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王子、王女との対面

書いていた内容が一度消えてしまった所為で、更新が遅くなってしまいました。

 相田たちは国王陛下――――ウェルドの執務室を後にして城内を闊歩する。青野は城の構造を完全に覚えているらしく、案内も必要とせずに王子たちのプライベートルームに迷いなく向かう。そして、王族専用のフロアに辿り着く。王族専用のフロアの前には兵士の詰め所が存在する。許可なく、勝手に入れば問答無用で拘束されるとのことであった。


「ご苦労さんや、話は通ってあるみたいやな」

 青野と相田の姿が見えてからは、兵士たちが敬礼で道を開ける。その対応に相田は少し戸惑ってしまった。


「ここやで。気ぃつけるんやで、特に王子や。王女ハンは大人しいってか、マイペースでこっちに興味を持たへんから安全やけど、王子は悪戯いたずらがとにかく激しいんや」

 警備の兵士の詰め所を通り抜けて、数分が経過した頃に青野はとある立派な部屋の前で立ち留まり、声をかける。


「そうですか……所詮は餓鬼の悪戯いたずらでしょ」

 相田も口では何ともないと言うが、既に三人もその悪戯いたずらで辞めている事を知っているので、表情カオは笑っていなかった。


「さすが、相田ハンや! 頼もしいで。んじゃ、行きますか」

 青野は相田に余裕がないことは察していたが、気付かないふりをして扉にノックする。


「返事がありませんけど、留守でしょうか?」

「いや、いつも通りや。とりあえず、名乗ってから部屋に入ればいいんや」


 返事をしないのがデフォルトらしい。仕方ないので、その場で名乗ってから扉に手を掛ける青野。それに続き部屋に入る相田。

 部屋に入る為に扉を開けた途端に水の塊が飛んでくるが、青野はその場で左に身体を傾けることで軌道上から逸れる。そのお陰で無事であったが……後ろに居た相田に水が直撃する。


「っぉおっと。危ないやんか。相田ハンは大丈夫……なわけないよな」

「えっ! ……」

 水でびしょびしょに濡れてしまった相田は状況が理解できていなかった。


「王子の仕業や。悪戯いたずら好きやからな。とりあえず、簡単に顔合わせを済ますんで、出てきてくれや」

 二十畳を軽く超す広さの部屋の中に王子は隠れているらしく、青野は呼び掛ける。王女の方はソファーに座って本を読んでいたが、完全にスルー状態。

 青野は溜め息を吐き、部屋に備え付けてある『呼び鈴』で侍女を呼び、タオルと着替えを用意させる。


「出てきてくれへんと、父親ウェルっちに報告やで。一度も顔合わせをせずに、クビにはできへんやろ」

 青野は王子の隠れている場所を把握しているが、自分から出てくるように促す。青野がその場で二度目の溜め息を吐くと、二発目の水弾が放たれた。水弾の発射方向に目を向けると、金髪の美少年が立っていた。


「部屋の中を水びたしにするんは、申し訳ないし……しゃぁ~なしや」

 右手を前に出して、青野は水弾を受け止める。すると、普通は弾ける筈の水がそのままの状態を維持して静止する。


「青野さん、それは?」

 ずぶ濡れの状態の相田が青野に尋ねる。

「そやったな。まだ説明してへんかったな。これが魔法や。これは、属性魔法って呼ばれるもんや」


 目の前で魔法を直に見た相田は無意識に「す、すげー」と声を漏らした。そこに侍女がタオルと着替えを持って来た。


「おおきに、助かるわ」

「いえ。アイダ様は着衣部屋まで案内いたしますね」

 侍女の案内で相田は部屋を退出して着替えてくる。



「イルスも懲りないわね。あの人も仕事なんだから割り切ってよね」

「イリアだって、教育係なんて必要ないって言ってただろ」

 

 王女イリアス・D・ドランヴァルドは双子の弟のイカルス・D・ドランヴァルドに抗議する。二人は綺麗な金髪碧眼で美の神に造形されたかのように整った顔立ちをしている。


「イルス坊ちゃんもイリア嬢ちゃんも喧嘩せんで落ち着きぃや」

 軽い口論になっていた二人の仲裁に入る青野。イルスとイリアは王子と王女の愛称である。青野は二人を愛称で呼ぶ程には関わりを持っていた。



 その頃に相田は着替えていた。相田に渡された着替えは一言でジャージその物であった。


「これには耐水加工が施されていますので、坊ちゃまの水魔法にも耐えれるでしょう」

「ありがとうございます。王子様はいつもあんな調子なんですか?」


 相田の着替えた服には『耐水性』、『伸縮性』、『魔法軽減』の魔法が込められた魔導服だった。


「そうですね。初対面の人間には必ず一回はしてますね。私の考えですが、坊ちゃまは試しているのではないでしょうか? 坊ちゃまは王子としてではなく、個人として見てほしいんじゃないでしょうか。特にアイダ様は年齢も近いですし……」

 

 相田に着替えを持って来た侍女は王子と王女が産まれた時から専属の侍女でセオノルという名前で四十代の女性。


「えっと、王子様たちは今年で12とお聞きになられたのですが……」

「そうですよ。そういえば、アイダ様の年齢をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

 セオノルは相田の年齢を多く見積もっても16ぐらいと推定していた。


「……19です。今年で20になります」

「嘘ッ!? ……コホン。本当ですか?」

 セオノルは驚愕のあまり、大きな声を出してしまったが、すぐに咳払いをして普通を取り繕う。


「やっぱり、若く見られるんですかね。それと、俺のことはアイダで大丈夫ですので、『様』は要らないです」

「すみません。少し驚いただけです。そうですか、ではアイダさんと御呼びさせていただきます。私のことはセオと御呼びください」


 


 着替えを終えた相田たちは王子たちの部屋に戻る。


「相田ハンが揃ったところで自己紹介といこうや。まぁワイは除くから、相田ハンから頼んますわ」

 青野の進行で進む。王子たちの部屋に備え付けてある四人机に四人は座っている。


「そうですね。本日から君達の教育係を務めさせてもらう相田千尋です。こちらの世界だとチヒロ・アイダといいます。これから宜しく頼むわ」

 

 子供組は完全に無視を決め込む。王子はソッポを向いているし、王女は本を読みながらクッキーを口に含んでいた。


「これこら、無視はいかんで。話が進まんやろ」

 青野の言葉で王女が反応する。


「あ、ごめんなさいね。聞いてなかったから、もう一度言ってほしいな」

 王女イリアス・D・ドランヴァルドは本当に聞いていなかったのか、今度は本を閉じてから相田に視線を向ける。仕方ないので、相田が同じ自己紹介をもう一度行う。


「アイダさんね。宜しくね。アイダさんは、アオおじさんの部下っぽくないけど、なんなの?」

 二度目の自己紹介はきちんと聞いており、質問を織り交ぜてくる。この方が会話が続き易くて相田も有難いと感じていた。


「青野さんの言葉のお陰で勇気をもらったし、仕事も紹介してもらったから、恩人に近い感じかな」

 相田の返答の後にイリアスが名乗り始めた。

「私はイリアス・D・ドランヴァルドよ。この国の第三王女で、そこに居るイルスの双子の姉よ」

 腰に届く程のサラサラストレートの金髪を指に巻きながらイリアスは喋る。その後に視線がイカルスに注がれるが、本人は無言のままだった。


「イルス坊っちゃん、機嫌を直してや」

「面倒ね、イルスの代わりに私が紹介するわ。彼は私の双子の弟のイカルス・D・ドランヴァルド、第二王子ね。以上」


 青野の言葉も無視するイカルスに代わり、姉であるイリアスが弟の紹介を始めた。イリアスが紹介を終えると、イカロスはそのまま席を立ち上がり、どこかへ行ってしまう。青野が引き留めようとするが、水弾を放ってから走り去ってしまった。


「あぁ、行ってしもうたぁ」

「話も聞かないし、すぐに魔法を放ってくるんだったら、どうする事もできないけど、放っておくわけには行かないし」

「我が弟ながら、面倒よね。でも、これで顔合わせも済んだし、私もいくわね」


 三者三様に青野、相田、イリアスが反応をみせる。


「ワイはちょいっとばかり所用があるさかいに。相田ハンに後は任せるで。適当にしたら、戻ってくるんで。ほな、頼んます」

 青野には考えがあった。所用というのは真っ赤な嘘だ。


(ワイが居てまうと、ワイを頼りすぎてしまうさかいな。まぁ成る様になるやろ)


 相田もイカロスも不器用過ぎる。それを直そうと思い、似たような不器用な二人を接しさせる作戦に青野は賭けた。失敗したら、そん時はそん時だ、と。流れに身を任せたのだ。


「じゃあ、頑張ってね」

 青野の去った後に続いてイリアスも部屋を退出しようと椅子から立ち上がったが、それを拒む者が現れた。勿論、相田である。


「ちょっと、待ってくれないか。この状況で見捨てるって選択は非情だろ!? 」 青野という唯一の希望が消えてしまい、暗闇という名の現実が無情にも相田に襲い掛かる。そんな中ではイリアスは女神にも等しい存在であった。


「いや、知らないって。私はイルスの様にクビにしようとは思わないけど、私の時間を奪わないでほしい。これは、彼方の仕事でしょう」

 

 相田のポーカーフェイスが完全に崩れる。意気消沈。

「そうだよな、すまなかった。いつまでも、他人を頼っていたらダメだよな」

 

 部屋に一人になった相田はそのまま床に仰向けで寝転び、天井を眺めながら頑張ろうと決意を改めてするが、すぐにでも動く気力は無かった。 


「はぁ~本当にしょうがないわね。案内はしてあげるわ」

 少し気になってか戻ってきたイリアスは、少し可哀想かなっと思い力を貸すことにする。


「本当か!? ありがとう。ほんと助かる。一人だと諦めてたカモしれん」

 絶望の淵から光が差し込んできた。地獄に仏だった。いつもは、ポーカーフェイスで無表情を努めていたが、今は少年の様な純粋な笑顔を見せる。

 

「まぁ良いわよ。多分、中庭に居ると思うし。それに、私も中庭には用事があったから。ついでよ」

 イリアスは年相応の笑顔だと思いながら、応じる。相田は少女であるイリアスから見ても成人とは見られていなかった。



 そのまま二人は中庭に向かう。その途中でセオノルに出会う。イリアスはお茶を中庭にまで持ってくる様に頼む。セオノルに念の為にイカロスの居場所を尋ねると、予測通り中庭の方向に向かっていたことが解る。




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