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干支暦和は平凡な毎日と共にありたい。  作者: 朝水林次郎
懐かしの知人たちは久々に戯れたい
16/34

未知へ誘う後輩ちゃん

「お前、名を名乗れ。」

文水さんが、重い口を開けた。


「失礼しました!私、河内冴姫と申します!そちらは、摂津文水さんですよね!」

「な、なぜ私の名を…」

「だって、もう死んでいるじゃないですか。」

「…え?」いつ分かったんだ?


「私、神様になりたいんですよ。全知全能の神に。だから、死人の名前くらいは覚えますって!」

「君は…何者なんだい?」

さすがにただ者ではないと悟ったのか大和が大儀そうに立ち上がり尋ねた。

「やだな~そんな怖い顔しないでくださいよ~」

「質問に答えなさい。」

「乙女の秘密です☆」

「質問に、答えろ。」

大和がいつになくイラついていた。否、イラつくというより、恐怖の方が大きかったのか?


「よみかず君。」

「だから、こよみじゃな…え?間違えなかった?」

「こいつは、ヤバいものに出くわしたな。」

「…どういうことだ。説明を求む。」

「とりあえず、逃げた方がいい。」

「それは…」

「では、正直に答えます。あなたに会わせたい人がいるんです。干支暦和君。あなたを待っている人がいます。」

「・・・え?」

「さあ、入ってください。」

全開になっていたドアのわきから、1人の女性が入ってきた。

「見ちゃだめだ!」


大和の声は遅く、その姿に俺は、見入ってしまった。

艶のある髪の毛。それを人にまとめて左肩に流す。くりくりした目に、おしとやかな口元。柔らかみのある胸。細いながらも、しっかりとした腕。すらっとした足。様相はまさに、聖母以外の言葉が見つからない。しかし、見たことがある。つまり、全く見たことのない想像の産物ではなく、一度見たことある人のその後と取れるのだ。


「や、弥生…さん?」

何年ぶりかの再会に涙がこぼれる。やはり、弥生さんは死んでなんかない。

「ああ、見てしまったか。」

「どういうことだ、大和?」

「文水ちゃん、よく聞いてね。彼女、河内冴姫は夢を見させる死神だ。」

「うん?」

「つまり、それを見たものは現実には戻れない。」

「さあ、先輩。一緒に弥生さんの元へ行きましょう。」

「うん。」

「これはもうだめだ。」

「私は、どうすればよいのだ?」

「何もできないよ。むしろここで止めに入るのは危ない。本当に戻れなくなる。」

「いやでも、一度見たらだめなのではないか?」

「一つだけ、方法はある。」

「よみかず次第の方法か?」

「そうなる。」


「じゃあ、せめてあいつのよだれだけ拭いてもいいか?」

「別にいいよ、というかよだれ?どういうこ…うわあ。」

一人の女性に対し全身を嘗め回すように見つめ、久しぶりの再会をこの目にしっかりと焼き付けようとするあまりよだれが止まらなくなった25歳がそこにはいた。


「先輩、さすがに私でも引きますよ?」

「大和、こいつを車で轢いていいか?」

「文水ちゃん、こんな男に惹かれないでね?」

「揃いもそろって言い過ぎだ!」

「それくらいのことをしているんだよ!」

文水さん、大和、冴姫ちゃんが声をそろえた。出会って初日とは思えない息ぴったりのセリフだった。


「じゃあ、俺行ってくるよ。」

「気をつけてね~」

「おい、大和。そんな軽く送り出していいのか?」

「大丈夫だよ、こよみ君なら。ちゃんとわかってるって。」

「ホントか?あの顔で?」

「信じるほかないよ。」

「そうか。」


こうして、俺は弥生さんの住む町へ向かった。自分が陥っている状況を知らずに。何が起こるか分かろうともせずに。

「ちょろいですね、先輩。」


肩をちょんと叩いて冴姫ちゃんは微笑んだ。無邪気で無垢で、あどけない笑顔ではなく、意味ありげで意味深長な笑顔だった。


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