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干支暦和は平凡な毎日と共にありたい。  作者: 朝水林次郎
懐かしの知人たちは久々に戯れたい
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従姉妹が見たい恋花火

「どうして、ここにいるんだ?」

「あ、その声は先輩じゃないですか!」

「そんな明るい挨拶は良いから。」

「何だ、シリアスモードってことですか。今日は何を知りたいんですか?」

「この踏切のことだよ。」


ここは、確か生きている世界では、洗脳踏切と呼ばれていた。ここに来ると、特に女の子がいきなり線路内に入ってくるという。それと、関係があるのではないだろうか。


「ここでは、泉黄ですよ?」

「じゃあ、ここは。」

「そうです。察しが速すぎて、話が早すぎて少しつまらないですね。そう。ここは、この世界と生きていた世界、つまりは彼女の世界と先輩の世界の唯一のつながりです。」

「唯一の…つながり。」

「そうです。ここがつながりであり、ここが始まりです。」

「じゃあ、弥生さんもそのきれいな石とやらに、惹かれたのか?」

魅かれて、轢かれたのか。


「いえいえ、それは違います。本気で言っているのなら、苦言を呈しますよ?」

無限に。

無限に⁈

そうです。


「だって、そのきれいな石とやらは、私がしたことですし。」

「それって、どういうこと?」


「弥生っちに頼まれたんです。あの子、そのころ精神的に荒れてて。私が妹を殺した、それなのに喜びを感じる自分がいるって。

「多分、その喜びは人助けによるものなのでしょうけど。

「だから言ったでしょう?人助けって、自分が良ければ成立するんですよ。ただの、自己満足なんですよ。


「それで、私は提案をしました。『弥生っちの世界を作ってしまえばいい、その補助はする』ってね。

「彼女はそれに乗った。迷うことなく、乗った。そして、まず手始めに大漁まつりを引き離した。

「おやおや、弥生っちに対して怒ってるんですか?確かに、やり方はまずかったかもしれませんが。どれもこれも、先輩のためなんですよ?

「そうです。先輩の為です。人の為に善いことをすることは、偽善だなんてよく言われますけど、彼女の意思は本物でしたよ?真でしたよ。

「そして、その夢の世界がクライマックスを迎える。愛しの人との、感動の再会です。

「それで、呼び出させていただきました。詳しいことは、彼女から聞いてください。あ、最後に一つ。今年中には帰れますよ。」


河内冴姫は、あっさりと帰って行った。弥生さんは、なぜ死んだのか。それだけは、言わなかった。触れてはいけないタブーの範疇なのだろうか。


歩きながら考えると、一つの仮説にたどり着いた。正直、この仮説は仮説であってほしい。これは、さすがに嫌だ。嫌というか、申し訳なさすぎる。自分が嫌いになる。だって、こんなことはあってはならないのだから。


ありふれた日常は、ありきたりな毎日は、和泉弥生の犠牲によって、成立していた。ありえない勘違いをして、ありがたみを知らなかったのは、紛れもなく問答無用で俺だった。


これは、あくまで仮説であって、それが真か偽かは定かではない。それは、弥生さんの心次第である。


しかしながら、少しも疑問がないわけではない。もし、彼女たちは皆死んでしまったというのなら、どうして成長した姿でいるのだろうか?


「ただいま~」

「あ、しー。お帰りなさい。」

「どうしたの?体調は平気か?」

「ええ。だいぶ良くなりました。それより、今まつりちゃんが寝てますから。静かにお願いします。」

「分かったよ。あと30分くらいあるしな。」


「まつりちゃんすごいんですよ。すぐ寝ちゃって、ほっぺたつんつんしても全然起きないし。」

「まつりはいつもそうだったな。」

お茶を一口飲み、真剣なまなざしに切り替え、弥生さんに問いかける。

「なあ、弥生さん。」

「何でしょうか。」

「泉黄踏切って知ってる?」

「な、何のことでしょうか。」

「その感じだと、やはり知ってるんだな。」

「すみません。」

「謝らなくていい。じゃあ、確認なんだけど、ここは死後の世界ということでいいのか?」

「微妙なラインですね。死後っちゃ死後なんですけど。」

正確を期するなら、別の世界線です。


「別の、世界線?」

「人それぞれ、世界というものを持っているんです。中二病っぽいんですけど、便宜上そう呼ばせてもらいます。」

「そうなのか。」

「そして、世界間の移動は、一旦その世界でリセットしなきゃいけないんです。ここまで、かわちーが教えてくれました。」

何者なんだ。あの子は。


「それでも、よみかず君を殺してまで私の世界に組み込もうとは思えなかった。」

だから、呼ぶという形で派遣してもらったのです。1年間というレンタル契約で。

「ふわぁ。あれ、もう帰ってたの?じゃあ、かず兄!花火見るよ!」

「え、ちょっと。」

「今度は弥生さんに取られませんから!」

ヒューッドン、パラパラパラ。

「お、始まった!綺麗だな~」

「そうだな。」

「ここの花火一緒に見るの久しぶりだね。あーあ、浴衣持って来ればよかったなぁ。」

「お、今のすげえー!」

「ねえ、かず兄。」

こちらを見つめる彼女は、どこか照れくさそうにそう言った。


「碧祭の恋花火って知ってる?」

「何それ?」

「このお祭りで、唯一黄色のハートがかたどられたやつで、一緒に見たものは結ばれ…」

「あ、これ?」

「るって、え⁈」

「綺麗でしたね。」

「そうだな。技術ってすげえ進歩してんだな!」

「また、弥生さんに取られた!」

うわ~ん。うわ~ん!

「来年こそは、花火二人きれで見ようね。弥生さん抜きで!」


ぷんぷんと怒りをぶちまけて、大漁まつりは帰って行った。


「帰っちゃいましたね。」

「また来るかもな。」

「言ったでしょ。来年はありませんよ。」

「そうだっけ。」

いくつかの疑問と心配ともやもやが残る中、碧祭は無事に終わった。


「浴衣姿、好きなんですか?」

「あんまり考えなかったことなかったけど…」

「今度着てあげますね。」

「弥生さんなら、何でも似合うんじゃない?」

「そういうこと他の人に言うと、また私のヤンデレが炸裂しますよ?」

「自覚あんのかよ!」


他の人には、言わねえよ。


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