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旅立つ準備をしよう

 ――翌日。

 

 

 早速旅の手筈を整えるべく、俺は街の自警団を通じて知り合い、今では最も気の置ける『友人』を自宅に招いた。

 

 

「……なんだよ。この超かわいい悪魔は」


「フレアだよ」


「はぁぁぁ!? ふざっっっけんじゃねえええ!!! いったいいつからお前の子供はこんなはしたないコスプレしたエロガキになったんだよッッ!!! 『話があるって』、まさかお前の隠れた趣味を見せる為だったのか!!??」


「んな訳ねーだろッッ!!!」


「あっ! ライアンさんだ♪ 久しぶりー♪」



 ライアンと面識があるのは俺だけではない、フレアも同様で時折顔を出しに来ては魔物を倒した時の戦利品を見せたりして仲良さそうにしているのを知っている。だからこそ、俺はライアンにしか頼めないと思った。



「ねえライアンさぁん。見て見てぇ。ボク可愛くなったでしょー♪ 伝説の悪魔になっちゃったんだよー♪」



 羽根をいじったり、尻尾を前に持って来たり。少女とは思えぬ誘惑的なヒップラインを見せつけて、明らかにライアンを挑発している……。

 

 

「おお、おおそうだなあ。可愛いがけしからんな。けしからん過ぎてガン見しちまうくぁwせdrftgyふじこおきじゅhygt」


「尻尾触ってみる???」

 

「喜んでッッ!!!」

 

 

 俺はライアンの頭を思いっ切り引っ叩いた。やらせるかっつーの!!!

 


「おいライアンっ!! 目を覚ませ!! フレアもおふざけは止めなさい!!」


「はっ」「はぁ~い。ごめんなさーい」



 そろそろ止めないとライアンが危険な世界に旅立ってしまいそうなので止めておく。全く旅立ちたいのは俺なのにお前が先に行ってどうする。



「お前が色々おかしくなるのは分かる。ただ今はどうか正気に戻って俺の頼みを聞いてくれないか」



 引き剥がすようにライアンを遠ざけ、無理矢理こっちの方へ持ってくる。



「フレアちゃんすげえいい匂いしたなぁ……。あれやべえわ、犯罪だよ」


「う”おおい!!?」



 いかんいかんぞ。さっきのでフレアの香りに完璧にあてられてライアンまでもが己を見失いかけている。慌てて俺はビンタした。往復で七回くらい。

 

 

「っ!? オレは一体何を……」


「よし、目が覚めたか。じゃあ話の続きをするぞ」



 ライアンには俺達の目的を明かし、それに当たっての頼みを二つ要求した。

 まず一つ。フレアの正体は内緒にしてほしい事。そして二つ目は、この家は自由に使っていいから、その代わり面倒を見てほしい事だった。

 

 フレアが冒険をしたいと願い、そしてその夢が叶いそうになってしまったからには、俺も覚悟を決めなくてはならない。この家にはしばらく帰って来れなくなるが、でもいつかは帰って来る場所。それまでの間ほったらかしにして埃まみれにするのもなんだか晴々としない。

 

 ――そこで思いついたのが、ならば一番俺が気の許せる友人に預けてしまおう、という結論だ。

 

 

「……成る程ねえ。あの森にあった『名も無き墓』に眠っていたのがよりにもよって自称伝説のサキュバスだったと。にわかには信じがたいな……」


「あの墓が壊されたと街の人が気付くのも時間の問題だ。まさか『悪魔が眠っていた』なんて誰も思わないだろうが、早い内にここから離れるに越した事はない」


「……話は分かった。自警団の団長とかには話はしたのか?」


「ああ。フレアの病気の治療に専念する為に都市の方へ移り住むと既に伝えてある」


「話が早えなぁおい。簡単に言うけどこれって人生の一大事な決断なんだろ? お前のそういう行動力だけは本当尊敬に値するぜ」


「なんだよ『だけ』って」


「だってお前があの薬屋の看板娘と知り合うだけならまだしも、付き合って挙句結婚だあ? 地元の人からしたら目から鱗だったんだからな」


「……その話ならもういいっての」


「悪かったって。じゃもう発つんだな?」


「ここルベールの街から南下した商業都市ガザに『冒険ライセンス発行所』がある。だからまずはそこに行って色々手掛かりを探ってみるよ」


「そうか。お前がそう決めたんならオレももう何も言わねえさ」


「すまない……恩に着る」


「構わねえさ。家を預かるのは分かったが、変なモノとかないだろうな?」


「ああ、自分で言うのもなんだが元々最低限の荷物しかないからな。見られて困るものも大してないさ」


「うっし分かった!! 帰って来たら土産の一つでも持って来いよ!」


「――ああ、分かった!」



 交わした言葉は多くは無い。なんならあっさりすらしてただろう。でも俺にとってはそれが本当に助かった。ライアンと親友でよかったと、心から思えた日だった。


 ――こうして俺とライアンは腕を交わし合い、また必ず会う事を約束して、街を出た。

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