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とある水上機パイロットのお話第3?

いつものようにログインして隠れ基地で何もせずパラソルの下で寝ていたら整備士にキレられた。


「依頼の1つ受けてこいや!」


その光景は連休にゴロゴロし続けていたお父さんを叱り飛ばすお母さんの絵図と笑いを堪える機上員を乗せてインドネシア基地で聞き込み、フィリピンで依頼人と合流。行き先はラバウルを越えたソロモン諸島だった。


「行き先聞かなかった俺も悪いけど今回は死任務だろ!」

「何でもいい、しばらく帰れないって言ったのアンタでしょうが!」


トラック諸島を越えてから任務の確認をして、言い合いながら機体の整備をする二人。整備員が怒ってたし二人乗りの機体では整備士の彼は必然、お留守番になる。


「だからって護衛艦無しの船団はありかよ!」

「いるじゃないですか」

「仮装巡洋艦が護衛に入るか!」


そう、今彼らは船団を組んだ1隻の仮装巡洋艦に居た。機体が足りなかった為に募集していて、追い出された彼らはホイホイ乗った。行き先は地獄海域ソロモン諸島。

ゲームも昔も激戦区での船の運命は変わらない。


「おまけに整備員居ないしさ~」

「募集中だったみたいですよ」

「乗ってるの俺達1機だけだし」

「募集してましたからね」


これはただ単に水上機ユーザーが不足しているからである。

陸上機と比べて性能面では不利は否めないし、機体は限られる。メリットはかなり少ない。それでは使う人も限られた。


「大丈夫かこれ?」

「運に期待しましょう」

「NPCの癖にそれ頼みって…」


長期船団クエストとかと呼ばれるミッションではより長く体感時間が伸ばされてやる設定となる。今回の任務は長くて1ヶ月くらいを3時間でおこなう事になる。

といっても割り振られた部屋で休み、哨戒の時間にはクレーンで降ろされ飛び、帰ったらまたクレーンで回収された後に整備して休む。だいたいはそれの繰り返し。だが、ラバウルに近寄れば潜水艦にモレスビーとガダルカナルからの航空機が寄ってくる。


「にても減ったなー」

「ラバウル行きが別れましたからね」


全部で8隻のうち2隻が潜水艦で沈み、3隻がラバウルへ分離し、残るは3隻。

そして全体数が減れば生存率(自分の)も比例する。


「要請はしてんだっけ?」

「らしいんですけど基地攻撃の方に集中してるみたいで」


要請による船団護衛と敵基地攻撃。面白さとポイントの差はかなりあり、選ぶ輩は自分の拠点に来る補給へ目がいく…と思う。

実際にはだいたいのユーザーはつまらない任務より戦いに行きたがって護衛は行かない傾向にある。

誰だってログインして数時間をぐるぐると飛んでいたくはないのだから。

「中世の方だと護衛イベントはスタンダードなのにこっちは不人気かよ~」

「何もなければ暇ですし、迷子の可能性がありますからね」

「それでもだよ」


海に双眼鏡を向けながら話す。先程潜望鏡を見たらしく手空きは海面を見ていた。


「そもそもラバウルの連中もソロモン諸島も分かってんのかよ」

「何がです?」

「補給がこなけりゃ消耗品の値段が上がるってのによ」


補給の為の船団に被害が出ると品薄になり値段が高くなる。

それは各国に所属や人の集まりの航空集団(通称ギルド)、個人の活動に跳ね返る。

だからこそそれなりにやらなきゃならないはずなのに、しない。

そしてそれは反映される。


「大型航空機接近!」


潜水艦では無く航空機が襲って来た。NPCじゃなくてもカモは襲いたいのが心情だ。


「クレーンで降ろせー!迎撃する!」

「潜水艦じゃ無いんですね!」


借りた双眼鏡を放り出して飛行帽を片手に走り出した。


「カタリナか!?」

「いえ、コンソリみたいです!」


航空機の発動機音が響き始め、仮装巡洋艦に備え付けられた対空火器が迎撃を始めた。

クレーンで吊り上げられる機体に駆け寄りながら来襲した機体を聞いて乗り込む。


「こいつじゃあ追い回しは出来ない!爆撃を邪魔してくる!」


正規の手順を無視し、落とす勢いで機体を海に降ろさせる。海に浮かぶ前にエンジンを始動。吊り上げ金具を外してフルスロットルに叩き込む。


「敵は!?」

「輸送船狙ってます!」


海水を数回叩いて空に羽ばたくと全速力へ近付けて、爆撃コースに入ろうとするB-25に直角で交差に持っていく。


「何狙っているんだコラァ!」

「輸送船に決まってんでしょ!」


ツッコミを受けながら機首の機銃を放ち、片側のエンジンに集中させた。


「ーっだあ!火ぃ吹きゃあしぃねぇ!」

「ふざけるなぁー!」


撃ちながら航過したが目立った被害無くコンソリは動き、爆弾を投下。輸送船が直撃して火だるまになる。それを見ていたが、よそ見

をする余裕はない。爆撃機はまだいて守る目標は居る。


「あっちが速すぎる!」

「20ktは早い!うまく先取りを!」


コンソリと呼ぶB-25は爆装しても225ktは出る。こっちは200ktの水上機で追っかけ回すことは出来ない。


「爆撃機はあと何機!?」

「4機!こっちを見てます!」


落とせなかった爆撃機よりこっちを見ている怪しい爆撃機に集中する。受けた時は8隻いた船団は2隻しか居なくなった。


「ちんたら狙ってる暇有ると思っているってんのかぁ!」


全速力のままうろうろしてたコンソリに向けて突っ込んで撃たないまま機体を傾けると、突入進路に入った爆撃機に目標を定めた。


「目標はあれですか!」

「おーよ!」


機銃が火を吹き、正面から炸裂弾で穴だらけになり、旋回機銃がトドメを刺すように機体へ穴を開けた。


パイロットに負傷を負った爆撃機は機体の持ち直しを図るが船からの機銃を直撃。海へ落下した。


「1機墜ちましたぁ!」

「まだいる!」

「分かってます!」


新たな目標へと正面突撃。B-25からの機首の機銃攻撃を回避。攻撃の機会を失われ、後部旋回機銃が撃ち込みながらすれ違う。やむなく別目標への突入に切り替え、水平飛行に入った爆撃機へ向かう。

側面からの突撃に相手からの旋回機銃の迎撃をフィットバーで避けながら大きな機体にぶちこむ。交差すると反対側の旋回機銃の追撃と後部機銃が互いに撃ち合う。数発の弾を貰いながらも回避に走る。


「弾が切れそうだぞ!」

「無視してかかって!」


機銃の残弾が乏しくなり、攻撃がやりにくくなる。4機のうち1機は投弾済み、1機撃墜。残る目標は2機。

残り2機を相手どるように機体を持っていくが残弾は100を切っている。全弾ぶちこんでも撃墜は無理だろう。

弾切れを見せないような機動を心掛けて機体を有利な位置(高度をとる)に持っていく。


「左から!」


左側の機体を狙いに定めて急降下。旋回機銃が火を吹いてくるがそもそも命中率は低い。無視して右翼のエンジンに叩き込む。


「煙が見えてます!」


墜ちなかったが残る2機はこちらを伺い、再度攻撃態勢に入ると爆弾を捨てて一路に逃げ出した。迎撃機が想定外と思ったみたいだ。


「これで大人しくなるだろう」

「だといいんですけどね」


爆撃機が姿を消すまで上空旋回を続けると機体を回収してもらった。


「弾が無い?」

「…ええ、7.7ミリは有るんですけど13ミリは持ってないと」


被弾した部品を交換して燃料もいれた。だが、弾が補充出来ないと言われる。


「この船団、ソロモン諸島行きだよな?」

「文句言うほど覚えてましたよね」

「ソロモン諸島って航空基地しか知らないんだが」

「そうですよ。船は横付け出来なくて航空基地が有るだけですよ」

「この船団でも持ってないの?」

「行き先の部隊には零戦隊と水偵隊が配備されてます」


その説明で全てを悟った。大体の零戦は7.7ミリと20ミリを搭載。水偵は恐らく零式水偵だから一部は20ミリを搭載。そして補給に行く船団は13ミリを積んでいない


「後ろの弾を前に回そう」

「全部ですか?」

「いや、50は残す。…といっても多少だよな」

「ですねー」


機上員の彼は後部機銃の予備弾を座席から持ち出しにかかり、搭乗員は艦長に話をつけにいく。


「あと一回しか迎撃に出れない?」

「ええ、機銃の弾が補充出来ないので」


艦橋に居た艦長と数名の幹部に説明する。


「また同じ規模が来た場合は?」

「2回攻撃してオシマイ。1機落とせたら上等ですね」


幹部も含めて全員渋い顔ぶれになる。貴重な戦力が無くなる事態とより空襲が激化する海域。


「補給も出来ない以上契約は終わりってことで」

「しかしだな…」


補給は雇い主持ち。そうしないと何も出来ないのでそういう決まりに運営側がしてくれた。

その時に物が有るか無いかは別としてだが


「弾無しで飛んでも無意味ですよ」

「そういう訳で。では」


彼らは機体を飛ばして船団の上を一周して一路ラバウルに去った。


「新な仕事でも探すかね」

「そうですね。有るといいですね」


残った船団は無事目的地に入港したが、帰りに爆撃機に全滅した。ラバウルにたどり着けなかった。


「弾も燃料も高いってヒデェ!」

「これが激戦価格ですね」


太平洋沖の上空で悪態が響き、整備士に怒鳴られる未来は確定しそうである。



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