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刻み付けて…



願いが天に届いたのか、11回目の満月は晴れだった。



エリック様は今日も優しく微笑んでくれる。




「ねぇ、エラ。 また、君に贈り物をしたいんだけど、何か希望はある?」

「え…、でも、この前素敵な鏡を戴いたばかりです…」



驚いたことに、ついこの間、本当についこの間 鏡を戴いたのに、また贈り物を下さると言う。

しかし、そんな恐れ多いこと・・・、私がまた何か ねだってしまっただろうか…?



エラは色々な考えを巡らせた。


これが、普通なのか。

それとも何か意図があって贈って下さるのか。

なんと答えれば、失礼に当たらないのか・・・。



「いやいや、以前も言ったが・・・、私が贈りたいだけなんだ。 君の、エラの喜ぶ顔が見たい。エラの喜ぶ顔が、私の日々の糧になるんだよ」

「そん、な・・・えっと…、あ、ありがとうございます…」



耳の先が熱くなるのを感じた。


私の事を『糧』と言って下さった。

きっと他の、周りの友人や、女の人達にも言っている事なのだろうけど・・・


私の、私なんかの喜ぶ顔でも、『糧』になると、そう言って下さった。



あぁ、それだけで・・・

その一言だけで…、私は生きていて良かったと・・・

私と言う存在を肯定してくれて、それだけで、私はこれからも生きていける。



「だから、欲しいものはない? 出来れば君に必要な物を贈りたいんだ。」

「欲しい、もの・・・。 でも、本当に、良いんですか…?」



何だろう…。と、少し考えようとしたが、やはり私なんかが貴族様に物をねだっていいのだろうか…。と躊躇ってしまう。



「あぁ、大丈夫。 これでもお金なら沢山持ってるつもりだよ」



「ふふふ、」と悪戯に笑うエリック。

何れだけ持っていれば沢山なのか、エラにはその"沢山"が想像出来なかった。


しかし、エラごときに何か贈ったところで、生活が傾かないことは理解した。



「あ・・・・、そうですよね…、私ったら、いつまでも躊躇って…、じゃあ…、あの・・・」

「うん?」



エラはエリックの瞳を見つめた。


吸い込まれそうなほど青くて、海と呼ばれる水だらけの場所は、こんな色なんだろうかと想像する。


一瞬、時が止まったように思えたが、すぐにハッとして、現実に戻る。

しかしこの現実もまた、夢のようだ。




「リボンが、欲しいです…」



エラは恐る恐るそう述べた。


もしエリック様の気に障ってしまったら…

そしたらこの素敵な時間が無くなってしまうのではないか…。


それが怖かった。



だがエリックの反応は意外だった。



「リボン? 本当にリボンで良いのかい?」

「え…? ・・・はい、この、長い髪を纏める、シンプルなリボンが・・・」

「・・・うん、分かった。次の満月に必ず持ってこよう。 君の喜ぶ顔が、早く見たいな…」



エリック様は、優しく、また私の頬に触れて下さった。

今度はその感触を、しっかり刻み付けて、


忘れないように・・・。



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