表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/23

星を映す瞳



「エラの瞳は吸い込まれるような色だ…。 とても、綺麗だね」




そう、エリック様が言う。


どんな色だろう?と、透き通る泉に自分の瞳を映すも、よく分からない。




「わたしの、瞳は、どんな色なのでしょう…。」

「どんな色…? 美しい…、この星空が透ける雲のようだ」

「・・・・・そうなんですね」



夜空を見上げて、あんな色なのだなと、初めて知った。



「おかしな事を言うね。鏡ぐらい見たことあるだろう?」



エリック様は「ふふふ、」と優しく笑う。

おかしな事なのだろうか?



「鏡…、聞いたことはありますけど…、・・・すみません、見たことなくて」

「え…?」



自分の姿が映ると言う鏡。

町にある、綺麗な硝子よりもハッキリと自分の姿が映るらしい。


けどエラの生活には必要なかった。

そもそも、そんな高価なもの買う余裕もない。



あぁ・・・、恥ずかしい。

きっとエリック様みたいな方にとって、普通の、当たり前に持っているものなんだ…。


エラはそう感じた。

「はい」と…、あぁ、あの鏡ですねと知った風に言えばそれで済んだかもしれない。


けれど、この方に、エリックに嘘を付く方が、エラにとってはしたくない事だった。



「・・・・・そうか…。 ・・・・じゃあ、今度、鏡を君に贈ろう。」

「えっ・・・・、いえ、あ、そんな…その様に、言ったわけでは・・・!」



何て事だろう。

物をねだっていると勘違いされてしまったらしい。



エラは高貴なお方に、とてつもない恐ろしい事を言ってしまったと、焦って取り繕う。

しかしそんなエラを見て、エリックはまた困ったように笑った。



「いいや、良いんだよ。 私がエラに贈りたいんだ。」

「あ、え…でも、私なんかに贈ったところで・・・、そんな、お返しも、出来ませんし・・・、」

「エラ、女性は受け取るだけで良いんだ。 男性が女性に贈り物をするのは、とても普通の事だよ。」

「そう、なんですか…?」

「あぁ! だから今度、受け取っておくれ。 押し付けがましいと思われるかもしれないけどね」

「そんな事…! ・・・・・あの、すごく・・・、本当はすごく嬉しいです。」

「 ! そうか、なら、良かった…」




何てお優しい方だろう。

こんな、私にまで、贈り物を下さって・・・


きっと今が人生で一番幸せな時間なんじゃないかと…、そう感じる程に・・・



あぁ、次の満月も、どうか・・・晴れますように。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ