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干支暦和は平凡な毎日と共にありたい。  作者: 朝水林次郎
俺の幼馴染は同居人と結ばれたい
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帰り道の捜索

「こ!…こんにちは。」

「どうぞお入りください~」

「は、はい。」

昔おじいちゃんが使っていた席に座ると、玄関が見えないので誰が来たのか分からなかったが、ようやく全貌が明らかになった。


髪型は昔ながらのいわゆるおかっぱで、頭に小さなリボンをつけている。緑色のサスペンダー付きのスカートで、少しタイムスリップしたような感覚だった。最近こういうのがまた流行っているのか?まあ、むしろ清楚な感じが伝わって嫌いじゃないが。


「あ!…あの。」

「あ、お名前聞いてなかったね。なんて言うの?」

「ああ。豊敷すみれです。」

「すみれちゃんかあ。良い名前だね。」

「あ、ありがとうございます。」

「それで、今日はどうしたの?」

「あ、あの。お母さんと…は、はぐれちゃって。おうちに帰れ…ない…です。」

「そっかあ。じゃあ、お姉さんたちと一緒にお母さんを探そっか?」

「いや、もしはぐれたら、あ、あたしだけでも家に帰れって言ってたから。家に帰りたい。」

「OK!分かったぜ!じゃあ、お兄ちゃんと一緒に帰るか!」

「お兄ちゃんは心配なので、お姉ちゃんも一緒に行きます。」

俺ってそんなに信用無いの?


「じゃあ、ちょっと準備してくるから、ちょっと待っててね。」

「わ、分かりました。」

部屋に戻って支度をする。ちゃんと外に出てもいい格好にだ。

「あの~よみかず君ちょっといいですか?」

「うん?どうしたの?」

「あの、すみれちゃんって子。怪しくないですか?」

「怪しい?」

「というか、妖しいというか。妖怪じみているんですよね。」

「そうかな?ただの、小学生に見えたけど。」

「一人にさせるのってまずかったんじゃないですか?」

「大丈夫だよ、何が起きるっていうの?」

「この世界には、神様がいるんです。だったら、妖怪くらいいても不思議ではありません。」

「いやいや、神様なんているわけないって。確かに15年ぶりに会えたのは、奇跡かもしれないけど。」

「神様は、いるんです。」

「あーそう?」

「はい。」

まっすぐした瞳に納得させられる。


「じゃあ、いるのかな。」

「はい。」

「じゃあ、リビングですみれちゃん待ってるし、行くよ?」

「はい。」

リビングへ向かう足取りは、今までよりも重く、何やら本当にただ者じゃない何かを感じているようだった。否、ただ弥生さんにそそのかされただけと言えばそうだろう。気を取り直して、すみれちゃんの元へ進む。


「じゃあ、行こうか!すみれちゃん!」

「は!…はい!」

「元気があっていいね。」

「そうですね。」


玄関を出て、まず道路に出る。ここの車の通りは少なく、車道に飛び出してもまず轢かれない。

「だからって子供みたいに飛び出したら、少し引きます。」

「飛び出さねえよ!」

「すみれちゃんも、こんな男の人に惹かれちゃだめだからね?」

「だから、飛び出さねえって!」

「…ふふふ。」

「あ!すみれちゃんやっと笑った~」

「わ…私だって、ちゃんと笑えます。」

「笑顔の方がいいよ、すごくかわいい。」

「べ、別に。そんな褒め方されても…」

「まあいいや、で、どっちに進めばいいの?って痛い!痛い!足踏まないで弥生さん!」

「まあいいやって何ですか?」

目が笑っていなかった。右手には握りこぶしが、左手には日傘が、俺の鳩尾をめがけて今と言わんばかりに構えられていた。


「え、?」

「まず一つ、すみれちゃんに失礼です。まあいいやってそんな感じでほめていたんですか⁈じゃあ、もしかして私に言っていたのもそうなんじゃないかってなります。」

「すみません。」

「謝罪は早いです。そして二つ目。私を差し置いて、他の子まで手を出そうとしないでください。さすがに傷つきます。私の都合とはいえ。」


「本当に申し訳ない。すみれちゃんもごめんな。」

「私…は別に。大丈夫ですよ。そんなに気にしないで。」

「はあ、分かったならいいです。」

「た、確かこのコンビニを右に曲がると思う。」


話題を変えてくれた。気の利く女の子だ。


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