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干支暦和は平凡な毎日と共にありたい。  作者: 朝水林次郎
俺の幼馴染は同居人と結ばれたい
4/34

恋盛りな結末

「これくらい良くあったと思うんだけどなあ。」

「幸助おじいさんがすごかったんです。私はいつも自分の無力さを感じていました。」

「そうだったんだ。おーいさつきちゃん終わったぞ~!」

 もうすでに爆睡中だった。口からはよだれが垂れてたし、服ははだけておなかが思いっきり露出してたし、何というかもうおっさんだった。


「早く起きろよ~」

「…ひょーすけくーん、でへへ。」

 寝言だった。ひょーすけ君とは誰なんだろう?

「ああ、その子なら知ってますよ。隣のおうちの咲楽さんいるじゃないですか?」

「ああ、うん。」

「息子さんみたいですよ。」

「え?でも、1回も見たことないよ?」

 忘れてしまっただけかもしれないが、それでも記憶にはないものだから仕方ない。

「そりゃそうですよ。まだ死んでな…は!何でもありません。」

「何々?今なんて言った!」

「引っ越してないって言ったんです。お母さんの単身赴任みたいな感じらしいので。」

 ああ、そういうこと。何か大事なことを言われたような気がしないでもないが…


「・・・ふう。」

「しかし、よくこんな回りくどいこと考えたもんだな。」

「そうですか?」

「だってさ、素直に言えばいいじゃないか。好きなら好きって。この差出人不明の手紙みたいなのじゃなくて。」

 後ろをぺらっとみると、下の方に小さく文章が書いてあった。


「あれ、差出人書いてあるじゃないですか。見落としましたね。」

 鬼の首を取ったようにニヤリとする弥生さん。そのしたり顔、姉妹でそっくりだ。

 スルーして読むと、どうやらこれもまた、謎解きのようだ。

『海無し 山なし 幸も無し』

「うーん。こればっかりは、クラスメイトの名前を知らないとなあ。」

「そうですね。あ!起きましたよ。」

「ふわ~。お姉ちゃん分かった~?」

「うん!もうわかったよ!」

「それはよかった。それでさ、差出人分かった?」

「え?何でそれで悩んでるってわかったの?」

「いや、そこまで言ってないんだけど…本題がそっちだからさ。」

「そうだったのか。じゃあ、クラスメイトの名前を少しあげてくれ。特に都道府県の苗字の子。」

「え?よみかず君もう察しがついたの?」

「まあね。」

「あーそう?じゃあ、とりあえず名前あげるから。」

 ちょっと紙貸して?

 いや、神化は無理だ。

 神化してなんて頼んでない。

 お前ツインテールしなきゃいいだろ。

 髪貸してとも言ってない!どういう聞き方したらそうなるの⁈


「はあ。耳の悪さはこの世界でも随一だよね。その便せんをよこせっつってんの。」

「そんなイライラすんなよ。」ほらよっと渡した。

「え~と。」

 書き上げたのは6人の男子。

 青森(あおもり)将太(しょうた)

 熊本(くまもと)(すぐる)

 長野(ながの)(くに)(まさ)

 山梨(やまなし)(こう)()

 山梨(やまなし)(しょう)(すけ)

 琉球(るたま)(きよし)


「じゃあ、決まったな。おめでとう。」

「え?え?いやいや、分かんないんだけど。」

「そうですよ、よみかず君。ちゃんと説明してください。」

「はあ。じゃあ、まず文章の『海無しやまなし幸も無し』だけど、」

「うんうん!」

 ノリノリで聞いてくる和泉姉妹。


「海無しってことは、海無し県てことだろ?」

「海無し県?」

「海に囲まれてない県のことですよ、さつきちゃん。」

 こそこそと言ってるようにしているのかもしれないが、ダダ漏れである。


「…はあ。ということは、苗字を見ると、長野君と、山梨君×2に絞られる。」

「なるほどお。」

 手を打ち大きくうなずいてくれるのはうれしいが、もうちょっと自然にやってくれないかなぁ。

「次に、やまなしだけど。」

「はいはいはい!それ分かりました!」

「…えぇ。じゃあ、弥生さん。」

「がんばれお姉ちゃん!」

「うん!」

「一つだけ、なしが漢字じゃないので、怪しいと思ったんです。これって、山梨君ってことですよね!?」

「はい、大正解。」

「よし!」


「これで、二人に絞られました。山梨昭佑君と、山梨幸哉君。」

「あ!はいはいはい!わかった!」

「はい、さつきちゃん。」


「幸も無しってことは、『幸』っていう字が入ってないってことでしょ!と・い・う・こ・と・は!」

「はい。正解は山梨昭佑君です。」

「いいいいいいやったーーーーーーーーーーーーーーーー!」

 アパート中に広がる声で、今にも鼓膜が破れそうだった。うるせえよ。

「じゃあ、急いで昭佑君のところ行ってくる!」

「あーい。」

「昼までには、帰ってきてよ~!?」

「了解です!」


ビシッと敬礼をし、恋盛りな少女は昼の街に繰り出していった。


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