元『王宮の花たち』は語る
幸せをつかんだ令嬢はこう話します
その日もわたしは、後をつけていた。
前方には4人の令嬢、『王宮の花たち』と呼ばれている令嬢たちの中でも目立っている、そして売れ残っている人たちだ。
『王宮の花たち』というのは決して褒め言葉ではない。学院卒業時に婚約者のいない令嬢を王宮が引き取っているというか・・・・
わたしたちに仕事の能力はない。気を使って与えられる仕事は、他の部所へのお使いだったりお客様がいらした時に挨拶をしたり、正式な挨拶じゃないよ・・・いらっしゃい・・・ていう程度。
来客の予定はあらかじめ、分かっているし、お席についている義務もないから華やかに着飾ってぶらぶらしているだけ・・・・まぁ見た目は華やかだし王宮に慣れていない人、つまりおのぼりさんはさすが王宮、こんな人がいるんだ。と感動してくれたりするから・・・それでいつの頃からか『王宮の花たち』と呼ばれるようになったのね。
そうわたしは後をつけていたのよ。
あの4人をみると知らない人たちは、綺麗だなと思うし勇気を振り絞って話しかけたりするのね。
話しかけると言っても道を尋ねるの。王宮は慣れないと迷うから・・・
そしてあの4人は、そういう人に、うその道を教えるのよ・・・・益々迷った人をわたしが助けたこともあるのよ。
それが悔しいことに、わたしがひとりで道案内しますよオーラをだしていても、誰も話しかけてこないのね。どうせ・・・わたしは・・・じみーーーーな花です。
だけどね、その迷子のなかに有望株がいることに気づいたの。
案内したひとりは爵位を継いだばかりの辺境伯だったのよ・・・魔獣と戦った傷がまだ顔に残っていて、こわかったから、わたしは隠れたんだけど・・・考えてみれば・・・傷なんてたいしたことじゃないわよね辺境伯夫人よ・・・
その次はお年寄りだったんだけど、隣国の大使だったの。ひとりはぐれちゃったみたいで、あとで見たらすごくハンサムな侍従が付き添っていたわ・・・
そういうことで、今日もわたしは後をつけています。小道具も充実してるのよ。服装は清楚で知的に見えるってお店ですすめられた地味なドレス。仕事中を偽装ための革のバインダー。これにはわたしの名前と家紋をいれてあるのよ・・・
さて、きょうの餌食はわかい男性だわね。逆の道を教えたんだと思うけど、お礼を言って急ぎ去って行ったわ。
彼は買いだとわたしの感がささやく・・・・勝負だ・・・と頑張ったの。
「助かりました文官様、お忙しいのに案内してくださって、爵位のことで相談させていただく為にこちらに参りましたが、途中で道に迷ってしまいまして、一緒に来て頂いただけでなく、わたしの事情まで説明してくださいまして・・・あのお礼を・・・こんな時お名前を聞くのは不躾なんでしょうか?その疎いもので・・・・」
「不躾なんてことはないですわ・・・でも特別なことをしたとは・・・困っている方を助けるのは当然ですもの・・・」
さりげなくファイルを見せながらこう言ってわたしは立ち去りましたのよ。
その日、家にもどるとお礼が届いていましたわ。
笑うほど大きな花束とお菓子の山・・・・
婚約まではあっと言う間だったわ。会うたびに豪華なプレゼントをされるし、彼もだんだん洗練されていくし・・・
そして極め付きは職場に結婚の報告をした日ね。退職の挨拶をして結婚の話をしたの、上司も祝福してくれたの。
その後、彼と出会った場所で思い出を語りあっていたら、『王宮の花たち』が三人走ってきて物陰に隠れたのよ・・・気づかれないように近寄って話を聞いて驚いたわ。
あのリシアさん。ううんリシア様と言ったほうがいいかしらね、とにかくリシアさんに手をだしたらしい。
それでわたしは考えたわ。彼に手柄を立てさせようって・・・・
わたしは3人に近づくと
「もう逃げられないわよ」と大声を出したのよ。当然3人はわたしを黙らせようと飛びかかってきたわ。
それをみて彼はわたしを守ろうと三人に立ち向かったわ。がんばってた。
わたしは、悲鳴を上げ続けたわよ・・・するとわたしの声を聞いてすぐに魔術師団も騎士団も駆けつけたわ・・・・
後日、ギルバード殿下とアレクサンダー魔術師団団長から直筆で連名のお礼状が届いたわ。
かれの家でもいえ、かれの一族の間でもわたしの株が爆上がりしたわ。
その後このことが評判になってうちのお菓子屋はさらに大きくなったの。
それにね、新作が出るたびにリシアさんに献上するんだけど、丁寧に感想を書いたお礼状が届くの。さすがにそれをお店に飾れないけど・・・・そういうことってなんとなく漏れるみたいで・・・・
王女様の好きなお菓子屋さんってことで評判はあがるばかりよ!!!
あの4人組がいなければ彼と出会えてなかったと思うとあの人たちに少しだけ感謝の気持ちがでてくるわ。
少しだけよ。少し・・・だってにやっぱりざまぁみろって思うもの。
でも全力で幸せになるのに忙しいから、ごくたまに思うだけ。