承知しないだろう。
エリシア自身はそこそこの家柄で王妃にできなくもない。だが実家が問題だ。
あの俗物だらけの親族がうるさいだろう。だから王はレオナルドがいいのだ。
後におれは自分の選択を神に感謝した。エリシアのいないアレクサンダーが王になった所はこわくて想像できない。
臣下の間でわたしの評価と王室の評価はあがったが・・・・
今、アレクサンダーは魔術師団で大活躍をしている。
隣国に魔獣がでて救援要請がきた。あの怖いもの知らず、礼儀知らずの王女がいる国だ。
珍しく、感情を表していやそうな顔をしたアレクサンダーをみられた。
予定より魔獣撲滅は早いだろうなと、討伐隊を見送った。